こんにちはシンガーソングライターの辻敦尊(つじあつたか)です。「Fireface UFX & Pro Tools 9:システム活用法」も今回で3回目となりますが、今回はいつも僕が外部スタジオで行っている作曲スケッチ作業についてご紹介したいと思います。もちろんその作業にはFireface UFX とPro Tools 9は欠かせません。
普段僕は自宅スタジオで作曲スケッチ作業を行うケースが多いのですが、時には自宅スタジオには置いていない生ピアノなどを弾きながらスケッチ作業を行いたいと思う事もあります。そうした場合にはFireface UFX とPro Tools 9を持って外部スタジオに出掛けていきます。そしてその際にはスケッチ目的で録る音だとしても出来るだけしっかりとした音で録っておくように心がけています。
以前は「アレンジが正式に決まってからちゃんとした音質で録音し直せばいいや」という考えで、スケッチ作業時にはラフな録音しか行っていなかったのですが、ある時期から作曲スケッチ作業時の勢いある演奏を最終ミックスに使用するのも効果的と考えはじめ、それ以降はそのような意識で録音するようにしています。
RME製品の特徴の一つであるフラットな音質は比較的入力ソースを選ばずに自由に使えますし、Fireface UFXから新たに搭載されたマイクプリアンプはクオリティもバッチリで、作曲スケッチ作業を大きな意味でバックアップしてくれています。特にその新しいプリアンプと真空管マイクSputnikを組み合わせて録るボーカルや、MD441を組み合わせて録るガットギターのサウンドは満足度が高く最近のお気に入りの一つです。
それではその作曲スケッチ作業時の具体的なセッティング・イメージからご説明をはじめていきましょう。
ボーカル用マイクには真空管マイクのSputnik(電源には専用電源ユニット用います)を、ピアノ用マイクにはC451Bをステレオで、そしてロー部分を録る目的としてU87Aiをオンマイクでセッティングします。(Fireface UFX内臓のマイクプリ数をちょうど使い切るセッティングになっています。)
次に“TotalMix FX”の操作手順です。
まずは“TotalMix FX”の“Submixビュー”機能を使用しますので“View Options”の “Routing” から “Submix”を有効にします。
[Mic9]~[Mic12]チャンネルまでのツール(スパナ)のシンボルをクリックし、Settingパネルを開きます。
※Settingパネルが閉じている状態(デフォルト)
今回は[Mic9]チャンネルと[Mic10]チャンネルをモノ、[Mic11] チャンネルと[Mic12]チャンネルをステレオで使用するため下図のようにチャンネルモード設定をします。チャンネルモードを変更するためには各チャンネルSettingパネル内にある“Stereo”ボタンをクリックします。
[Mic10]~[Mic12] チャンネルまでのファンタム電源を有効にします。
※[Mic9] チャンネルに接続するSputnikは専用電源を使用するのでここではファンタム電源を有効にしません。
※ファンタム電源を有効にした状態でコンデンサー・マイクの抜き差しを絶対に行わないで下さい。機器が破損する原因になります。
Submixを有効にした状態で、Control Roomにアサインしたモニター・チャンネル(ここではPH 9/10)をクリックして選択します。正しくモニター・チャンネルが選択されると、入力チャンネルの下が[PH 9/10]と表示されます。この状態で入力チャンネルのフェーダーを徐々にあげて、モニターから出力される音量を調整してください。ここで上げた入力チャンネルのフェーダーは、モニターへの送りボリュームとして動作します。
※ヘッドフォンアウトへのミックスの作成方法は、Part.2をご参照ください。
[Mic9]チャンネルについてはFireface UFX内臓のCompressorを使用したいのでツール(D)のシンボルをクリックし、Dynamicsパネルを開きます。そして“Compressor/Expander”を有効にします。
※Compressorの設定はあらかじめ保存している自分オリジナルの設定値をベースにしながら、微調整していく形で使用しています。
「手順7」で設定したコンプレッサーは掛け録りの状態で使用しますので“Fireface Setting“内の“Options”設定で“EQ+D for Record”にチェックを入れておきます。
[Mic9] チャンネルについてはさらにモニター音に対してReverbを掛けたいので、“View Options”の “Mixer Setup” から “FX”を選択し、Reverbパネルを開いた後“Reverb”を有効にします。
※僕はRoom3のプリセットを微調整しながら使用するケースが多いです。
モニター用出力チャンネル(ここでは[Phones1]チャンネルを例にしています)の“FX Returnフェーダー”を上げReverb経由で返ってくる信号の量を設定します。
さぁ、まずはここまででFireface UFX側の設定は一通り完了になります。手順が多いように思われた方もいらっしゃるかもしれませんが“TotalMix FX”は数回使ってみる程度であっという間に慣れ親しんでしまうインターフェイスだと思います。ぜひ積極的に使っていってみるようにしてみて下さい。この後はPro Tools 9側の設定に入っていきますがそちらについては次回のPart4で引き続きご紹介していくようにします。
それでは次回もぜひご覧下さい。
辻 敦尊
シンガーソングライターとしての活動を中心としながら、作詞家、作曲家、アレンジャー、プロデューサー、映像や舞台の音楽監督、サウンド・デザイナー、ボイストレーナー、ライターなどとしても活躍中!シンセサイザーやコンピューターを用いた音楽制作では定評が高い。
日本シンセサイザープログラマー協会 理事(JSPA)
オフィシャル・サイト http://www.at-music.net/