深田 晃 - RME ADI-2 Pro を使用してみて - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
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導入事例
RME ADI-2 Pro を使用してみて  dream window inc.  深田 晃

NHK 番組製作技術部やCBS/SONY 録音部のチーフエンジニアとして、ドラマ、ドキュメンタリーなどの音楽録音から、中継番組におけるサラウンド伝送や海外中継まで、録音/放送の第一線で長年にわたって活躍してきた世界的なレコーディングエンジニアとして知られる深田晃氏。
深田氏が提唱したサラウンド録音のマイク配置手法「FUKATA TREE」は、録音エンジニアであれば、おそらく知らない方はいないのではないでしょうか。
また、最近では、ハイレゾ作品である「天上のオルガン」が優秀録音としてオーディオファンからも高い評価を得ていることでも氏をご存知の方も多いのではないかと思います。意欲的な活動を続ける深田晃氏が、先日、RMEのADI-2 Proを導入したと聞き、どのように活用しているのか、早速お話を伺ってみました。


RME ADI-2 Pro を使用してみて  dream window inc. 深田 晃

私が今回ADI-2 Proを購入した目的は各DAWを用いたモバイル作業用インターフェースとして、またAoIPで行なっているレコーディングモニター用として、さらにリスニング用としてAudirvana2 やFoober 2000等のFile再生時のD/Aコンバータとして、そしてヘッドフォンアンプとしてと多用途に用いるためです。

モバイル作業としてはリビングルームでProToolsなどによるプロジェクトのプリプロダクションがあります。また、スタジオ以外のレコーディングは大体DXDやDSDで行なっているため、そのファイルをモバイルで再生するためです。DXD,DSD再生のコンバータの選択肢は限られていますがRME製品はFireface UFXでその音質傾向は把握しているため、ADI-2 Proも安心して使用できます。DXD,DSDはAudirvana2 、Foober 2000ともに再生可能です。

私は音楽録音においては様々なDAWを使用しています。それはプロジェクトにとって最適なシステムを考えて使用しているからですが、使用しているDAWはProTools, Pyramix, Sequoia, Studio One, Samplitude, Sound It!8 Pro 等々です。

その中でもメインで使用している機種はPyramixです。PyramixはMasscoreと言われるシステムとNativeというシステムがあります。NativeシステムでもDXD,DSDの録音再生が可能ですが、その時のAD/DAコンバータ、インターフェイスとしてADI-2ProはPyramix開発元のMerging社製品以外では現時点で唯一の機種であるかもしれません。テスト録音も問題なくできています。また、Pyramix MasscoreシステムはDSD,DXDで48ch、48kサンプリングでは300ch以上レコーディングできるシステムです。現在はAoIPの一つであるRavennaというネットワークを用いてコンバータ・インターフェイスと接続しレコーディングを行いますが、このシステムでSecondlyDeviceBridgingという設定が可能です。これはASIO対応の機材をモニターやその他の用途で追加使用できるモードですが、Ravenna ネットワーク内にDAコンバータがなくてもASIOデバイスを用いてDAコンバーターとして利用できます。私のADI-2 Proの使用目的の一つとしてこれも考慮していました。これが可能になればレコーディング環境の自由度が増すなと思っています。様々なテストを行いましたが、192kサンプリングまでは問題なく動作して使用できるのですが、DXD、DSD環境下ではエラーが生じシステムがフリーズする不具合が出ています。これはASIOの機能や環境、バージョンの整合性の問題であると思われますので、いずれは解決される問題であると思っていますし192までで制作される方には問題はないと思います。

ADI-2 ProとPyramid Native Proソフトウェアで最大16chまでのDSD64 / DSD128 / DSD256 / DXDの作業を行うことが可能。

もう一つADI-2 ProをオーディオインターフェイスとしてSound it Pro8で使用してみました。

Sound it! 8 Proは768kサンプリングのPCMそしてDSD11.2Mに対応している唯一のDAWです。PCM、DSD両方のモードでレコーディングしてみましたが、テストでは問題なく使用できました。実際の長時間のレコーディングではハードディスクのアクセススピードなどの影響も考えられますので、十分な事前テストを行なって使用したいと考えています。

ADI-2 ProとSound It! Proソフトウェアで構築されたモバイル・システム
ADI-2 ProとSound It! Proソフトウェアで構築されたモバイル・システム。
コンパクトながらDSD256 / PCM 768kの録音・再生を作業を行うことが可能。

また、現在はリビングでリスニング時に使用するDAコンバータとしても使用しています。

私のステレオ再生のシステムとしてはメインの再生システムはOppoDIgitalのBDP-105JPを用い、Pre AmpではなくStellavoxのアッテネータを経由しJobのパワーアンプでB&W Signature Diamomnd をドライブしています。ですので通常はCDやDVD,BD等はESS Technology社のDACチップ経由で再生していることになります。ADI-2 ProをPreampモードでOppoからバランス接続でADI-2 Proに接続しアッテネータを飛ばして直接パワーアンプに接続してみました。入力はPCM768とDSD11.2Mの二つを試しましたが、この接続ではOppoのアナログ出力をADしてまだDAすることになりますので、少し音質的には甘くなるなと感じました。CDを光接続でADI-2 Proに接続するとよりクリアな再生音になりました。この場合はADI-2 ProのDA、AKMのコンバータチップを用いRME社のアナログ回路を経由した音となります。

Oppo直の音とADI-2 ProのCDの音質差は非常にわずかですが、違いがあります。
音質が良い悪いの領域ではなく好みの問題だと思いますが、Oppoと比較してADI-2 Proは端正な音に感じます。伝統的なRMEサウンドです。反対にOppoは少し温かみのある音に感じました。

ヘッドフォンアンプとしても確認しました。私は普段はゼンハイザーのHD-700、HD650を主にレコーディングモニターとして用いていますが、ホール等のレコーディングでは音色の判断やノイズの確認、定位感の確認などヘッドフォンアンプは非常に重要度が高い機材です。レコーディング現場で確認しましたが、ADI-2 Proは十分なドライブ性能を持っているだけでなくトランスペアレントな音質である事が確認できました。

こういった様々なシチュエーションの中での確認でADI-2 Proは安心して使用できる比類ないクオリティーを持った機材である事がわかりました。
私の個人的な要望としてはやはりネットワークオーディオに適応してほしいという点があります。
AES67が提案されてからDANTEもRavennaも同列に扱える方向になってきました。
私はレコーディング時にはMicamp ・ADコンバータからネットワークでネットワークスイッチを経てPCに接続しています。スイッチにもう一台PCを接続すれば簡単にバックアップ系が構築できます。そこにネットワーク接続できるADI-2 ProがあればDAとしてまたヘッドフォンアンプとしての利便性は飛躍的に高まると考えています。


プロフィール

深田 晃深田 晃 Akira Fukada ─ 株式会社dream window 代表取締役

CBS/SONY(現Sony Music Entertainment)録音部チーフエンジニア、NHK放送技術局・番組制作技術部チーフエンジニアを歴任。 数々のCD制作及びTV番組制作、音響空間デザインを行う。  2011年 dream window inc. を設立し、アーティストのCD、映画のスコアリング録音、クラシック録音のプロデュースまたエンジニア・ディレクターとして音楽制作を行っている。また、5.1ch~22.2ch、3D audioまでにいたるマルチチャンネル音響作品制作や音響空間デザインを行うとともに、ハイレゾルーション作品のリリースも行っている。

AES(Audio Engineering Society) Fellow
IPS 英国放送音響家協会会員
JAPRS 日本音楽スタジオ協会理事
洗足学園音楽大学 音楽・音響デザイン 客員教授

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