中嶋豪 - テレビ朝日のディレクター/プロデューサーが、RMEでクラシック音楽を録る! - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
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オーディオ・インターフェイス「Fireface UFX II」「Fireface UFX+」「Fireface 802」「Fireface UCX」に、価格を据え置きでTotalMix FX専用リモート・コントローラー「ARC USB」をバンドルした「RME Fireface ARCバンドル・キャンペーン」開催中!

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導入事例

中嶋豪 - テレビ朝日のディレクター/プロデューサーが、RMEでクラシック音楽を録る!

『ザ・コスモポリタン〜ノエ・乾 クライスラーを弾く』

テレビ朝日『題名のない音楽会』や『報道ステーション』他に携わり、今も現役でディレクター/プロデューサーを務める中嶋豪氏。音声技術が本職ではない氏が録音を手がけた『ザ・コスモポリタン〜ノエ・乾 クライスラーを弾く』が、高品位録音で定評のあるレーベル N&Fからリリースされました。また、同じく中嶋氏が手がけた、長岡京室内アンサンブルの結成20周年を記念して製作されたアルバムは『レコード芸術』の特選盤 & 優秀録音盤(2018年4月号)にも選ばれています。

数年前までレコーディングとは程遠い世界にいた中嶋氏が RME製品を使い始めた経緯から録音の具体的アプローチまで、すぐに現場で試したくなるようなヒントが満載です。


録音とは、一枚の絵を描いていくのと同じ……まるで筆と絵の具で絵を描いていくかのごとく、ある時は立たせ、ある時は水墨画のようにぼかして仕上げていく

ー テレビ局のディレクター/プロデューサーといえば、カメラや音声、照明といった方々をまとめる立場かと思いますが、ご自身で録音を始められたきっかけが何かあったのでしょうか。

チェリストの宮田大さんから頼まれて、東京スカイツリーの 2013年元旦企画で「宮田大の天空のチェリスト」というハープとのデュオ・コンサートをビデオ撮影しました。展望デッキは限られたスペースでスタッフも最小限しか入れないので、撮影も録音もひとりでやらなければならなくて……以前から親交があった録音家の福井さんに録音の方法をアドバイスしてもらい、マイクも貸してもらったわけです。

作業中の中嶋氏

その時はまだRMEユーザーではなくて、マイクロフォンを接続できるカメラやポータブル・レコーダーを使っていました。でも、幾度となく録音を重ねるうちに「もっといい音で録りたい」と思うようになって、いろんな方に相談した結果たどり着いたのが RME でした。アナログ・ミキサーもよくわかっていない人間がいきなり「TotalMix FX」ですから……シンタックスの手厚いサポートには随分助けられました(笑)。

ー ありがとうございます。さっそくですが、ノエさんのヴァイオリンを録音されたときは、どのような機材を使われたのでしょうか。

オーディオ・インターフェイスは、発売して間もなかった Fireface UFX+ です。それまでは MADIface XT をメインに、HDSPe MADI FX をバックアップにしていたのですが、UFX+ の、USB をさすだけで簡単にバックアップが録れる「DURec」に魅力を感じ購入したんです。普段、コンサートなどセッティングの時間がゆっくりとれない現場が多く、バックアップに対するセッティングが簡略化されたことで、ほかの作業に時間を使えるようになったメリットは大きいですね。

マイク・プリアンプは OctaMic XTC 2台・計10回線で、ステージの演奏者付近から楽屋(ミキシング・ルーム)まで、30mほど MADI オプティカル・ケーブルを延ばしました。トーク・バックは、Fireface UFX+ に4系統あるマイク入力を使って、ミキシング・ルームから MADIケーブルで OctaMic XTC に送り返し、ヘッドフォン端子からトークバック用のスピーカーへ……もちろん、RME製品ではかかせない TotalMix FX でルーティングしています。いずれは、リモート・コントローラーの ARC USB を使えたらと思います。

DAWは MAGIX SEQUOIA 13。192kHz / 24bit で収録。

ー 現場のお写真のマルチ液晶モニターが印象的ですね。マイクロフォンはどのようにアレンジされたのでしょうか。

メイン・マイクには、”PHILIPS Classics Onno Scholtze” 方式をシステム化した“PHILIPS BAR” を使用しています。これは、ピアノの巨匠アルゲリッチさんや内田光子さんの信頼も厚く、サイトウ・キネン・フェスティバルや長岡京室内アンサンブルなど録音していた、往年の名門レーベル PHILIPS の元名エンジニア、福井末憲氏に製作していただいたもので、福井氏が使っているお手製のものと同じです。放送局やコンサート・ホールで使われている高砂製作所製の “PHILIPS BAR” も、実は福井氏の設計を元に作られているんです。

PHILIPS BAR for SURROUND   made by S.Fukui (N&F)
With NEUMANN KM 133 A ×4 + KM 143 A ×2

PHILIPS BAR for SURROUND made by S.Fukui (N&F)
With NEUMANN KM 133 A ×4 + KM 143 A ×2

ー なるほど。この PHILIPS BAR についているマイクロフォンは何ですか?

もともとは DPA4006 を 4本使うために開発されたPHILIPS BARですが、私が使ったのはそのサラウンド・バージョンで NEUMANN の KM 133 A 4本を演奏者向けに、そして、BARの両端から客席方向に 45度の角度で KM 143 A を 2本追加しています――これは 6本の同じ DPA4006 を前後に取り付け、演奏会場の雰囲気そのままに、リスナーが音楽に取り囲まれる 5.1チャンネル音場を再現する、新世代 DSDサラウンドのための 「SF-ネイチャー・サラウンド・サウンド・マイクロフォン・システム(福井氏考案)」用の BAR です。日本のSACD 草創期に、このBARを発案・実用化した福井氏の、SACD サラウンド・サウンドの先駆者としての功績は大きいと思います――ここではステレオ収録でしたので、サラウンド用のマイク・ホルダーに(サラウンド用としてではなく)アンビエント用としてワイド・カーディオイドの KM 143 A を客席に向けて2本取り付けました。背面(舞台方向)の音を少し嫌ったわけです。

よく客席(演奏者から離れた位置)でアンビエントを録音することがあると思いますが、私は福井氏にならって、メイン・マイクロフォンを吊っている PHILIPS BAR の位置から、会場に向けて響きを録音しているんです。

ー メイン・マイクロフォンと同列にアンビエント用のマイクロフォンがあるという点が肝のようですね。ところで、KM 133 はデジタル・マイクロフォン( KM 133 D )として弊社のプロジェクトでも多く使われていますが、中嶋さんはアナログ( KM 133 A )でお使いなんですね。

ライブのレコーディングが多く、会場の 3点吊り(ホールの天井などから吊り下げる方式)回線を使うケースがほとんどなので、アナログを選びました。3点吊りにデジタルのシステムがあるところは、現状一部を除いてほとんどないですからね。

輸入代理店のゼンハイザージャパンでも、KM 133 をアナログ(モジュール)との組み合わせで買った客はほとんどいないらしく、私は名機133をアナログで使用している数少ないユーザーらしいです。

余談ですが、133 D と 133 A の違いをゼンハイザーのベテラン営業の方にかつて聞いたことがあります。その違いは、ケーブルの引き回しによる減衰の差で、その距離が約100m以内ならば、アナログの KM 133 A も(カプセルとしての)能力を発揮できるとのことでした。

もちろん、マイクロフォン自体で 192kHz の A/D変換ができ、減衰も無いに等しいデジタル・マイクロフォンも魅力ですが、私はもともとアナログが好きなので、しばらくは少数派のアナログ・ユーザーということになるでしょう。将来、DSDレコーディングのシステムを組むときも、アナログを持っていた方がいいという考えもあります。

Vn. SCHOEPS CMC 641 Matched Pair
Pf.  RODE NT5 Matched Pair

Vn. SCHOEPS CMC 641 Matched Pair
Pf. RODE NT5 Matched Pair
RME OctaMic XTC ×2

ー ヴァイオリンやピアノのマイクロフォンには、どんな工夫があるのでしょうか。

ヴァイオリンには、いつものように SCHOEPS CMC6 + MK41 をステレオ・ペアで使っています。テレビ局での主流は SCHOEPS MK4 ですが、PHILIPS のレコーディングでは MK4 ではなく MK41 が好んで使われていたそうです。その理由は、ハイパー・カーディオイド指向性にあって、カプセルの背面特性(かぶり音)が綺麗で、単一指向性の MK4 よりキンキンしない音質にあるようですね。この MK41 を少しだけ足すことで、ヴァイオリンの音色にわずかな色気と色彩が感じられるようになります。メイン・マイクロフォンとの組み合わせも上々です。

ピアノには SCHOEPS MK41 を使う予定でしたが、このホール(猪苗代町体験交流館・学びいな)のヤマハのフルコン(フル・コンサート・ピアノ)では、高音域があまり好きな音色になりませんでした。そこで試しに RODE NT5 にした途端、音色が澄み渡り中低域の響きが心地良くなったんです。NT5 は他のマイクロフォンに比べると極端に安く、「こんなハイ・アマチュアが使いそうなマイクを使っているのか?」と言われてしまいそうですが、メインの NEUMANN の補助として使うと、ピアノによってはしっかりした音色を聴かせてくれます。もちろん、同じピアノでも調律やコンディションによってその日の演奏の音色が変わってくるわけですが、今回は RODE の方が相性が良かったみたいですね。

ー マイクロフォンを、その値段ではなく音色で選ぶというのは、つい忘れがちですがとても大切なことのように思えます。

代々木公園近くの有名なホールで、バッハのゴルトベルク変奏曲をライブ録音しているとき、ステージ裏にいた、弦楽器のとある有名な音楽家が、モニター・スピーカーからピアノの音が鳴りはじめた瞬間振り返って、「いい音!」と聞き惚れていたのを思い出します。ピアノというとキラキラした音が魅力ですが、本当は中低音の下支えがしっかりしていないと、ハーモニーのバランスがよくないんです。RODE NT5、興味のある方は一度お試しあれ!

余談ですが、前出の福井氏がサントリーホールでバッハのマタイ受難曲を録音したとき、チェンバロに使っていた DPA 4011 を、リハーサルの音を聞くや否や、あえて普段使わない安いマイクロフォンに付け替えてしまったんです。

4011 の方が常識的にいい音に決まってる!と思ったので理由を聞いてみると、「チェンバロが少し立ちすぎるので、ボカしたかった」ということ。

つまり、個々の楽器をいい音で録音しておいてからレベル調整するのではなく、もっと音色から全体を見て混ぜ合わせる――まるで筆と絵の具で絵を描いていくかのごとく、ある時は立たせ、ある時は水墨画のようにぼかして仕上げていく――録音とは、一枚の絵を描いていくのと同じ……そんなことを感じさせてくれたエピソードでした。

ー 音声技術が本職ではないことを思わず忘れてしまうようなお話を伺うことができました。名盤誕生の秘訣は、中嶋氏の長年クラシック音楽に接していた耳と、音楽に対する情熱にあるのかも知れません。シンプルな機材構成であっても作品の質は決して劣らないということを改めて証明している作品、ぜひお聴きください!


NF28901 ザ・コスモポリタン〜ノエ・乾 クライスラーを弾く

NF28901
ザ・コスモポリタン〜ノエ・乾 クライスラーを弾く

MF20109アンサンブル結成20周年記念長岡京室内アンサンブル『レコード芸術』の特選盤&優秀録音盤(2018年4月号)

MF20109
アンサンブル結成20周年記念
長岡京室内アンサンブル
『レコード芸術』の特選盤&優秀録音盤(2018年4月号)
『レコード芸術』のクロスポイント「音楽とオーディオの交差点」で4頁の特集記事(2018年5月号)


エンジニア・プロフィール

中嶋豪 Go Nakajima

中嶋豪 Go Nakajima
テレビ朝日 演出・ディレクター、プロデューサー

1982年、テレビ朝日制作局入社。川崎敬三「アフタヌーンショー」のディレクターとしてスタート。高田純次と蓮舫の初司会のバラエティ番組「クイズおもしろTV」では、まだ無名だった KAN の大ヒット曲「愛は勝つ」をカセットテープのデモと経歴だけでエンディングテーマとして採用し、大ヒットに導く。また、「ビートたけし杯争奪!紅白お笑い大合戦」「オール電リク!紅白お笑い大合戦」といったお笑い系番組では、若手お笑い芸人を発掘して競い合わせる形式の、今でいう M-1グランプリを予感させる番組を試みる。ドラマ制作では木村拓哉主演のスペシャルドラマ「君は時のかなたへ」、伊東四朗主演「笑ゥせぇるすまん」演出・プロデューサー。「爆竜戦隊アバレンジャー」アニメ「あたしンち」「釣りバカ日誌」「渡辺篤史の建もの探訪」などのプロデューサーを経て、2004年「報道ステーション」立ち上げスタッフとして参加し、スタジオや大型中継ライブの演出を手がけた。2009年からは「題名のない音楽会」(司会:佐渡裕)のディレクターを務めた。2014年には東京芸術劇場で6日間通しで、 「なんでも!クラシック」という音楽祭を企画プロデュース。現在は本業のBS朝日「ザ・ドキュメンタリー」や Abema News、「羽鳥慎一モーニングショー新春特大6時間SP」総合演出の傍ら、音楽に対する造詣の深さから音楽家との幅広い人脈を持ち信頼も厚く、休日に録音やプローモーション・ビデオの撮影をボランティアで手がけている。

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