現代のクラシック音楽ではあまり使用されないガット弦による独特なヴァイオリンの音色を、192kHz/24bitでアーカイブ。圧倒的な表現力で響き渡るアルバム『Contigo en La Distancia』にみる録音手法 - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
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導入事例
現代のクラシック音楽ではあまり使用されないガット弦による独特なヴァイオリンの音色を、192kHz/24bitでアーカイブ。圧倒的な表現力で響き渡るアルバム『Contigo en La Distancia』にみる録音手法

一聴したときに感じるちょっとした『ひっかかり感』が、やがてクセになって何度も聞き込んでしまう・・・RME Premium Recordingsの記念すべき10作目となるアルバムは、そんな不思議な魅力を持った作品となりました。その『ひっかかり感』の正体はガット弦。羊や牛の腸を原材料としており、古来あらゆる弦楽器の弦として広く使われてきたものですが、温度や湿度の影響を受けやすく伸びやすいためチューニングが困難で、弦自体の寿命も短いので次第にスチール弦やナイロン弦に置き換わり、現代のクラシック音楽では余り使用されることがなくなりました。しかし、独特のあたたかみと肉声のような絶妙なハスキー・トーンが、演奏に得も言われぬ表現力を与え聴くものを魅了します。

ヴァイオリン

今回のアーティスト、ヴァイオリンの喜多直毅は本場アルゼンチンで会得したタンゴを軸に、これまでの音楽的知識と体験を融合した演奏を展開し活動しており、ガット弦の魅力を最大限に引き出すことのできる数少ないヴァイオリニストの一人です。そして、気鋭のピアニスト田中信正とのデュオによるこのアルバムは、南米の名曲を喜多氏の感性で選曲・アレンジしたもので、田中氏のピアノとのスリリングさと心地よい安定感が同居するインプロヴィゼーションが織り交ぜられた、アーティスティックな作品に仕上がりました。 録音エンジニアは、UNAMASレーベルから数々の優れたハイレゾ・サラウンド作品をリリースするミック沢口氏が担当。9.0chのイマーシブ・オーディオを想定したマイクアレンジとお馴染みのRME MADIシステムによるコンビネーションは、ガット弦による豊かな倍音成分とニューヨーク・スタインウェイ・ピアノの豊潤な響き、そしてホールの程よい残響を余すことなく捉えており、本アルバムが体現する録音芸術としての側面の根幹を担います。

上部からのセッティング風景

『Contigo en La Distancia』収録 レコーディング・データ:

場所:三鷹芸術文化センター
風のホール 日程:2016年11月29日、30日
仕様:24bit/192kHz 11ch

配線図
配線図

使用マイクロフォン:

メイン・マイク Neumann KM-133D x 5 

Neumann KM-133D

ミッドレイヤー・サラウンド  Sanken CO-100K x 2 

Sanken CO-100K x 2

トップレイヤー・サラウンド  Sanken CUW-180(ステレオ・ペア)x 2

Sanken CUW-180

ヴァイオリンとピアノを捉えるメイン・マイクには、圧倒的な解像度とS/N比を誇る無指向性のデジタルマイク、Neumann KM-133Dを採用。ヴァイオリンへはL/R、ピアノは高音弦側からL/R/Cとして配置し、骨格となる楽器の直接音をキャプチャーします。残響成分となる各サラウンド・マイクには、Sankenのアナログ・マイクを使用。最近の沢口氏のマイキングの特徴である、ステージからホール側を狙った配置により、ホールに漂う残響を捉えてブレンドすることにより、メロディの明確さと豊かな残響成分を両立させることに成功しています。

マイク・プリアンプ:

DMC-842 M ・Micstasy M

マイク・プリアンプには、メインのデジタル・マイクにDMC-842 Mが、サラウンド用の各アナログ・マイクのプリアンプとしてMicstasy Mが使用されました。ステージ上で(デジタル・マイクの場合はマイクのカプセル内で)即座にADされた音声信号はMADIとしてホールの楽屋に設置されたコントロール・ルームへ伝送されるため、アナログ回線を通ることによる音質の劣化を極力抑えることが可能です。コントロール・ルームとステージ上とのコミュニケーションを取るトークバックの音声もMADIで伝送。最小限のケーブリングにより仕込みと撤収の時間を大幅に短縮することが可能です。

オーディオ・インターフェイス:

MADIface XT

Fireface UFX+
ステージからのMADI回線は、MADI Routerによってメイン・レコーダーである沢口氏のMerging Pyramix Native+MADIface XTと、バックアップのMAGIX SequoiaFireface UFX+に分岐。MADIを搭載した初めてのFirefaceとなるFireface UFX+のマイク端子にトークバック用のマイクを接続。MADIを介してステージ上のDMC-842MでDAしてトークバック・スピーカーへ送られます。さらに、Fireface UFX+に搭載されたDURec機能を活用し、USB接続のSSDドライブに二重のバックアップレコーディングも実施されました。

徹底したEMCノイズ対策:

ELIIY Power
機材の振動対策

最近の沢口氏のレコーディングで定番となっているノイズ対策が今回のレコーディングにも導入されました。商用電源に起因するノイズを徹底的に排除するために、EliiyPower社のパワーイレをステージ上とコントロール・ルームに配置。全ての録音機材の電源供給を賄いました。特に、ステージ上にはファンレス仕様の新製品が導入され、録音現場での使用においてさらに可能性が広がることを実証しました。 また、端子やケーブルのノイズ対策から機材の振動対策まで、徹底した環境ノイズ対策を「ザ・ノイズバスター」として定評のあるJIONの宮下清孝氏が担当。現場で想定しうる全ての対策を施してレコーディングが実施されました。その成果は作品を聴いて頂くと一聴して判る程に明らかです。

DSDレコーディング:

ADI-2 Pro

今回のレコーディングでは、RMEとして初めてDSDの録音・再生に対応したADI-2 Proを使用して、試験運用としてDSD256およびPCM768kHzでの録音も実施されました。ステージ上に立てられた2ch分のワンポイント(Blue Microphones)をアナログのままコントロール・ルームへ伝送、2台のADI-2 Proにより録音。DSDとPCMの音質の違いなどを検証するための資料として記録されました。

プロフィール

喜多直毅喜多直毅 ─ ヴァイオリン
国立音楽大学にてヴァイオリンを専攻、三年間に渡り渡英して作曲とジャズ理論を学ぶ。その後アルゼンチンにてフェルナンド・スアレス・パス(Vln)にタンゴ奏法を師事する。帰国後はタンゴ演奏を中心としながらも、その活動の軸足をタンゴ以外の分野へと移し、鬼怒無月(Gt)率いる「サルガヴォ」に参加。タンゴとアヴァンギャルド・ロックの融合を目指すこのグループは、渡英し好評を博した。活動の範囲をヨーロッパの即興音楽シーンに広げる一方、出自とも言うべきアルゼンチン・タンゴとこれまでの音楽的知識と体験を融合すべく、2011年、喜多直毅クァルテットを結成し2014年にアルバムを発表。オペラシティ・リサイタルホールにて公演を行った。

田中信正田中信正 ─ ピアノ
1968年生まれ。4歳より電子オルガンを始め、16歳でクラシックピアノに転向。国立音楽大学作曲学科中退。クラシックピアノを小灘裕子、ジャズピアノを藤井英一、橋本一子、佐藤允彦 各氏に師事。
1993年、横濱ジャズプロムナード第一回コンペティションで、グランプリ及び個人賞ベストプレイヤー賞受賞。共演者と創り上げる自由で即興性に富んだ演奏活動は、JAZZのフォーマットばかりではなく多岐に渡る。現在は、数多くのユニットのメンバーとしてライブやレコーディングに参加している。ピアノトリオの範疇を超えた自己のユニット「田中信正KARTELL(山田晃路 b、大槻カルタ英宣 ds)」と、オリジナルと独創的なアレンジによるソロピアノは、比類なき唯一無二の演奏として評価が高い。2010年より酒井俊ユニットのベトバム公演に度々参加、林正樹(pf)とのPiano duo「のぶまさき」で2012年にはパリ/アンカラ/イスタンブール公演を、2013年には韓国公演をおこなった。

ミック沢口ミック沢口 ─ レコーディング・エンジニア
1971年千葉工業大学 電子工学科卒、同年 NHK入局。ドラマミキサーとして「芸術祭大賞」「放送文化基金賞」「IBC ノンブルドール賞」「バチカン希望賞」など受賞作を担当。1985年以降はサラウンド制作に取り組み海外からは「サラウンド将軍」と敬愛されている。2007より高品質音楽制作のためのレーベル 「UNAMASレーベル」を立ち上げ、さらにサラウンド音楽ソフトを広めるべく「UNAMAS-HUG/J」を2011年にスタートし24bit/96kHz、24bit/192kHzでの高品質音楽配信による制作およびCD制作サービスを行う。2013年の第20回日本プロ音楽録音賞で初部門設置となったノンパッケージ部門2CHで深町純「黎明」(UNAHQ-2003)が優秀賞を受賞、2015年の第22回日本プロ音楽録音賞ハイレゾリューション部門マルチchサラウンドで「The Art of Fugue(フーガの技法)」が優秀賞を受賞するなど、ハイレゾ時代のソフト制作が如何にあるべきかを体現し、シーンを牽引している。

粟飯原友美 ─ アシスタント・エンジニア
レコーディングスクール卒業後、マスタリング・エンジニアとして株式会社ハリオンに入社。2002年ハリオン退社後、アンズサウンド(後に株式会社アンズサウンド)に加わる。昨年(2014年)9月にアンズサウンドを退社、独立し、10月より屋号Winns Masteringとして活動を開始。2013年頃からは、CDマスタリングのみならず、ハイレゾ、特にDSD編集マスタリングなどにも力を入れて、SACDの作品にも関わっている。

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