RME Users
導入事例
村上 輝生 - 飛行機にも手荷物でチェックイン プロフェッショナル・クオリティ・オーディオ・インターフェイス: Fireface UCX

TOTOのアルバム“FAHRENHEIT”にてゴールド・ディスクを獲得した、日本が世界に誇るレコーディング・エンジニア、村上輝生氏。アメリカだけでなくヨーロッパ、アジア各国から南米諸国まで幅広い海外録音経験を持つ村上輝生氏だが、実は発売以来からのFireface UCXユーザーでもある。

氏がFireface UCXをどのような現場でどのように活用しているのか、以前からお話を伺いたいと思いながらもなかなか実現しなかったこの企画が、多忙な氏のスケジュールを縫ってついに実現! ポーランドはワルシャワでの収録から戻ってきたばかりの氏から、貴重なお話を伺うことに成功。ワルシャワで録音制作された渾身の大作、北村憲昭指揮・ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団演奏のストラヴィンスキー「火の鳥」の録音制作の様子も垣間みることができる珠玉のユーザーストーリーを是非お楽しみください。


ー 2月に続いて、先日もワルシャワでのレコーディングを成功させて帰国したばかりと伺っておりますが、まずはワルシャワでの収録の内容をお聞かせいただけますか?

2月に行った際にはストラビンスキーの「火の鳥」などを収録しました。これは非常に評判が良くて、国内はアイクオリアから、海外はナクソスレコードからのリリースが決まっています。次回作のリリース日程はまだ決まっていませんが、私の場合、お呼びがかかればいつでも世界中何処へでも行くというスタンスゆえ、今回は夏のワルシャワへ、4セッションで5曲の収録に行ってきました。夏のワルシャワは、カラっとしていて気温も20度以下。でも日差しは強く、日向は暑いくらい。旧市街は雰囲気あるし、写真を撮っても空がすごくキレイって感じ。夜遅くまで若者たちで活気の有る街で、おしゃれなレストランも多く、遅くまで開いてるしビールも安くて美味い。いい街ですよ〜。

ポーランド国立 ワルシャワ・フィルハーモニー・ホール
ポーランド国立 ワルシャワ・フィルハーモニー・ホール

ー なるほど!素晴らしいですね。私もいつかワルシャワに行ってみたいとおもいます!
ところで、村上さんというと、やはりROCKやPOPSといった印象が強いのですが、最近ではクラシックの録音も手がけているのですね! 特に、ROCKの収録とクラシックの収録で大きく異なる部分などをお聞かせいただけますか?

そうですねぇ、私もまさか、こんなにたくさんクラシックを録ることになるとは夢にも思いませんでしたが、クラシックと言っても結構幅が広くてストラビンスキーやドビュッシーは(もしかしたら他のも)不協和音やポリ・リズムをものともせずという、なかなかアグレッシブな楽曲が多く、クラシックっていう垣根を超えたものを感じます。しかも、あの大人数で奏でる重厚なハーモニーなのでゾクゾクしますよ。ジャズとの違いは人数だけかも。あ、あとはテンポ感かな。ロックやポップスはある程度一定のテンポってのが多くてクリックを利用して間違ったらそこだけパンチインなんて録音手法が当たり前ですが、クラシックの場合、テンポは曲の中で指揮者とオーケストラが協調して流れています。なので基本的にパンチイン/アウトはナシです。もちろん問題の有る個所は何度か収録してEDITするくらいの事はやりますケドね。
それと、ロックの場合、リズム感やパワー感が重要で主に「オン」な音を録りますが、クラシックの場合はたくさんある生楽器の奏でるアンサンブルを聴こえている音のまま収録する為「オフマイク」が基本になります。

ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団
ワルシャワ国立フィルハーモニー交響楽団
ステージ全体を俯瞰で撮影。マイキング位置が良くわかる。
ステージ全体を俯瞰で撮影。マイキング位置が良くわかる。

ー 今回のワルシャワでの機材セッティングはどのようなものだったのしょうか?

100名以上のオーケストラのサウンドを収録する訳ですが、私の場合、意外なほど少ない数のマイクを使います。指揮者のすぐ後ろの上の方にセットされているメイン・マイク(日本だと三点吊りに相当)が一番大事なマイクで、少し左右に広げた場所にある2本とオケの配置の中ほどにある二本のサブ・マイクの計6本、これが基本です。あとは曲によって少し補強したい楽器があれば、そこにもマイクを立てます。具体的には木管やハープなどです。それらをSTUDERのアナログ・コンソールでミックスしたものをフロント用に、そしてリア用にはステージから10m前後離れた場所で良いバランスのポイントを探し、そこにDPA 4006を2本立てます。
リア用のマイクはこの2本だけなので、そのままUCXのマイク・インプットに繋ぎ、フロント・ミックスの出力は(UCXの)ライン・インプットにつないで4CHサラウンドで収録しました。ソフトウェアはAvid Pro Tools 10で、192KHz/24bitです。また、それとは別に、2CHですが5.6MHzの高速サンプリングの1ビット・レコーダーも持ち込んでいます。こいつらも侮れない高音質です。

サラウンドのリア用に立てられたマイクDPA 4006越しに望むオーケストラ
サラウンドのリア用に立てられたマイクDPA 4006越しに望むオーケストラ

ー UCXはハーフ・ラックなので、おそらく持ち運びも簡単だったとおもいますが、その辺りは今回のワルシャワ録音でもポイントになっていたのでしょうか?

大きなポイントですね。たとえばAvid 003とかだと2Uの標準ラックサイズなので、それだけで1つの荷物ですが、UCXだとMacBookとヘッドフォンまで一緒に背負っていけます。移動時に携行荷物が1つで済むメリットはデカいですよ!

ー UCXのマイク・プリに関して印象などお聞かせいただけますでしょうか?

UCXのマイク・プリは色付けの無い透明なRMEサウンドを持ちつつガッツのある音で好きです。 また、TotalMix FX側でレベルやEQ・コンプの細かい操作が可能で、たとえば、アーティストや用途によって一度使用したものをSAVEしておくと次回はそれを読み込むだけで即本番でも収録出来るので便利ですね。 マイク・プリもホントは4つあれば最高です・・・。

ワルシャワ・フィルハーモニー・ホール録音室で活躍するUCX(上から2段目)
ワルシャワ・フィルハーモニー・ホール録音室で活躍するUCX(上から2段目)

ー 今回、Pro ToolsのインターフェイスとしてUCXを使用したとのことですが、Pro Toolsソフトウェアとの相性など、なにかお気付きになられたことはありましたでしょうか?

相性は全く悪くないです。ただし、ミキサー・ソフトのTotalMix FXが常に裏で動いているんですが、たまに特殊な使い方をしたりしてデフォルトに戻すのを忘れたりすると「なんか変」みたいなことになります。このミキサー・ソフトは、ルーティングや入出力レベルなどを、かなりの自由度でコントロール出来るのですが、UCXの(マイク・インプット以外の)ラインの入出力は「Pro Toolsデフォルト」スイッチを押すと「何も足さない、何も引かない、各入出力チャンネル1:1のまったくそのままで+4の入出力」ってなってくれるととても嬉しいです。

ー なるほど。では、早速、私の方でそのようなTotalMix FXの設定をして、workspaceファイルにしてお渡ししますので、是非、今度からはそれを使ってみてください。

良いねx100!  使ってみます!!!

ーちなみに、今回のワルシャワのミックス作業は、ご自宅のスタジオで行っているのですか?

収録時に2チャンネルのダイレクトミックスなのでミックス作業は不要です。なので、良いティクを選んだりEDITをしたりという作業になりますが、それは自宅スタジオ(ってほどでもないワークルーム)でやります。

氏の自宅スタジオ。一番左のモニターの下にUCXが設置されているのがわかる
氏の自宅スタジオ。左のモニター下にUCXが設置されているのがわかる

ー その際、Pro Toolsのオーディオ・インターフェイスは、はやりAvid HD I/Oでしょうか?

Avid HD I/Oも持っていますが最近ではUCXを使用することも多いです。ただ、HD I/Oは家に常設、UCXは持ち出すことが多いので、外で録ってきてセッティングを戻すまではHD I/Oを使ったりもします。 よく友人達から「UCXの出音ってどこがいいの?」って聞かれますが、実は、よくわからないんです。小型軽量で価格もそこそこだと普通は出音もそこそこで、多少の不満は我慢ってことになるんですが、コイツに関しては特に不満も無くそのまま使えてしまう。いい音ってそういうもんじゃないですかね? あ、そういえば、あまりドイツの会社っぽくはないかも。どちらかというとアメリカのAPIサウンドに近い明るくてガッツのある音だと思います。

ー 今回のワルシャワ録音の音源は、どこからどのような形でリリースの予定でしょうか?

おそらく前作同様、国内はアイクオリアから、海外はナクソスレコードからのリリースになると思います。

ー では、最後に、RME製品で一番気に入っているところをおきかせいただけますか?

UCXに限らずとにかく透明感があってフラットな音ってのが好きです。特に、ロックの生ドラムを録るとドラマーに褒められますよ! 何もしなくても良い音で録れますから。
UCXについてはこのサイズもグッドです。

ー 本日は、お忙しいところ本当にありがとうございました!
今後も益々のご活躍を期待しております。


村上 輝生 Teruo "Mu-" Murakami プロフィール

村上 輝生

1955年1月生まれ。大阪芸術大学出身、1977年大学卒業と同時に財団法人ヤマハ音楽振興会入社。EPICURUSホールのPAエンジニアを担当。翌年先輩エンジニアに引っ張られてスタジオ入り、アシスタントとして修業を積み80年からEPICURUSスタジオのハウスエンジニアとして働く。1985年、スタジオを休職して単身渡米、LAにてTOTO、ドンヘンリー等を手掛け、TOTOのアルバ ム" FAHRENHEIT "でGoldDiskを獲得。帰国後、1986~1995までエピキュラススタジオのチーフエンジニアを務め、その後ヤマハ音楽研究所にて音、映像、MIDI、通信を融合した遠隔セッションや三次元リバーブの研究などを経て1999年に45才で独立。その後、フリーランスエンジニアとなり現在に至る。 J-POP、JAZZ、クラシック、ゲーム音楽等、幅広くこなす。最近も、スロバキアフィル、ワルシャワフィルなどクラシックを含め国内外で精力的な活動を続けている。
早稲田大学理工学部表現工学科(音響表現・録音技術論)
大学院国際情報通信科(音響表現、音響情報処理 2000年~2010年 )非常勤講師。

http://www.mu-s.com/index.html

北村憲昭 指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団

北村憲昭 指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団

「火の鳥」「ロメオとジュリエット」「ポロネーズ」
Warsaw Philharmonic Orchestra / Noriaki Kitamura  conductor
"The Firebird" "Romeo and Juliet"Polonaise
M-1:イゴール・ストラヴィンスキー Igor Strawinsky (1882-1971)
バレー組曲(1919年版)「火の鳥」22’ 35” The Firebird / L'Oiseau de Feu Suite 1919 (SCHOTT レンタル譜使用)

index
01) 序奏 Introduction
02) 火の鳥の踊りL’oiseau de feu et sa danse
03) 火の鳥のヴァリアシオンVariation de L’oiseau de feu
04) 王女たちのロンド(ホロヴォード) Ronde des princesses (Khorovode)
05) 魔王カスチェイの凶悪な踊り Danse infernale de roi Kastchei
06)子守歌 Berceuse
07)終曲 Final
 
M-2:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー Peter Ilych Tchaikovsky (1840-1893)
幻想的序曲「ロメオとジュリエット」23’ 00” ” Romeo and Juliet “ Overture 1880 ver.

M-3:ポロネーズ(歌劇「エウゲニ・オネーギン」より)5’ 26” Polonaise from Opera ”Eugen Onegin”

戻る