RMEのADI-2 Proを使い、竹富島の伝統歌のユンタをオリジナルの歌詞で23番まで録音した貴重な音源をDSD11.2Mで収録 - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
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導入事例
沖縄竹富島のソウルを捉えたレコーディング The sound of Taketomi - Okinawa

『 The Sound of Taketomi -Okinawa 』
UNAMASレーベルとのコラボによって実現したDSD 11.2Mでのルーツミュージックのアーカイブ

録音機材の発達と小型化により、ミニマムなシステムであっても以前では考えられないほどのクオリティで録音を行うことが可能になった今の時代ならではのハイレゾリューション録音を、日本を代表するトップ・エンジニアが、その場の空気も含め、ありのままにアーカイブする「日本のルーツミュージック・シリーズ」が弊社の運営するレーベル「RME Premium Recordings」にてスタート。記念すべき第一弾は、世界的にも評価の高いエンジニアMick Sawaguchi氏の運営するUNAMASレーベルとのコラボレーションにて実現した、沖縄は竹富島の伝統歌のユンタをオリジナルの歌詞で23番まで録音した貴重な音源。「竹富島のありのまま」を現代の最高音質にてアーカイブした作品です。なお、UNAMASレーベルからは、4 chサラウンドで収録されたフィールド・レコーディングと、萬木氏の唄と演奏をミックスし「サラウンド・スケープ」シリーズとしてリリースされており、今回RME Premium Recordingsからリリースされた本作品は、同じ演奏をDSD 11.2 MHzにて収録し、PCMにて収録されたフィールド・レコーディングの音源とをミックスしたものとなります。

録音に使われたのは、もちろんRMEのADI-2 Pro。
DSD 11.2MHz / PCM 768kHzというスーパー・ハイレゾリューションにて録音を行うことができる、このADI-2 Proは、その高い性能にも関わらず、サイズが、215 × 44 × 130 mm、重量1kgと非常にコンパクト。 今回のような遠地での収録の場合、このコンパクトさが非常に重要になります。

竹富島について

竹富町は、 沖縄県の八重山諸島にあり、八重山地方の中心地である石垣島からは、高速船で約15分程(約6km)の距離にある人口365人(2016年7月末現在)の島。「自然環境が育んだ文化景観の島」として全体が西表石垣国立公園に指定されています。サンゴ礁に囲まれており、西部には日本最大のサンゴ礁である石西礁湖が広がっています。1986年、住民の総意に基づく「竹富島憲章」が制定され「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「生かす」と島の景観や自然を守るための5原則が謳われており、主要産業は観光。

竹富島

アーティストについて

萬木忍・幸枝

左: 萬木忍(唄、三線、銅鑼)

1973年2月6日生まれ。小学6年より三線、中学になってギターを独学で弾きはじめる。20歳の時、八重山の安室流協和会の古典民謡を学び、この年に新人賞を受賞、21歳の時に古典民謡コンクールで優秀賞を受賞。21歳より竹富島に古くから伝わる国の重要無形民俗文化財指定の「種子取祭」の地揺(じかた、演奏者)をつとめる。

右: 幸枝(フルート、オカリナ、囃子)

フルート、オカリナ、ケーナ、篠笛など様々な笛を演奏するマルチインストゥルメンタル・プレイヤー。上野学園大学在学中より、劇版演奏、数々のレコーディング、コンサートに参加。ブラジル音楽においては、3度の渡伯。ショーロをベースにオリジナルな音楽を展開中。

根原格

根原格(島太鼓、囃子)

1969年 石垣島生まれ。徳八流太鼓保存会森田佐知夫に師事。 平成26年度 第49回琉球新報社主催古典音楽コンクールで最高賞を受賞。琉球・八重山舞踊における、玉城流翔節弘子乃会平田弘子琉舞道場、宇根由基子舞踊研究所など、計10団体の地謡(じかた、演奏者)として多数の舞台に出演。平成28年1月、国立劇場おきなわに於いて、「踊り根生いパート十三 沖縄県指定無形文化財八重山伝統舞踊保持者 華千の会 與那国久枝八重山のおどり稽古道場 南からぬ風」で地謡の太鼓を担当。

使用機材について

今回の録音では、目的別に厳選された計3種のシステムが使われました。

第一のシステムは、PCM 192 kHz/24 bit、4チャンネル・サラウンドでのフィールド・レコーディングを行うためのシステム。

フィールド・レコーディングでは、軽量・機動性・高品質を兼ね備えた機材が必要ということで、Mick Sawaguchi氏が選択しセットアップは、Sanken CUW-180を2セット使ったW-XY方式4CH録音。ポータブル・レコーダは、SONOSAX SX-R4。

「フィールド録音は、周囲の海を航行するフェリーや高速艇が運行を停止する早朝や夜間を中心に実施。サンゴ礁に囲まれた島ならではの優しく打ち寄せるゆったりとした波、海水が泡立ちながら染み込む波打ち際のざわめき、木々の葉を揺さぶりながら駆け抜ける風…。満天の星が降り注ぐ録音の現場で息を殺して五感を研ぎすませていると、竹富島自身が我々に語りかけているかのような錯覚に囚われる。ハイレゾで提供される本作は、そんな島の魅力を余す所なく伝えている。」と作品のライナーノーツにあるように、長年に渡りフィールド・レコーディングを行ってきている氏の研ぎ澄まされた感性は見事に竹富島の魅力をアーカイブしている作品となっています。

第二のシステムと第三のシステムは、今回のメインの録音である、萬木 忍氏の唄と三線演奏の録音に使われ、PCMとDSDを、それぞれ異なるコンセプトに基づいたマイキングで収録できるようなシステムが組まれました。

左:メインにSanken CO-100K、そしてアンビエンスにはCUW-180を選択
右:DSDの収録に使われた、Blue MicrophonesのBottle Rocket Stage One
PCM 192 kHz/24 bitにて4チャンネルサラウンドを行うシステム
左:PCM 192 kHz/24 bitにて4チャンネルサラウンドを行うシステム
ADI-2 Proを中心としたDSD 11.2MHz録音システム
右:ADI-2 Proを中心としたDSD 11.2MHz録音システム

使用機材の詳細

片方のシステムは、PCM 192 kHz/24 bitにて4チャンネルサラウンドを行うシステム。
こちらのシステムは、民家の空間とMAKIさんの歌声や三線を融合させるために、フロント2チャンネルはSanken CO-100Kを、そして、アンビエンスにはCUW-180という構成になっています。
DAWソフトウェアは、Pyramix Native Pro。そして、オーディオ・インターフェイスにはRMEのFireface UCが使われています。
足りない分のマイクプリは、SonosaxのSX-M2が補っており、コンパクトながら、CO-100Kの高域特性をほぼカバーできるハイスペックなシステムとなっており、サラウンドの特性を生かし、自然音との融合を目指した空気感の多いマイクの選択とマイキングがコンセプトとなっています。

対して、第三のシステムである、DSD 11.2MHz録音システムは、音楽重視でしっかりした 近接音メインのマイキングとなっており、マイクには、Blue MicrophonesのBottle Rocket Stage Oneを2本、これを、Black Lion AudioのマイクプリAuteur Mk IIに接続し、RMEのADI-2 ProにてAD変換を行っています。 DAWソフトウェアは、Sound It! for ADI-2 Proで、Bootcampで起動したWindows上にてDSD 11.2MHzのアーカイブを行いました。 DSDは、2チャンネルのステレオ録音ということもあり、音楽重視で、しっかりした近接音メインのマイキングが行われ、そのコンセプト通り、ボディーのしかりとした豊かな音像をキャプチャーすることに成功しています。

RMEの製品はそのどこまでもクリアで正確な音質が世界中のエンジニアに評価されており、今回のDSD録音に使用したADI-2 Proも、もちろんその哲学を引き継いだ製品です。 そういった意味では、今回のDSDレコーディングの「色」を決めたのは、マイクとマイクプリと言えるかも知れません。

2本のBottle Rocket Stage Oneを選んだ最大の理由は、マイクロフォンの特性を決定づけるカプセル部分を自由に変えることができる柔軟性にあります。今回の三線と歌の両方に同時に対応しなくてはならないという目的のため、パーカッシブなアコースティックギター等の高域の特性にマッチし、且つ、歌も対応できるという点で、B1カプセルを選定。Blue Microphonesの製品構成では数少ないスモール・ダイアグラムのカプセルを採用している点も、広い周波数レンジと高いダイナミックレンジを必要とする伝統的な音楽にマッチすると考えこのチョイスとなっています。

また、マイクプリとして採用したAuteur Mk IIは、業務用のレコーディング・コンソールにも見られる完全バランス設計となっており、且つ、トランスレス回路を採用することにより、入力段では色付けすることなく、オペアンプに直結することで、ディテールとニュアンスを余すことなくクリアにキャプチャできるハイスピードな入力段を持っています。また、出力段では、オーディオ信号に独特の特性を付与するクラシックなトランス・ベースの設計により、ハイレゾ・レコーディングにおいても暖かみのあるサウンドを実現できると判断しての採用となりました。

ミックスとマスタリングについて

このようなシステムを使い収録された音源は、東京に持ち帰られ、エンジニアのMick Sawaguchi氏によって、ミックス並びにマスタリングが行われました。 RME Premium RecordingsからリリースのDSD版のミックス並びにマスタリングには、PyramixのMasCoreシステムが使われ、PCM 192kHz/24bitのフィールドレコーディング音源と、DSD 11.2MHzの演奏の音源がシームレスに融合した作品となっています。

なお、今回の音源は、UNAMASレーベルとRME Premium Recordingsの2レーベルからリリースされており、UNAMASレーベルの方は、PCM 192kHz/24bitの4チャンネルサラウンド音源として、RME Premium Recordingsの方は、DSD 11.2MHzの2チャンネルステレオ音源として、DSDフォーマット並びに、MQAフォーマットでリリース。そして、さらに、同じ音源がOTTAVA RecordsよりMQA-CDとしてもリリースされています。 こちらのCDは、MQAフォーマットにてマスタリングが行われており、MQAのデコーダーを持っている方は、DXD(PCM) 352.8kHz/24 bitにて、またMQAデコーダーを持っていない方でも通常のCDプレーヤーにて44.1kHz/16bitのフォーマットで楽しむことができる、大変画期的なCDとなっています。

The Sound of Taketomi Island-Okinawa

UNAMASレーベル (PCM 192kHz/24bitの4チャンネルサラウンド版)
「現在調整中」

RME Premium Recordings
(DSD 11.2MHzの2チャンネルステレオ版 並びに、MQA版)

OTTAVA Records (MQA-CD版)

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