STEREOCiTI - STEREOCiTIが選んだRME Fireface UCX - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
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導入事例
STEREOCiTIが選んだFireface UCX

1993年にオープンし、「東京テクノの総本山」と称された伝説のクラブ、MANIAC LOVE。そのMANIAC LOVEにて毎週土曜日に開催されていたパーティ「Cycle」にて本格的にDJキャリアをスタート。しばらくはDJとして活動していたものの、溢れるクリエイティビティは留まることを知らず、DTMの黎明期から楽曲制作を開始。 現在ではDJだけではなくトラックメーカーとして数々のHouseトラックを、ドイツはベルリンのDon Williamsが運営する人気レーベル「Mojuba Records」からリリースし、東京クラブシーンの第一線で活躍するアーティスト――STEREOCiTIこと、炭谷 賢氏。そんな、海外での評価も高い氏が、この度RME Fireface UCXへとその制作環境を変えたと聞き、早速インタビューを敢行。 耳の肥えたオーディエンスが多いHouse系の楽曲故、執拗なまでに音質にこだわる彼のリアルな言葉を皆様にお届けします。


ー現在の主な活動内容を教えて下さい

ドイツ・ベルリンを拠点とするレーベル「Mojuba Records」をホーム・レーベルとして、いくつかの作品をリリースしています。いままでに「Kawasaki」というアルバムと3枚のEpをリリースしました。他にRemix Workとしては国内外のアーティストをしばしば手がけています。また今年はMono Villageという別名義で、フランスのHotMix RecordsよりEPを発売しました。
DJは東京を拠点に地方やヨーロッパでもスピンしています。
現在は次のアルバムとEPに向け制作を進めていて、個人でだけでなくいくつかのコラボレーションも進行しています。

ー大活躍ですね!それにしても、ドイツのレーベルからリリースされている作品の名前が「kawasaki」というのは面白いですね? どうしてそのような名前になったんですか?

このアルバムには、完成した時からさかのぼって7~8年くらいの間に作られた曲が収録されています。ですのでそれまでの自分を一度精算するような意味合いを持つアルバムとなった訳です。またアルバムに納められている楽曲には制作当時の自分自身が色濃く反映されていました。それらの要素を踏まえた時、ルーツである故郷の町の名前が自然と浮かんできました。

ーなるほど! STEREOCiTIさんのトラックは、一言でHouseといっても、どちらかというとシカゴやデトロイトといった雰囲気が感じられるのですが、簡単に、いままで影響を受けた音楽やアーティストのお話をきかせてもらえますか?

音楽の原体験、根底にあるのは国内外の80's Popsです(笑)自然と体に染み付いているものですからね。音楽と自分の人生の関わりはこの時に備わったものだと思います。その後Jazzと出会いますが、その頃はJazzの持つ即興性や音楽構成的な事ではなく、当時はそれが何なのかはよくわからかったけど、強く訴えかけ表現しようとするパワーや、バラードの持つストレートなエロティシズムみたいなものに影響を受けました。それがその後のBlack Musicへの入り口でしたね。

80'sの日本のポップスもそうですが、基本的にその時代に生きて来たので、ぼくの目指す世界は「うっとり」なんですよ(笑)。あの「うっとり」は今の時代の音楽にはない。音楽は経済的な事や社会情勢が強く関わってくるものなのですが、音楽が真に「うっとり」していた時代に僕は戻したい。それこそ理想は松田聖子です。みんな聖子ちゃん観た方がいいですよ(笑)。歌詞の世界観もプロダクションも最高峰ですよ。それらのイコンとしての聖子ちゃんなんです。完璧ですよ(笑)。
現在の音楽はちょっとリアル過ぎますよね。音楽はつねに理想を提示し続けていかないと、それこそ私生活に夢がなくなっていってしまうと思うんです。

少々話がずれましたが(笑)、その後しばらくしてDJをはじめてからHouseに出会いました。クラブに遊びに行く事よりもプレイしたのが先です。DJは踊らせてなんぼだと思っていましたので、Houseに出会った瞬間これだと思いましたね。それこそその後の人生を決定づけられた程の衝撃がありました。その後自分の好きなタイプの曲を突き詰めて行くうちに、NYに流れずにDetroit Technoに出会いました。僕の好きなダンスミュージックの範疇にはHouseの一部分とTechnoの一部分が入り交じっていました。

NY Houseは違うし、当時の白人Technoのようなのも違った。自分なりの表現方法を模索していたら自分と同じ方向性だったのがChicagoやDetroitのシーンだったんです。彼らはプレイする時にTechnoもHouseも分けてはいなかった。僕は当時自分がTechnoなのかHouseなのか分からなかったんですが、それでよかったんです。表現している世界観もとても近いものを感じましたし、自然と自分の音楽の「住処」をその地に見いだす事となりました。

なので僕の音楽にDetroitやChicagoの影響が感じて取れるとすれば、それは体裁を真似たものではなくSoulの部分だと言えると思います。とはいえDetroitのアーティスト、とりわけMoodymannやTheo Parrish、Carl Craig達には音楽的にも大きな影響を受け、作り手側の目線からそのグルーヴを盗もうとしたりしましたよ。彼らのHouseなりTechnoの持つグルーヴには無言の「セオリー」が存在するんです。それは黒人の元々持つグルーヴをマシーンで置き換えたものとも言えます。僕はそれを盗みたかった。元来自分にないグルーヴでしたから、どうしてもそれを身につけたかったんです。未だに黒人にはなれませんが(笑)。

ーちなみに、ドイツのレーベルから、アルバムをリリースされた経緯はどのようなものだったんでしょうか?

自分の曲を世に出してもいいかなと思い始めた頃はMy Speceが全盛期でしたので、僕も利用していて曲もMixもアップしていました。その時いくつかのレーベルにも存在をアピールしていたのですが、そのうちの一つ、スペインのDeep Explorer MusicのDubbymannというアーティストからアプローチがありました。そこからデジタルのみですが3曲の楽曲をはじめてリリースし、その後そのうちの1曲がレーベル・サンプラーとしてアナログに収録される事になりました。
その後すぐにDetroitのMike Huckabyのフックアップがあり、彼が現地で放送していたRadioで僕のDj Mixが2度も放映される事になったんです。
そしてその頃、以前からアプローチしていたMojubaのThomas(Don Williams)から連絡があり、専属契約を結ぶに至りました。Thomasはなかなかメールを返信してこない人なので他のレーベルとの間で選択を迫られていましたが、僕はMojubaが大好きだったし何か運命的なものを感じてもいましたので、ギリギリまで返事を待った――正しい選択だったと今でも思っています。

ーでは、制作環境のお話をお聞きしたいのですが、、、まず、最初に、いままではどのような環境で制作をおこなっていましたか?

Digi 001の頃からPro Tools LEを使用していて、最後は003とPro Tools 9の組み合わせで制作をしていました。

ーDigi 001!懐かしいですね。あの頃はPro Toolsも、まだ確かバージョン5で、「LE」なんてよばれていましたよね?

はい。元々デザインをやっているのでMacは持っていましたから、それを買えばMidiだけでなくAudioも扱えて曲を完成させられる!と発売直後に購入しました。

ーRMEインターフェイスに乗り換えようと思ったきっかけは?

PCを買い換える予定が立った時、003がFireWire接続なのでこの先は使えないというのが買い換えのきっかけですね。現在はさまざまなメーカーや価格帯のインターフェイスが発売されていますが、プロの現場での使用に適している機能や音質、逆に多機能でも自分にとっては必要のない機能を極力省いた「ピュア」なインターフェイスが欲しかった。価格帯も含めいくつか候補はありましたが、機能、サイズ、音質や利便性、また他のアーティストの評判など、さまざまなバランスを考えると、今の自分に適しているのはRME製品しかありませんでした。

 

―RMEのインターフェイスを選ぶにあたって、他のアーティストの評判も参考にしたとおっしゃいましたが、どなたか、近いところでRMEのインターフェイスを使っているアーティストさんがいらっしゃったということでしょうか? よろしければ、少しその部分もお話をきかせていただけますか?

周りの友人やアーティストでスタジオに訪れた事がある連中殆ど皆といっていいくらいですよ。MojubaのThomasもそうですし、国内でいうとRyo MurakamiやGONNO、Pi-geやDenも使用しています。音の傾向や評判は耳にしていて、自分では持っていないのに信頼を置いていましたので、乗り換えるチャンスを伺っていました。

─ 実際にRMEインターフェイスに乗り換えてみての感想は?

まずモニタリングの出音からして「おおっ」という感じでした。003に比べ解像度やSN比の点でも優れていると感じます。とにかく音が見やすい。003でのモニタリングはすこし塊になってしまい見えづらい帯域があったり、何か「モッサリ」した印象があってそれがあまり好きではなかったのですが、それが一気に解消されました。一つ一つの音の形や定位が非常にクリアで、なおかつ密度があります。僕の作る曲に「高解像度」の印象はないと思いますが、mixingの段階では細かい部分にとても気づかい意図的に自分の音にしているので、作業が非常にしやすくなりました。
それから、僕は外部MIDI音源も使用しますが、003の時はとにかく外部MIDI音源のレイテンシーが大きくて非常に不便を感じていましたが、そのストレスがUCXにしてからかなり軽減したのは僕にとってとても大きいです。

ーなるほど!確かにダンスミュージックではMIDIは必須ですし、MIDIを使うとレイテンシーはやはり気になるところですよね。

はい。そういう意味では、UCXにして確実にストレスは減りましたね。それから、面白い事にUCXにしてからPro Tools側のトラブルも激減したんですよ。そういう制作過程でのストレスがUCXにしてからとても減ったので、音質面だけでなく総合的にRMEの完成度の高さを感じています。
それから、PCを立ち上げなくてもスタンドアローンで使用できるのは003との大きな違いで、これもUCXを購入した理由の一つです。PC、Mixer、DJ Mixerなどからの出力をいままではPreSonus Central Stationを使用して切り替えてモニタリングしていたのですが、UCXを導入してからは必要なくなりました。

―UCXのマイクプリは、どのような印象でしたでしょうか?

マイクプリも完成度が高くて、素直で実用的で、すごく好感がもてます。僕は単体のマイクプリを音作りや取り込みに使用していますが、それはそのマイクプリの持つ独特のカラーが好きだからです。ですがUCXのプリは、かなりクリアでフラットなので、癖なく録音したい音源の時に使ったり、インターフェイスとPCだけ持ち出して録音してしまいたい時などは、ハーフラックという大きさに完成度の高いマイクプリが内蔵されているUCXは非常に重宝しますね。僕がメインで使用しているAudio-Technica AT4050との相性もよかったですよ。

―UCXには、最新鋭のAD/DAコンバーターが搭載されていて、入出力共に115dBAもの広大なダイナミックレンジを実現していますからね。 出力もそうですが、マイクプリも褒められる事が多いです。 逆に、今回UCXに移行して、困った事なんかあったりましたか?

そうですね…… あるとすれば、背面のアナログIn/Outの端子の間隔が狭く、XLRにTRSの変換アダプターを使って挿そうとしたら干渉してしまい入らなかったんです。いままで気に入って使用しているケーブルはXLRでソルダーレスなのでTRSがないんですよ。どうしてもそのケーブルが使いたくて、、、これはちょっと痛かったですね。

ーそうでしたか。 RMEのインターフェイスは、できるだけコンパクトな筐体にできるだけ多くの入出力を搭載したい、という哲学でデザインされているので、ちょっとその部分が仇になってしまったようですね。(笑)

なるほど、、、理由があってのデザインなんですね、まあ、このサイズですし仕方のない所ではあると思います。

―TotalMix FXをつかってみて、使い勝手などの感想をお聞かせください。

正直はじめは戸惑いましたがすぐ理解できましたね。TotalMixのルーティングの自由度は今後重宝するだろうと思いました。今後機材の入れ替えやレコーディング状況によって柔軟に対応してくれると思っています。

―では、最後に、RME製品で一番気に入っているところはどこですか?

やはり「音」です。特にUCXはUCと比べてもナチュラルな音質で、とても耳触りよく音楽的に鳴らしてくれる。PCオーディオの世界でも人気があるのがうなずけますね。 またUCXに特化して言うとハーフラックでこの充実した内容というのも特筆すべき点です。この大きさにこのレベルのマイクプリが2系統も搭載されているのも驚きですし、スタジオ外に持ち出すのにもとても手軽に高品位なレコーディングが出来るので重宝します。手放せませんね。

―今日は、本当にありがとうございました! 今後もご活躍を期待しています。


STEREOCiTI (Mojuba)プロフィール

STEREOCiTI

Don Williamsが主宰する独Mojuba RecordsをホームとするProducer / Dj。
リリースの度に世界各国のトップDj達にプレイされる等高い評価を得ており、2011年に発売されたアルバム「Kawasaki」は、国内外問わず多くの人々に賞賛を得ている。過去にベルリンのpanorama barから2度召還されており、そのプレイは現地でも賞賛を得た。2012年にはMojubaとその傘下レーベルの音源のみを使用し、Mojuba系の深く明媚な世界観を余す事なく表現したMix CD『Never trust a dj』が国内Octave Labより発売になっている。
加えて変名プロジェクトであるMono Village名義での制作も開始し、STEREOCiTI名義での作品とは思考の違うロウでフロアで機能する事に重点を置いた曲を提示する。


Kawasaki

Kawasaki(帯ライナー付き国内仕様盤)
価格 2,200円(税込)
レーベル Mojuba
品番 MOJUBACD1JP
フォーマット CD
※国内版はDisc Unionが流通
http://diskunion.net/clubt/ct/detail/CM-0052332


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