読者は五反田の株式会社マリモレコーズ(marimoRECORDS)をご存知だろうか。都内でも最高に気持ちいい音で制作できるプライベート音楽スタジオだ。 数多くのRME製品の導入例は後ほどに述べるとして、RME製品をここまで完璧に再現できる様々なmarimoRECORDSのこだわりをご紹介しよう。 ビルの2階が映像編集スタジオ、3階がミーティングルーム、4階がレコーディングスタジオ。望めば映像から音響まで一貫したコンセプトで制作をお願いできる。筆者も音響映像制作をお願いした一人だが、仕事の迅速さ、クライアントの要望を読み取ったスマートな仕事ぶりは今でも印象に残る。もちろん作品の質の高さは折り紙をつけよう。 音楽スタジオに入るなり特注のスピーカー台が目に入る。バスレフタイプ、ニアフィールドアクテイブスピーカーからこんな豊かな重低音がでるのが先ず驚きだ。尋ねてみたところ、サブウーファーは全く使用していないそうだ。エンジニアによってはサブウーファーによる定位の問題を嫌がる人もいる。この豊かな重低音なら、サブウーファー無しでも全く問題にならいだろう。 この特注スピーカースタンド。スピーカー底辺を3点螺子で支え、その下に人工大理石を敷いて振動を拡散。その底辺を再度3点螺子で支え、さらにその下に人工大理石/大理石といった組み合わせ。贅を尽くし、凝った構造だ。(読者は、想像つくと思われるがスピーカー単体よりスタンドの特殊加工の方が高価なのだ。ここにmarimoRECORDSのこだわりが見て取れる) スピーカーはほぼ中に浮いた構造になり、箱鳴りをも前向きに使って見事な広域から低域迄の再生に成功している。 プライベートスタジオの課題はいつも「モニタースピーカー」の設置だ。お金をいただく音楽を制作する以上、限界性能一杯の,広域、低域再生は必須条件だ。marimoRECORDSスタジオは見事にこの課題を解決している。 プライベートスタジオを設計される方は是非、見学を御薦めする。「目から鱗」とはこのことだ。 次は電源回りだ。壁面タップを避け、壁内の配線から高級ケーブル&トランスの代表ブランド「オヤイデ電気」と直接相談して導入を決めた200Vから100Vへのダウントランス OYAIDE CS-3000Tが鎮座している。コンセント周りはOYAIDE - R-1 20AMP WALL OUTLET、Oyaide Power Receptacle SWO-XXX ULTIMO Goldを中心とし、電源ケーブルはTSUNAMI GPX、やTSUNAMI NIGO等が導入されている。一般建築を活用した録音スタジオでは電源とケーブルが優劣を決めるといっても過言でない。ここにもmarimoRECORDSのこだわりが見て取れる。マイクケーブルももちろんOYAIDE製だ。伝送ロスが発生しにくい、PCOCC-Aを使用した2芯シールドケーブル定番OYAIDE PA-02を採用、新たにOYAIDE AR910(Silver)も投入された。 録音スタジオのマスター原盤を固定するCDRにもこだわりが見て取れる。等速書き込み可能な名器PLEXTORのPremium2に特注コーリアンケースを実装、特注リニア電源を使用することでより正確なライティングを提供している。(注:サウンドコンサルタントの多田氏のアドバイス&特別加工) marimoRECORDSは、外部エフェクトボードやパッチベイなどがない至ってシンプルなスタジオで、ほとんどの処理は、DAWがインストールされた PCの中で簡潔しているという(機材リストは右記参照)。スタジオ内の数少ない導入されている機材の持つ100%性能を引き出すために、上記の様な様々な工夫 がなされていることがわかる。機材の持つ音が変わってしまう要素は一切排除し、モダンなワークフローを追求した結果、このようなスタジオが完成したという。クライアントの要望に柔軟、且つ瞬時に対応するためのシステムである。 録音に使用されるI/Oは、RME Fireface 800。マイク録り、ライン録りももちろん直接Fireface 800でDAWに取り込まれる。江夏氏のRMEとの出会いはまだスタジオもないとき、10年以上も前にDIGI96/8を購入して、ワンルームの部屋で短いオーディオケーブルで録音したことから始まった。その時の音は今でも最も良い音で録音された音源だという。その経験を基に、marimoRECORDSのスタジオでは、オーディオケーブルの引き回しによる音質劣化をなくし、各機材の持つ最高の音質をそのまま収められるように設計されている。 その後も江夏氏は、発売されたRMEのオーディオインターフェイスを代々使用して、現在のFireface 800に至っている。 江夏氏は、2009年6月に最新のアルバム「JET BLACK」をリリースする。このアルバムのミックスには新たにHDSPe MADIカードを導入している。HDSPe MADIカードは、YAMAHA DM2000 VCMに接続されたMY16-MD64にMADIで接続され、「ミックスバッファー」をとって再度DAWに2MIXとして録音される。江夏氏はこうする事で、マルチのオーディオデータをそのまま1本のケーブルで出力し、ハードウェアコンソールで2ミックスにでき、DAW上の2ミックス書き出しよりも高音質な変換が行えるという。 江夏氏は、外出先でのモバイルシステムにFireface 400を導入している。クラブイベント、講師としての授業、クライアントへのプレゼンで威力を発揮している。 江夏氏はRMEについて以下の通り述べている: 「よく巷では、「RME製品は音がよい」という表現をするユーザーも多い。もちろん私もその一人であることは確かだ。 あるとき、Synthax Japanの社長の村井氏よりRME製品の開発責任者でもあるマテウス氏を紹介してもらった。私はすかざす「RME製品は音が良いですね。」と伝えると彼は怪訝な顔をした。彼は良い音が出る製品を作っているわけではなく、音をより正確に伝える製品を作っているのだと言う。 私は少し反省した。確かにRMEの製品は高級ピュアオーディオの世界とは違い、業務で酷使される製品だ。すなわちRME製品を通ったシグナルは不特定多数のユーザーに届けられることにもなるのだ。だからこそ、彼は音をより正確に伝える製品を作っているのだと言っていたのかもしれない。ただ、このポリシー、ピュアオーディオの世界でも受け入れられてきているらしい。FIREFACE400などはオーディオマニアの方の間でもかなり導入されているのとのこと。うれしいことだ。 ユーザーにとってはどうでもよいことかもしれないが、RME製品の各種チップは汎用品でなく、自社で開発しているとのこと。その職人魂は、それらRME製品を使う我々、「音を作る側の職人」にもおのずと伝わる。 だから私は自分のスタジオは良い音がするとは言わないことにした。そのかわりに、「うちのスタジオはより正確な音がしますよ!」と。」 |
江夏 正晃/ebee#1(FILTER KYODAI from marimoRECORDS) marimoRECORDSの兄弟ユニット「ebee」の兄。今までに4枚のアルバムをリリース。「goose bumps」および「G.H.C.」(global house communications)はインディーズTECHNO,HOUSEランキングで1位を獲得。4枚目のアルバム「G.H.C.」でコラボレーションをしたキャスリーン・マーフィー・ジャクソンとはNYでレコーディングを敢行。「Don't worry, it's all right」「Whisper to the sky」は著名なDJたちにヘビープレイされる。またDJ TAKASHIRO名義ではBLAZE、ULTRA NATE、Urban Soul、元気ロケッツなどのリミッ クスのプログラミングを担当。5枚目のオリジナルアルバムとなる「Jet Black」を新ユニット「FILTER KYODAI」として2009年6月3日発売予定。 一方で株式会社マリモレコーズの代表として、楽曲のプロデュースをはじめアーティストプロデュース、アルバム制作、CM他、多方面の音楽制作を行う。作曲、レコーディング、ミックス、マスタリングまで、一貫したプロデュースを得意とする。また関西学院大学の非常勤講師も勤める。 marimoRECORDSmarimoRECORDSは2000年5月、江夏兄弟を中心に4人のDJ、プロデューサー、アートディレクター達が集まって新しいクラブサウンドを「EXTRA COOL」というコンセプトで設立されたレーベルでありユニット。タイトでスイートなそのトラックメーキングは東京と大阪のスタジオで展開する。クラ ブDJはもとより、TV、ラジオ、紙媒体などの各種メディアからも認知され、番組オープニングやCMに楽曲が起用されたり、楽曲のプロデュースの 依頼を受けるようになる。その後、いくつかのクラブイベントでVJとのコラボレーションをきっかけに、音楽とビジュアルとが一体となったトータルプロデュースを行うようになり、音楽という枠を越えて活動を展開中。 あわせて、得意とするグラフィックデザインの分野では会社CI、雑誌広告、各種 商品のパッケージデザイン業務も行う。 2005年6月、業務拡大のため「株式会社マリモレコーズ」に法人化。本格的に音楽、映像、グラフィックの3つ の事業を基軸として業務を展開。2007年より代表の江夏が関西学院大学の非常勤講師に招聘。関連URLmarimoRECORDS使用システムDAW・Nuendo 4 ・Cubase 5 Sound Interface ・HDSPe MADI ・FIREFACE 800 ・FIREFACE 400 Console ・DM2000 VCM Monitor ・NF1A (x5) ・SW10 (Subwoofer) Power Trans. ・CS-3000T Mic-pre ・SSL SUPER ANALOG ・AMEK 9098DMA ・NEVE V1 Mic ・U87i ・C414XLII ・AT4040 ・C451B ・etc... |