株式会社トーンマイスター meets RME - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
thumbnail
RME Users

導入事例

株式会社トーンマイスター meets RME

その社名が表すとおり、特にアコースティック録音においては高い評価があり、レコーディング・スタジオの運営から音楽制作、また音声教材の制作まで幅広く手がける株式会社トーンマイスター。同社は、ライブ録音、コンサート録音、ホール等でのセッション・レコーディングなど出張録音用のシステムとして、RMEのMADIface XT/USBOctaMic XTCを導入しました。RME導入の背景と、MADIシステム導入後、同社の外録業務がどのように変化したのか・・・チーフエンジニアの三住様にお話を伺いました。


―MADI録音システムを導入したきっかけ・経緯とは?

以前からMADIという言葉はなんとなく耳にしていたのですが、InterBEE(国際放送機器展)の際、シンタックスジャパンさんのブースで、説明を受けたのがきっかけです。

以前からライブ録音業務を行っていたのですが、今まではスタジオで使っていたアウトボードのHAを寄せ集めて使っていました。スタジオで使う機材なので、音質は良いのですが、正直あまりシステマティックではないため、運搬やセッティングがとにかく大変で…しかもだんだんとチャンネル数も増えてきており、クオリティーを落とすことなくシステマティックな新しいシステムを…と思ってました。チャンネル数が増えて特に困るのが、メイン・レコーダーとバックアップ用レコーダーのパラ分けの部分なのですが、説明を聞くと、MADIを使えば音質の劣化なく何系統でもパラ分けや、最大2kmまで引き回せると聞き、夢のようだと思いました。

―RMEに決めた理由とは?

周りにRMEを使っている方が何名もいたことから、普及しているメーカーであるという認識があり、また何と言ってもMADIという技術を使えば、アナログ・ケーブルを大量に扱わなくてもよくなるという利便性に惹かれ、まずはシンタックスジャパンさんにデモ機を借りて検証をしてみることにしたんです。そして、MicstasyとOctaMic XTCという2種類のHA、そしてオーディオ・インターフェイスにはMADIface XTを借りて、実際に複数の録音現場で使ってみました。PAのあるPOPやRockの現場や、クラシックの現場で、マイク・アウトをパラ分けしてそれぞれを、今まで使っていたアナログ機材システムと、MADIを使ったRMEのシステムの両方で収録をし、録音されたデータをスタジオで聞き比べたのですが、今までのシステムで収録された音と聴き比べても、音色に優劣がつけられなかったんですね。それで、これは大丈夫だ!と。それからMADIの場合、音声信号の他にHAに対してリモート信号を送れるのですが、その部分の優位性にも惹かれました。

―RME導入以前は、どのようなシステムを使っていましたか?

先ほども申しました様に、スタジオで使っていたアウトボードのHAを寄せ集めて使っていました。レコーダー部分には、Antelope ORIONをインターフェイスとするPro Toolsシステムと、ALESISのHD24(ADATレコーダー)3台を組み合わせて、メインとバックアップのシステムを構築していたのですが、とにかくケーブルの数が多く毎回接続が大変でした。接続するケーブル数が多いと、接続ミスなどの事故が起こる可能性も高いので、とても神経と時間を使います。

上:手持ちのアナログ・マイクプリを活かして64チャンネルの録音システムを構築。このシステムでは、MADIface USBは入力されてきたMADI信号を分岐するためのスプリッターとして使用しているが、状況によってはPCに接続してインターフェイスとしても使用できる。

下:MADIface USBはiPhoneの充電などでも使用できるUSB電源アダプターを使用し5Vを供給。MADIface XTの電源アダプター含めすべてラックに組み込むことで、現場での作業効率を上げる。

―RMEのMADIシステムを導入して業務的に改善された部分はありますか?

アナログ機材の占める割合が減った一方で、OctaMic XTCも1Uとコンパクトなため、荷物の大幅な削減ができました。弊社の場合運搬用の車両が小さいため、以前はギリギリまで満載だったのですが、RMEを導入してからは、スタッフもう1名のためのスペースができました。(笑)

また、アナログ・ケーブルの接続作業などが大幅に減ったことで、機材のセット、リセットにかかる時間も大幅に削減できています。また、ケーブルの接続ミスも大幅に減りました。現場での作業時間が短縮された分、マイキングなど、直接音質に関わる作業により多くの時間が割けるようになった事は、とても嬉しいですね。

―RMEのMADI録音システム導入を検討中の方へ、なにかコメントはありますか?

MADIface XTやMADIface USBをPCに接続すると自動的に立ち上がってくるTotalMix FXというミキサー・ソフトウェアがあるのですが、このソフトは、通常のミキサー卓とは異なる概念があるため、最初は少し戸惑いました。

ですので、今後導入を考えていらっしゃる方は、事前にこの部分の勉強やテストの時間を取られた方がが良いと思います。特にSubMix、つまりルーティングを組む部分が独特なのですが、一旦理解してしまえば簡単です。現場で困らないように、本番前にしっかりと仕込んでおくことが大事だと思います。また、スナップショット機能もあるため、様々なケースを想定して事前に幾つかSubMixを組んでおくと便利です。また、弊社の場合、MADIというもの自体にも慣れ親しんでいなかったため、まず概念を理解し、体験し、実験し、経験を積むというプロセスを必要としていたのですが、その部分に関しては、実はシンタックスジャパンさんが運営されている、RMEエンジニアーズ・ギルドというFacebookのグループを大いに活用させていただきました。

RMEエンジニアーズ・ギルドに付帯するRMEレンタルサービスというものがあるのですが、今回、最初にコアな部分だけ機材を購入し、同時にレンタルサービスを利用しながら、時間をかけてじっくりと業務にあったシステム構築を考えながら機材を買い足して、最終的に今のシステムに落ち着いています。

また、ギルドには多くのプロ・エンジニアが在籍しており、皆さんが実際にRMEの機材を現場で使用した際の使用感やティップスなどをFacebook内にてレポートされているので、情報の収集にも役立ちます。

我々もまだ知らないことが多々あるので、シンタックスジャパンさんには、今後是非、技術交流会を開催していただけると大変ありがたいです。

—情報発信、技術交流の場については今後一層力を入れていきたいと思います。本日はありがとうございました。

※弊社註:RMEエンジニアーズ・ギルドとは、分野を問わず音にこだわるエンジニアの皆様で情報共有を行うために設置された、一般には公開されないクローズドなFacebookのグループです。RMEレンタルサービスを始め、アイディア交換やお仕事の依頼などのコミュニケーションを促進していただく場として多くのエンジニアの皆様にご活用いただいております。適正なサービスを提供するために現在公募は締め切っておりますが、今回のトーンマイスター様のように機材導入をご検討頂いている場合には個別にお問い合わせください。(ご活動の実態によってはご希望に添えない場合もございます。予めご了承ください。)


三住和彦 株式会社トーンマイスター 代表取締役、チーフエンジニア/プロデューサー

三住和彦
株式会社トーンマイスター
代表取締役、チーフエンジニア/プロデューサー

ポニー・キャニオン録音部に7年間の在籍中、国内外数多くのタイトルのマスタリングと、レコーディングを学ぶ。退社後、ナッズスタジオの設計、チーフエンジニアを経て、94年より株式会社トーンマイスターに在籍。91年、ドヴォルザーク・弦楽四重奏/ヤナーチェク弦楽四重奏がSTEREO誌にて優秀録音及びクラッシック部門にてベスト10入り。99年にはジャズコーラスグループ、“タイム・ファイブ”の“Timeless(Denon/COCP-30585)が、スイング・ジャーナル誌 録音評にて最高点を得るなど、アコースティック録音にて高い評価を受けている。また、1990年代より関わっている、ベネッセコーポレーションの音声教材制作においては、170を超えるタイトルの作品に、プロデューサー、演出、ミキシングで関わっている。

戻る