ライヴ アット ラブリー バラッドナイト チコ本田 24bit/96kHz FLAC/WAV/MQA
多くのジャズマンから尊敬を集める数少ないホンモノ、魂の唄 名古屋のJazz Live Spot、Jazz inn Lovely にて2013年9月14〜15日に行われた、チコ本田のライブアルバム。「器用でも華々しくもないが、彼女の歌が放つ説得力、存在感は圧倒的でソウルな歌声が心に響いてくる。チコ本田はそんな貴重な歌い手だ。年齢をかさねた歌を通して語りかける人生の喜び、悲しみ、その深い味わいは秀逸で情熱的なバンドのサポートを得て全開、歌の本質にせまる圧巻のステージ」(Jazz inn Lovelyのライブ紹介より)
この2日間に渡って行われたライブから11曲が収録され、長きに渡る活動によりさらに円熟を増した、魂を揺さぶる本物のヴォーカリストとして知られる氏の「今」のライブ・パフォーマンスが凝縮されている。バンド・メンバーは現代の日本のジャズ・シーンを牽引する、吉田桂一(Piano)、荒巻茂生(Bass)、江藤良人( Drums)、竹内直(T.Sax)らが担当。魂の唄を支え、さらに色を添えている。
収録曲
- Embraceable You(Ira Gershwin, George Gershwin)
- Travellin' Light(Johnny Mercer, Jimmy Mundy, Trummy Young)
- Wild is the Wind(Ned Washington, Dmitri Tiomkin)
- And I Love Her(John Lennon, Paul McCartney)
- You are so Beautiful(Dennis Wilson, Billy Preston, Bruce Fisher)
- But Beautiful(Johnny Burke, Jimmy Van Heusen)
- You've Changed(Bill Carey, Carl Fischer)
- Imagine(John Lennon)
- それはスポットライトではない(Gerry Goffin, Barry Goldberg 日本語詞:浅川マキ)
- God Bless the Child(Billie Holiday, Arthur Herzog Jr.)
- What's Going on(Al Cleveland, Marvin Gaye, Renaldo Benson)
チコ本田の最新ライブを聞いて 〜 白柳龍一(音楽ジャーナリスト)
ジャズ・ボーカリスト、チコ本田の新しいライブ録音を聞きながら、タフな私立探偵のフィリップ・マーロウが登場するレイモンド・チャンドラーの小説を思い出した。とりわけ彼の傑作「ロング・グッドバイ」に何度も登場するバーのシーン、チコ本田の歌はそんな場面にぴったりだと思った。女が女として、男が男として振る舞うことのできる空間、「ロング・グッドバイ」の書き出しは、ロサンジェルスにあるダンサーズというナイト・クラブのテラスから始まるが、この店のドアの内側からチコ本田の歌が聞こえてくるようだ。ほとんどがラブソングで構成されるステージで、チコ本田は揺れ動く女と男の心模様を歌い上げて行く。この店の客席にフィリップ・マーロウが座っていたら、さしものハードボイルドなタフガイも、思わず人知れず涙を流してしまうのではないか?それほど彼女の歌は強い説得力と包容力、そして限りなく暖かい優しさに満ちあふれている。
ビリー・ホリディ、ニーナ・シモン、エラ・フィッツジェラルド……、このアルバムに取り上げられた歌の数々は、歴史に残る大歌手たちによって歌い継がれてきた。これらのナンバーは、そんじょそこらの若手シンガーに扱えるものではなく、喜びも悲しみも知り尽くした熟達の歌い手によってこそ、僕らの心の中に届けられるものだ。そこには練達の士であるサイドメンの存在も忘れることはできない。ピアノ、ベース、ドラムス、サックスで構成されるメンバーが歌い手に共感し、ある時は共に両の肩を抱え合って慟哭するような瞬間に、僕は思わずハッとなって心がざわめいた。こんなに深く心の底に響くライブに出会うのは稀なことだ。
アルバムの後半、唯一日本語で歌われるのは浅川マキの「それはスポットライトではない」。この歌は2010年1月、ここ名古屋Jazz inn Lovelyへの出演当日に世を去った歌姫・浅川マキへの鎮魂歌のようにも聞こえる。しかし、湿っぽい雰囲気はジャズには似合わないとばかりに、次の「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」と「ホワッツ・ゴーイン・オン」ではブルースもゴスペルもソウルも放り込み、大団円のうちに幕を閉じる。このエモーショナルでドライブ感あふれるプレイには天上にいる浅川マキの魂も微笑んでいるはずだ。チコ本田のソウルフルな面が最大に発揮されたエンディングである。
ライブの感動を伝える録音の良さも特筆すべきもので、トラック1の冒頭、グラスの触れ合う音から始まる演出もじつに秀逸だ。音の鮮度がずば抜けていて、そのクリアな解像度は尋常ではない。ジャズ・ライブ録音のお手本とも言うべきビル・エバンスのビレッジ・ヴァンガード・セッションを彷彿とさせるようだ。チャンドラーの小説に登場する酒場のように、数知れないミュージシャンの音楽と客席のざわめきで長い間エイジングされた音響空間がいきなり目の前に広がる。つかの間、僕らはマーロウ探偵にでもなった気分で、コートの襟を立てながら、思いっきり格好つけて、チコ本田のライブに酔いしれるのである。(ライナーノーツより)
アーティスト・プロフィール
チコ本田(Vocal)
1月25日、栃木県宇都宮市生まれ。本場アメリカやヨーロッパに比べ、魂を揺さぶる本物の少ない日本のジャズボーカル界にあって、多くのジャズマンから尊敬を集める数少ないホンモノ、魂の唄、チコ本田。ジャズボーカルの女王B.ホリディにも通じる哀感は心のひだを切実に伝え、その悲しさは時に涙を誘う。また、持って生まれたブルース感覚はパワーとなって相手を打ちのめす。
渡辺三兄弟で、兄は貞夫(as)、弟は文男(ds)、夫に故本田竹広(p)、息子は本田珠也(ds)というまさにジャズ一家。20歳の時、渡辺貞夫グループより歌手デビュー。都内のナイトクラブ、米軍キャンプで唄う。1967年、本田竹広と出会い結婚。一時家庭に入るが1978年自己のグループを結成。1980年「Chico」をリリース。都内では新宿PIT INN、新宿DUG、吉祥寺SOMETIME、西荻窪アケタの店などに出演。1999年には「チコ本田ライブ」をリリースし高い評価を得る。2013年「Live at Aketa's」をリリース。
吉田桂一(Piano)
1963年8月23日、東京都練馬区生まれ。4歳よりクラシック・ピアノを習い、17歳より独学でジャズ・ピアノを習得。22歳の頃からプロとして演奏活動を始める。
宮之上貴昭&Smokin'、村田 浩 The Bop Band、大井貴司&Super Vibration、多田誠司4、山中良之4、岡安芳明5、福村博Up Town JAZZ Band 等に参加。1988年、インドのジャズ・フェスティバル『ジャズ・ヤトラ』に出演。1991年、サリナ・ジョーンズの東京公演で伴奏を務める。現在は自己のトリオの他に、出口辰治4、荒巻茂生BAND 等で活動中。2002年2月20日、初リーダーアルバム『Music Forever』を10年近くに渡って続けているレギュラートリオ(BASS 佐々木悌二、DRUMS 廣江靖)でレコーディング、What's New Recordsよりリリース。2005年10月19日、セカンドリーダーアルバム『I'm gonna be Happy!』をリリース。
荒巻茂生(Bass)
1966年、三重県鵜殿村出身。18歳でウッドベースに出会い、20歳の時にプロを目指して上京、武蔵野音楽学院に入学。21歳の頃からプロとして活動する。
村田浩のThe Bop Bandに加入し3年間活動。同バンド脱退後には、秋吉敏子(P)、トム・ハレル(TP)、大野俊三(TP)、リーコニッツ(AS)など様々なミュージシャンと共演する。1996年には大西順子トリオでのワールドツアーに参加、(スイスのモントールジャズ・フェスティバル、カナダのモントリオールジャズ・フェスティバル、ドイツのジャズ・オープン・シュトゥッガルト、フィンランドのポリ・ジャズ・フェスティバル他に出演)この頃スウィングジャーナル誌でジャズ・ベーシスト人気NO1の評価を得る。
1999年には妹尾隆一郎、西浜哲男、内海利勝等とブルース・ファイル・NO1を結成する。2000年には待望のリーダー作ARAMAKIBAND<CHANGES ONE>を発表。2003年には進化セカンドアルバムが発売される。2005年には待望のライブアルバム「Aramakiband Live Changes Ⅲ」を発表。
江藤良人(Drums)
1973年4月14日、三重県鈴鹿市生まれ。10歳からドラムを始める。武蔵野音楽学院にて土岐英史(as)、井野信義(b)に師事。1994年、土岐英史(as)セッションでデビュー。1996年から辛島文雄(p)トリオへの参加をきっかけに、本格的にプロ活動を開始。以後、池田芳夫(b)DADA、中本マリ(vo)グループ等に参加。1998年、渡辺貞夫(as)バンドに参加。コンサート、テレビ、ラジオに多数出演。モントルー・ジャズ・フェスティバルに出演。1999年、綾戸智絵(vo)“Friends”コンサートツアー、アルバム制作に参加。2002年、初リーダーアルバム『江藤良人/ANIMAL HOUSE』(ewe)をリリース。J-POPユニット“orange pekoe”のレコーディング、コンサートツアーに参加。2003年、自己のグループ『a.t.m.』を結成。従来のジャンルにとらわれない音楽を新たに追求。2005年、2作目のリーダーアルバム『江藤良人/RAY』(ewe)をリリース。2006年『ルパン三世』の音楽で有名な作曲家/ピアニストの大野雄二率いる“Yuji Ohno & Lupintic Five”に参加。現在もアルバム制作、ライブツアーを継続中。また、日野皓正(tp)、大西順子(p)、Lee konitz(as)、Eddie Gomez(b)等と共演。
現在は自己のグループの他、大野雄二(p)トリオ、the EROS、竹内直(ts)カルテット、石井彰(p)トリオに参加、様々なセッションで活動中。柔らかくしなやかなシンバルレガート、繊細さとパワフルさを兼ね備えたドラムプレイが特徴。共演者に絶大な信頼感をもたらす。
竹内直(T. Sax)
1977年、1986年と二度にわたって渡米。ニューヨークでバイヤード・ランカスター(as)、スティーブ・グロスマン(ts)に師事。デニス・チャールス(ds)、ウィリアム・パーカー(b)、クラレンス・C・シャープ(as)、エレン・クリスティ(vo)らと共演。Jazz Center of NewYorkに自己のバンドで出演。帰国後、エルビン・ジョーンズ(ds)・ジャパニーズ・ジャズマシーンに参加。フレディー・ハバード(tp)と共演。1991年、ブラジルに渡りリオでルイゾン・マイア(b)らと共演、親交を深める。
1994年頃よりテナー・サックス(のちにバス・クラリネット、フルート)による無伴奏ソロ演奏をはじめる。2002年山下洋輔ユニットでヨーロッパ・ツアーおもな共演者はブラザー・ジャック・マグダフ(org)、デニス・チェンバース(ds)、ゲイリー・バーツ(as)、ジョージ・ガゾーン(ts)、ラビ・コルトレーン(ts)、エイブラハム・バートン(ts/as)、冨樫雅彦(ds)、板橋文夫(p)、佐藤允彦(p)、森山威男(ds)、辛島文夫(p)、吉沢元治(b)、高木元輝(ts)、峰厚介(ts)、ブン ・ブン・サテライツ、ROVO,DJ LOGIC 等
リーダー・アルバムとして1996「ライブ・アット・バッシュ」、1998「モア・ザン・ユウ・ノウ」、1999「トーキング・トゥ・ザ・スピリッツ」、2001「トンプキンス・スクエア・パーク・セレナーデ」、2003「ソロ」、2005「ライブ・アット・スターアイズ・フィーチュアリング後藤浩二」、2005「ノスタルジア」、2007「ラプチャー」、2010「オブシディアン」の9枚をリリースしている。
ライナーノーツ・サンプル 本アルバムには、RMEの機材を始めとしたレコーディング時のセッティングやマイク配置など、メーカーが主催するレーベルならではの情報を満載したライナーノーツPDFファイルが付属します。楽曲と合わせてお楽しみください。
エンジニア・プロフィール
長江和哉
1996年名古屋芸術大学音楽学部声楽科卒業後、録音スタジオ勤務、番組制作会社勤務等を経て、2000年に録音制作会社を設立。2006年より名古屋芸術大学音楽学部音楽文化創造学科 専任講師、2014年より准教授。
2012年4月から1年間、名古屋芸術大学海外研究員としてドイツ・ベルリンに滞在し、1949年からドイツの音楽大学で始まったトーンマイスターと呼ばれる、レコーディングプロデューサーとバランスエンジニアの両方の能力を持ったスペシャリストを養成する教育について研究調査し、現地のトーンマイスターとも交流を持ちながら、オーケストラから室内楽までの数々の録音に参加した。
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