Nozomi Iwai Piano Recital 2014 岩井のぞみ 24bit/192kHz FLAC/WAV/MQA Stereo/Surround
音楽に息づく美を探求するピアニストの心の奥底から湧き出る澄んだ音の泉 バッハ、メンデルスゾーン、ドビュッシーというある種対極的なドイツとフランスを代表する作曲家の作品を、並外れた直感力と感性に導かれるままに素直に表現するピアニスト、岩井のぞみ。2014年4月25日に東京・紀尾井ホールにて開催された彼女のソロ・リサイタルをRME MADIシステムにより192kHz/24bitにて収録。RME Premium Recordings初のサラウンド作品としてもリリースいたします。生来の弱視から数年前に視力を失うも、障害を乗り越えながらアメリカで学び、日米のみならず世界中で積極的に演奏活動を行っている岩井のぞみの、心の奥底から湧き出る澄んだ音の泉をお楽しみください。
収録曲
イタリア協奏曲(J.S. バッハ)
- ヘ長調 第1楽章
- ヘ長調 第2楽章
- ヘ長調 第3楽章
無言歌集(F. メンデルスゾーン)
- 第6巻 第3番 変ロ長調「巡礼の歌」 作品67
- 第1巻 第6番 ト短調「ヴェネツィアの舟歌」 作品19
- 第4巻 第3番 ト短調「胸騒ぎ」 作品53
- 第7巻 第4番 ニ長調「悲歌」 作品85
- 第2巻 第6番 嬰ヘ短調「ヴェネツィアの舟歌」 作品30
- 第5巻 第6番 イ長調「春の歌」 作品62
- 第1巻 第3番 イ長調「狩人の歌」 作品19
前奏曲集(C. ドビュッシー)
- 前奏曲集 第1巻 I:デルフィの舞姫たち
- 前奏曲集 第1巻 II:帆
- 前奏曲集 第1巻 III:野を渡る風
- 前奏曲集 第1巻 IV:音と香りは夕暮れの大気に漂う
- 前奏曲集 第1巻 V:アナカプリの丘
- 前奏曲集 第1巻 VI:雪の上の足跡
- 前奏曲集 第1巻 VII:西風の見たもの
- 前奏曲集 第1巻 VIII:亜麻色の髪の乙女
- 前奏曲集 第1巻 IX:さえぎられたセレナード
- 前奏曲集 第1巻 X:沈める寺
- 前奏曲集 第1巻 XI:パックの踊り
- 前奏曲集 第1巻 XII:ミンストレル
アンコール
- ベルガマスク組曲より:月の光(C. ドビュッシー)
- シューベルトの歌による13のピアノ小品集より:きみはわが憩い(F. リスト)
(全24曲)
おおらかで健全な音楽性〜岩井のぞみのピアノ 〜 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)
一度も実演を聴いたことがない演奏家、しかも新人のソフトを正しく判定することは、批評や報道を職業にする者にとっても至難の業だ。「岩井のぞみについて何か書いてほしい」と言われ、CDとDVDを手にした時も「大丈夫か?」と自問自答した。すべてを聴き、観終えた今、懸念は杞憂だったと断言できる。
セッション収録されたデビューCD(ハーモニーHCC-2055)にいきなりバッハ、ベルク、ショパン、シューベルトの傑作ばかりを並べた度胸に先ず驚き、着実な成果に感心した。安定した技術、作曲家ごとの様式の把握といった基本の確かさはもちろん、ベルクでみせる鋭い感性、シューベルト最後のソナタを緩みなく綴るスケールなどを通じ、すでに第一級の演奏家であることを示した。
本作品に収録されているのは、デビューCDの録音から約2年後の2014 年4月25 日、東京・四谷の紀尾井ホールで岩井が行ったリサイタルの全曲である。ここでも冒頭はバッハ。しかも作曲者が自身の優れた演奏技巧を発揮する意図も踏まえて書いた傑作「イタリア協奏曲ヘ長調BWV.971」だ。最初の数小節を聴いただけで、一夜のリサイタルの成功を確信させる。どの音に対しても適確に反応し、非常に感興豊かな演奏といえる。音に弾力性、厚みがあってソノリティ十分、リズムの処理はダイナミック、疾走する場面でも落ち着きを失わない。何よりヒステリックな瞬間が皆無で、大らかかつ健全な音楽性が一貫するのは好ましい。
エンジン全開となったところで始まるメンデルスゾーンの「無言歌集」抜粋。いちいち書くのは過剰かもしれないとわかりつつ、「巡礼の歌」の自然な歌心、「ヴェネツィアの舟歌作品19」のメランコリー、「胸騒ぎ」のドラマ、「ヴェネツィアの舟歌作品30」の切なさ、「春の歌」の骨太なスウィング、「狩人の歌」の輝かしいクライマックス……と、それぞれのキャラクターを巧みに描き分け、前半の大団円に持ち込む。もっとホンワカ、サロン風に弾くこともできる作品だが、岩井は現代の楽器とコンサートホールでの再現を踏まえ、音楽にくっきりした輪郭を施し、オペラのような劇性の起伏を与えることに成功している。
後半は大曲、ドビュッシーの「前奏曲集第1 巻」。もし私がコンクールの審査員なら、12 曲の前奏曲それぞれを彫り込みつつ全体を統合する手腕に対して正直、前半ほど高い点数をつけるわけにはいかないだろう。だが待て!大きなスケールに魅了されて聴き続けるうち、岩井のぞみがまだ「新人」の部類に属する事実をすっかり忘れていた。おそらく30 歳前後の現時点でここまでドビュッシーを弾きこなしているのであれば近い将来、さらに素晴らしい解釈を披露する確率は極めて高い。「印象派」の名の下、実に曖昧に語られるドビュッシーの音楽の背後には、深い人間の感情をいったん緻密に分析して再構成する構図の匠があり、どのピアニストも長い時間をかけ、自身の肉体に取り込んで行く。
視覚でおったハンディの話題が先行しがちだが、岩井はピアニストとして、とても恵まれた体躯と奏法を身につけている。肩から二の腕が非常に安定し、肘の内側にある力点から手のひら、指へと力が無理なく流れ、余計な上下の動きを伴わないから、大変しっかりした打鍵を保持できるのである。大型新人の素晴らしい精進のドキュメント、といえる。(ライナーノーツより)
アーティスト・プロフィール
岩井のぞみ
4歳からピアノを始め、2009年桐朋学園大学音楽学部卒業後研究科に在籍し、渡米。1997年PIARAピアノコンクール全国大会にて最優秀賞。2005年ロゼピアノコンクール第1位。2006年大阪国際音楽コンクールピアノ部門第2位。2010年MTNAコンクールテキサス地区大会にてHonorable mentionを受賞。2011年TEXAS CHRISTIAN UNIVERSITYコンチェルトコンクールを征しオーケストラと共演。同年イタリアで開催された国際音楽コンクールでもHonorable mentionを受賞。ルイジアナ州で開催されたワイドマン国際ピアノコンクールで特別賞を受賞。2012年5月紀尾井ホールにてデビューリサイタル開催。セッション録音によるCD「岩井のぞみピアノリサイタル」をハーモニーよりリリース。2013年ポーランドで行われた第3回バルティック国際ピアノコンクールにて第3位を受賞。
2012年TEXAS CHRISTIAN UNIVERSITY SCHOOL OF MUSICのディプロマを修了後、現在は同大学の大学院に在学中。世界各国の音楽祭に参加するなど積極的に演奏活動を行っている。これまでに植田克己、丸山滋、上野久子、Tamas Ungarの各氏に師事。
エンジニア・プロフィール
入交英雄
1956年生まれ。1979年九州芸術工科大学音響設計学、1981年同大学院卒。2013年残響の研究で博士(芸術工学)を取得。学生時代より録音活動を行い、特に4ch録音や空間音響について探求を重ね、現在のサラウンド録音の源流となっている。1981年(株)毎日放送入社。映像技術部門、音声技術部門、ホール技術部門、ポスプロ部門など経て、送出部門に至る。放送のラウドネス問題研究とARIB委員、民放連委員を通じて規格化に尽力。音声部門では放送業界で初めてのドルビーサラウンドによる高校野球中継などのプロジェクトに関わる。また、個人的にも入間次朗の名前で録音活動を行い大阪市音楽団のCD制作などを手がける。創作活動も行っており、JNN系高校ラグビーのオープニングテーマやPCゲームのロードス島戦記の音楽を担当。
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