『Contigo en La Distancia』
~遠く離れていても~
喜多直毅 x 田中信正
一聴したときに感じるちょっとした『ひっかかり感』が、やがてクセになって何度も聞き込んでしまう・・・RME Premium Recordings の11 作目となるアルバムは、そんな不思議な魅力を持った作品となりました。その『ひっかかり感』の正体はガット弦。羊や牛の腸を原材料としており、古来あらゆる弦楽器の弦として広く使われてきたものですが、温度や湿度の影響を受けやすく伸びやすいためチューニングが困難で、弦自体の寿命も短いので、次第にスチール弦やナイロン弦に置き換わり、現代のクラシック音楽では余り使用されることがなくなりました。しかし、独特のあたたかみと肉声のような絶妙なハスキー・トーンが、演奏に得も言われぬ表現力を与え聴くものを魅了します。
今回のアーティスト、ヴァイオリンの喜多直毅は、本場アルゼンチンで会得したタンゴを軸に、これまでの音楽的知識と体験を融合した演奏を展開し活動しており、ガット弦の魅力を最大限に引き出すことのできる数少ないヴァイオリニストの一人です。そして、気鋭のピアニスト 田中信正とのデュオによるこのアルバムは、南米の名曲を、喜多氏の感性で選曲・アレンジしたもので、田中氏のピアノとのスリリングさと心地よい安定感が同居するインプロヴィゼーションが織り交ぜられた、アーティスティックな作品に仕上がりました。 録音エンジニアは、UNAMAS レーベルから数々の優れたハイレゾ・サラウンド作品をリリースするミック沢口氏が担当。9.0ch のイマーシブ・オーディオを想定したマイクアレンジとお馴染みの RME MADI システムによるコンビネーションは、ガット弦による豊かな倍音成分とニューヨーク・スタインウェイ・ピアノの豊潤な響き、そしてホールの程よい残響を余すことなく捉えており、本アルバムが体現する録音芸術としての側面の根幹を担います。
魂のヴァイオリニスト 喜多直毅と、比類なきピアニスト 田中信正が奏でる、ラテンアメリカ珠玉の名曲集。 ピアソラ、ジョビンを始め、ブラジル、アルゼンチン、キューバ、メキシコの新世界クラッシックが、現代のクラシック音楽ではあまり使用されないガット弦による独特なヴァイオリンの音色と共に、圧倒的な表現力で響き渡るアルバム『Contigo en La Distancia』~遠く離れていても~ を、どうぞお楽しみください。

第24回日本プロ音楽録音賞・ハイレゾリューション部門において最優秀賞を受賞いたしました。
エンジニア:ミック沢口氏
アシスタント・エンジニア:粟飯原友美 氏
『Contigo en La Distancia』
~遠く離れていても~
喜多直毅 x 田中信正
MQA-CD(192 kHz / 24 bit)


Track List
1 | Naufrágio ナウフラージオ(難船) Cecília Meireles / Alain Robert Bertrand Oulman(Brazil) |
2 | Olha Maria オーリャ マリア Vinícius de Moraes / Antônio Carlos Jobim & Chico Buarque(Brazil) |
3 | Soledad 孤独(ソレダー) Enrique Fabregat Jodar(Mexico) |
4 | Chorinho Pra Ele チョリーニョ プラ エレ Hermeto Pascoal(Brazil) |
5 | Chiquilín de Bachín チキリン デ バチン(バチンの少年) Horacio Ferrer/Astor Piazzolla (Argentina) |
6 | O Voo da Mosca 蚊の飛行 Jacob do Bandolim (Brazil) |
7 | Eu the amo エウ チ アモ(I love you) Antônio Carlos Jobim & Chico Buarque (Brazil) |
8 | Alfonsina y El Mar アルフォンシーナと海 Félix Luna/Ariel Ramírez (Argentina) |
9 | Contigo en La Distancia 遠く離れていても César Portillo de la Luz(Cuba) |
10* | Cancion para Mi Guitarra Sola ひとりぼっちの我がギターに捧ぐ歌 Juanjo Dominguez(Argentina) |
*track 10: 配信版のみのボーナストラック(OTTAVA CDには収録されておりません)
Credit
- ヴァイオリン:喜多直毅
- ピアノ:田中信正
- 収録日時・場所:
2016年11月29日~30日 三鷹芸術文化センター - 録音:Mick Sawaguchi
- ミックス、マスタリング:Mick Sawaguchi (Mick Sound Lab)
- 録音フォーマット:PCM 192kHz/24bit
- 録音機材:
[マイクロフォン]NEUMANN KM-133D, Sanken CO-100K, Sanken CUW-180
[MADI レコーディング・システム(全てRME)]DMC842 M, Micstasy M, MADIface XT, Fireface UFX+, MADI Router
[DAW ソフトウェア]Merging Technologies Pyramix 10, MAGIX SEQUOIA 13
アルバムPV「Contigo en La Distancia」
Soledad 喜多直毅 x 田中信正
Naufragio 喜多直毅 x 田中信正

喜多直毅
(ヴァイオリン)
国立音楽大学卒業後、 渡英し作曲とジャズ理論を学ぶ。その後アルゼンチンにてタンゴヴァイオリン奏者のフェルナンド・スアレス・パス(vln)に師事。その後、鬼怒無月(gt)、常味裕司(oud)、翠川敬甚(vc)らのグループに参加。2011年よりメインプロジェクトとして喜多直毅クアルテットを開始。出自であるタンゴと様々な音楽の硲合によって生み出される独自の世界は、その深い精神性によって高い評価を得ている。黒田京子(pf)とのデュオではユニークな編曲による映画音楽等を演奏。即興演奏を中心とする齋藤徹(cb)の企画へも多数参加。舞踏家やアジア伝統音楽奏者とのコラボ、欧州での演奏活動も多い。
www.naoki-kita.com

田中信正
(ピアノ)
4歳より電子オルガンをはじめ、16歳でクラシックピアノに転向。国立音楽大学作曲学科中退。クラシックピアノを小灘裕子、ジャズピアノを藤井英一、橋本一子、佐藤允彦 各氏に師事。1993年横濱ジャズプロムナード第一回コンペティションで、グランプリ及び個人賞ベストプ レイヤー賞受賞。共演者と創り上げる自由で即興性に富んだ演奏活動は、JAZZのフォーマットばかりではなく多岐に渡る。現在は、数多くのユニットのメンバーとしてライブやレコーディングに参加している。オリジナルと独創的なアレンジによるソロピアノは、比類なき唯一無二の演奏として評価が高い。2014年より、超弩級ユニット「田中信正トリオ作戦失敗(落合原介b、橋本学ds)」を新たに始動、2015年11月CD「作戦失敗」を リリース。
www.tnobumasa.com

Mick Sawaguchi (ミック沢口)
(エンジニア)
1971年千葉工業大学 電子工学科卒、同年 NHK入局。ドラマミキサーとして「芸術祭大賞」「放送文化基金賞」「IBC ノンブルドール賞」「バチカン希望賞」など受賞作を担当。1985年以降はサラウンド制作に取り組み海外からは「サラウンド将軍」と敬愛されている。2007より高品質音楽制作のためのレーベル 「UNAMASレーベル」を立ち上げ、さらにサラウンド音楽ソフトを広めるべく「UNAMAS-HUG/J」を2011年にスタートし24bit/96kHz、24bit/192kHzでの高品質音楽配信による制作およびCD制作サービスを行う。2013年の第20回日本プロ音楽録音賞で初部門設置となったノンパッケージ部門2CHで深町純『黎明』(UNAHQ-2003)が優秀賞を受賞。2015年には第22回日本プロ音楽録音賞・ハイレゾリューション部門マルチchサラウンドで『The Art of Fugue(フーガの技法)』が優秀賞を、続く第23回では、ハイレゾリューション部門マルチchサラウンドで『Death and the Maiden』が優秀賞を受賞した。さらに本作では、第24回日本プロ音楽録音賞の前同部門において最優秀賞を受賞し、3年連続受賞の快挙を成し遂げる……ハイレゾ時代のソフト制作が如何にあるべきかを体現し、シーンを牽引している。


第24回 日本プロ音楽録音賞 授賞式にて

遠く離れていても
私があなたから雛れることが出来る時なんて
一日に一瞬もない
あなたが私と 一緒にいなかったら
世界は違うものに見える
あなたから湧き出すものでなければ
美しいメロディーなんて存在しない
もしあなたが聞いていないなら
私はそのメロディーを聞きたくない
それはあなたが
私の心の一部になってしまったから
もしあなたがいなかったら
私を慰めてくれるものも何もない
あなたの唇の向こうには
太楊と星
離れていてもあなたと一緒
愛する人よ、私はここにいます
歌詞:César Portillo de la Luz
歌詞大意:西村秀人