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チュートリアル
ADI-2/4 Pro SEでアナログ・レコードを楽しむ
ここ数年間でアナログ・レコードの人気が再燃しており、その理由は多岐に渡ります。デジタル音源とはまた違った温かみのある心地よいサウンド、その音を手間をかけて感じ取る体験は、大きな魅力の一つです。また、自分にとって特別なパッケージを所有するという意味でも、コレクターアイテムとしての価値を持っています。
そのような魅力溢れるアナログ・レコードの音をADI-2 Proシリーズを起用することで、音質劣化が極めて少なく、解像度の高い明瞭なサウンドでリスニングを楽しむことができます。
Audirvana、Foober2000、Qobuzなどのハイレゾ・プラットフォームに対応できるようにキャプチャーし、デジタル音源として楽しむことも可能です。
このチュートリアルでは、ADI-2/4 Pro SEの高繊細なAD/DAとRIAAモードによるレコード・リスニングやレコードを高音質でデジタル・アーカイブする方法をご紹介します。
ADI-2/4 Pro SEのRIAAモードとは
VIDEO
ADI-2/4 Pro SE は新たに搭載されたRIAAモードにより、フォノイコライザーを経由せず直接MMカートリッジのターンテーブルを接続できます。このRIAAモードは、MMカートリッジごとの出力電圧の違いや、LP盤ごとのレベルの違いに幅広く対応する5段階の入力ゲインを搭載し、1サンプル毎に反応する正確なレベル・メーターと合わせて使用することで大切なレコードのダイナミック・レンジを最大限確保します。さらに、本体に搭載される補正機能を活用してレコードのバックグランド・ノイズを抑えながら、高品位なリアルタイム再生およびデジタル・アーカイブを可能にします。
ADI-2/4 Pro SEのRIAAモードは一般的なフォノイコライザーとは異なり、ゲインやRIAAイコライゼーションをデジタル領域で処理し、以下のような多くの利点を持ちます。
ゲイン・ステージ間のチャンネル偏差が非常に小さい アナログRIAAプリアンプは、部品のわずかな精度のばらつきにより、振幅と周波数特性の両方において左右のチャンネル間に差異を生じさせる可能性があります。ADI-2/4 Pro SEのRIAAモードはこのゲイン・ステージ間のチャンネル偏差を非常に小さく抑えられています。
極めて正確なRIAA補正 正確なRIAAカーブを再現できないとRIAA EQ補正が正しく行われなくなります。ADI-2/4 Pro SEのRIAA偏差は20 Hz 〜 20 kHz:< ± 0.05 dBと極めて正確なRIAA補正を実現しています。
アナログを細部まで再現する高精度なAD変換 ADI-2/4 Pro SEのAD機能は、マスタリング・スタジオでアナログ機器を通して処理された音をデジタルで細部まで正確に再現する用途でも使用され、無色透明で高解像度、他に類を見ない低ノイズ、低歪みのアナログ入力のキャプチャーを可能にします。
ヘッドルームを選択でき、高いオーバーロード耐性を実現 出力電圧が異なる様々なMMカートリッジに幅広く対応するため、複数のゲイン・レベルを選択できます。デジタル・ヘッドルームは選択されたゲインによって変化します。選択したゲインが適切か、入力信号がオーバーロードしていないかどうかは、アナライザーの水平レベル・メーターで確認できます。
ADI-2/4 Pro SEの仕様について
ADI-2/4 Pro SEのRIAAモードはMMカートリッジに対応し 192 kHzまでのサンプルレートのPCMフォーマットをサポートします。なお、MCカートリッジや外部フォノイコライザー、DSDフォーマットやさらに高いサンプル・レートを使用する場合は、RIAAモードではなく通常のライン入力モードで同様にアナログ・レコードを楽しむことができます。詳細はこちら をご覧ください。
レコードの準備
どれだけ高音質なフォーマットでデジタル録音したとしても、元々のレコードのコンディションが悪かったり、正しくターンテーブルをセッティングできていないと台無しになってしまいます。デジタル化のみならず、アナログ・レコードを聴くだけだとしても、より良い音で楽しむためには以下のポイントが重要です。
プレーヤーが水平になっている
ゼロバランスが取れていて適切な針圧に調整できている
入念なレコードのクリーニング、静電気除去、針先のホコリ除去
レコードをADI-2/4 Pro SEでリスニングする
機器の接続方法
ADI-2/4 Pro SE は、MM(ムービング・マグネット)型カートリッジが装着されたターンテーブルを直接接続することができます。
ターンテーブルからADI-2/4 Pro SEへはアナログ・ケーブルで接続します。ADI-2/4 Pro SEのXLR/TRSコンボジャックに接続する際は、右図のRCA-TSアダプター、もしくはRCA-TSケーブルを使用します。
ターンテーブルのアース線については、本体の任意のアース・ポイントに接続できます。最も簡単な方法は、製品に付属されるデジタル・ブレイクアウト・ケーブルを使用して、リア・パネルのD-Sub端子部分に挟み込む方法です。
D-Subコネクターのネジをしっかりと締めてアース線を固定し、本体のアースに接続してください。
ADI-2/4 Pro SEの設定
上記の図の通りに、接続が完了したらADI-2/4 Pro SEの設定を行います。
STEP1:DACモードに設定し、ソースをAnalogに変更する
SETUPボタンを押して、Optionsメニューに入り、エンコーダー❷を回してDevice Mode/DSD を開きます。エンコーダー❷を押してBasic Mode を選択し、エンコーダー❷を回してDAC モードに設定し、本体付属のリモコンのボタン1を押してソースをAnalog (アナログ)に切り替えます。本体のLine Output メニューからも切り替え可能です。
Tips1:サンプル・レートについて
サンプル・レートの設定は、コンピューターと接続している場合はコンピューターから、接続がない場合は本体のOptions - Clockメニューから変更できます。
Tips2:DACモードについて
上記のように、DACモードに設定することで、アナログ入力以外のソースをリスニングする際に、リモコン操作で簡単に切り替えができるようになります(詳細:「DACモードとは? 」)。
STEP2:RIAAモードに設定する
I/Oボタンを押して、I/Oメニューに入ります。エンコーダー❶を回してAnalog Input メニューに入り、エンコーダー❷を回してSettings を開きます。
エンコーダー❷を押して下にスクロールしていき、RIAA Mode を選択します。レコードのレベルに応じて、適切なレベル値を選択します。通常は+26 dBで最適なレベルが得られるはずです。水平レベル・メーターが 0 dBFSから数dB下の付近に留まり、オーバーロードが表示されない状態を保つようにしてください。
ADI-2/4 Pro SEの設定はたったこれだけで、後はレコードに針を落とすだけです!
Tips:ADI-2/4 Pro SEに搭載される機能を活用してランブル・ノイズを除去する
ターンテーブルは機械構造であるため、低周波ノイズやマイクロフォニック効果、レコード溝と針が当たる音、そしてもちろん埃や傷、静電気によるポップ・ノイズ等様々な不要なノイズを引き起こします。ADI-2/4 Pro SEはこれらの付帯ノイズを抑えるためのRIAA Mono Bass やEQフィルター 等の様々な機能を備えています。
フィルターなしで録音した信号
フィルターを適用して録音した信号
レコードを高音質でアーカイブする
レコードをデジタル化するメリット
ADI-2/4 Pro SEはアナログ・レコードのリスニングはもちろん、レコードのデジタル・アーカイブでも音質劣化が極めて少なく、解像度の高いクリアで明瞭なサウンドでキャプチャーすることができます。音を良い状態のまま高品質でデジタル化することで、お気に入りのレコードを末長く楽しむことができます。
高音質でアナログ・レコードを録音したい
手持ちの音楽プレーヤーでレコードの音を楽しみたい
ストリーミング・ライブラリーでは見つけられないレアな音源をデジタル化したい
大事なレコードを良い状態で保管したいので再生を控えたい
レコードの録音手順:「Sound it!」を使用した例
このガイドでは、録音・再生ソフトウェア「Sound it! 」を使用した例を紹介しますが、他の録音ソフトやDAWでも同様の手順で録音可能です。ADI-2/4 Pro SEとコンピューターをUSBケーブルで接続し、録音ソフトウェアを使用して、以下の手順でレコードをデジタル保存できます。
STEP1:ADI-2/4 Pro SEの設定
「レコードの再生手順」の1と同様に本体のBasic ModeがDACモード に設定されており、ソースがAnalog になっていることを確認します。
STEP2:オーディオポートの設定(入出力デバイスをADI-2/4 Pro SEに設定)
①必要のないソフトウェアが立ち上がっていないことを確認し、Sound It!を起動します。
②画面上部の設定メニューからオーディオポートの設定を開きます。出力デバイスと入力デバイスにADI-2/4 Pro SEを選択します。Core Audio画面が表示されますのでそのままOKを押します。
※Windowsの場合は、ASIO MADIface USBを選択してからASIO設定でOKを押します。
STEP3:録音するサンプル・レートを設定
①ファイルメニューでファイルを新規作成します。
②オーディオファイルの新規作成画面が表示されますので、「フォーマット変更」ボタンを押します。
③任意のフォーマットに変更してOKを押します(ADI-2/4 Pro SEのRIAAモードはサンプル・レート192 kHzまでのPCMモードで使用可能です)。
④最後に、macの場合はAudio MIDI設定のオーディオ装置 > フォーマットでADI-2/4 Pro SEを同様のサンプル・レートに設定します。Windowsの場合はMADIface Series Settingsで変更します。
STEP4:入力レベルを設定し録音する
①それぞれの機器が正しく接続されていることを確認してください。
②ADI-2/4 Pro SEのAnalog Inputのレベル・メーターが赤くOVRになる箇所がないようにレベルを調整します。本ガイドでは余裕を持ってメーターが-6 dB付近で触れるように以下の方法で設定します。
まずAnalog InputのRIAA Modeのレベルを+26 dBに設定します。
レコードの一番音量が大きい箇所を再生し、レベル・メーターがOVR表示になる場合は、RIAA Modeのレベルを+20 dBに変更します。
最後に、入力のレベルメーターが-6 dB付近を示すようにLeftチャンネルとRightチャンネルのTrim Gainをそれぞれ上げてレベルを微調整します。-6 dBと言う値はレコードの予期しないノイズのためにヘッドルーム(余裕)を確保したものですが、レベルメーターがOVRを示さない限りは-6 dB以上になっても問題ありません。入力レベルの設定は以上で完了です。
③レベルを設定したら、Sound it!の録音ボタンを押し、同時にレコードを再生します。
④停止ボタンを押して録音を完了し、ファイルメニューから名前をつけて保存を選択して、任意のフォーマット(WAVやflacなど)で保存してデジタル化は完了です。
※録音した音源をチェックする場合は、リモコンのUSBボタンを押すか、または本体のLine Output1/2のAD/DA SourceをUSBに変更します。
アーカイブした音源の再生:Audirvanaの例
ここでは、ハイレゾ対応の再生ソフトウェア「Audirvana」を使用した例を紹介します。
STEP1:Audirvanaのライブラリにフォルダを追加する
①事前にアーカイブしたデータごとのフォルダや、レコードアーカイブフォルダなど任意の形で作成し、デジタル化した音源をそのフォルダに入れておきます。
②Audirvanaのシステム環境設定のライブラリから、ローカルフォルダを追加します。
③Audirvanaが自動的に音源のインポートを開始します。
STEP2:出力デバイスを設定して、ライブラリから再生する
①Audirvanaの画面右下にあるスピーカーアイコンをクリックし、出力デバイスをADI-2/4 Pro SEにします。
②画面左のライブラリからリスニングしたいアーカイブ音源を選択し、再生ボタンを押します。
以上で、アナログ・レコードのリスニングをはじめ、デジタル・アーカイブやアーカイブ音源のリスニングを楽しむことができます。
▼ MCカートリッジや外部フォノイコライザー、より高いサンプル・レート(DSDを含む)を使用する場合
192 kHzより上のサンプル・レートおよびDSDフォーマットやMCカートリッジの使用については、下図のように外部機器をADI-2/4 Pro SEと組み合わせることで可能です。ADI-2/4 Pro SEの高精度なAD変換を用いて上記の点や、お気に入りのフォノイコライザー等でもアナログ・レコードを楽しむことができます。
MCカートリッジを使用する場合
出力電圧の低いMCカートリッジを使用する場合は、ターンテーブルからADI-2/4 Pro SEの間にMC昇圧トランスを接続し、ADI-2/4 Pro SEをRIAAモードにすることで使用できます。
別途フォノイコライザーを使用する場合
お手持ちのフォノイコライザーやフォノイコ内蔵のプリアンプを使用する場合は、ターンテーブルからADI-2/4 Pro SEの間にフォノイコライザーを接続します。ADI-2/4 Pro SEのRIAAモードはOFFにし、Analog InputのSettingsメニュー内のRef LevelとTrim Gainを使用してレベルを調整します。
DSDフォーマットで録音する
上図の通り、別途フォノイコライザーを使用することで、RIAAモードの制限なしに192 kHz以上のサンプル・レートのPCMフォーマットやDSDフォーマットでアナログ・レコードのデジタル化を高音質で行うことできます。DSDは通常、録音後に編集ができないため、一般的な音楽制作のスタジオ録音にはなかなか採用されない規格ではありますが、編集の必要がない生のライブ演奏やアナログ音源をそのままデジタル化する際によく選択される規格です。
詳細はこちらの記事をご参照ください:アナログ・レコードを高音質でデジタル保存する
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