OBS Studioは、ビデオ録画とライブ配信用の無料でオープンソースのソフトウェアです。YouTubeやTwitch、Mixer、ニコニコ生放送などの動画配信サイトに対応し、ゲームをはじめとする動画の生配信に必要なエンコーダー・ソフトの定番として知られています。ここでは、Babyface ProやFirefaceシリーズなどのRMEオーディオ・インターフェイスでOBS StudioをmacOSでご利用いただく際の、基本的な設定方法を解説します。
Mac版OBS Studioは、オーディオ・インターフェイスのマルチ入力に対応していません(最初の2チャンネルのみ認識)。また一部のオーディオ・インターフェイスでオーディオ信号が直接入力できないバグも存在します(OBS Studio 25.0.8時点)。このセットアップガイドでは、Mac内で信号をソフトウェア・ルーティングすることで、この問題を回避する方法を紹介します。
* WindowsでのOBS Studioセットアップガイドは、こちらをご参照ください。
* マイク/楽器入力/DAWをエフェクト処理後にミックスして配信するには、こちらをご参照ください。
本セットアップ・ガイドでは、OBS Studio 25.0.8の設定画面を使用しますが、異なるバージョンのOBS Studioをご使用の場合も、インターフェイスや、メニューの名称は一部異なりますが、基本的な操作方法は類似していますので、同様にご参考にしていただけます。
また、本ガイドはドライバがすでに正しくインストールされ、RMEのオーディオ・インターフェイスが正常に動作していることを前提に作成しています。インストール手順については、製品に同梱されているインストール・ガイド、またはマニュアルをご参照ください。
ご注意: 本ガイドは設定時のご参考情報として公開させていただいております。本ガイドの内容について弊社サポートへお問い合わせ頂きましてもご回答致しかねますので、あらかじめご了承の程お願いいたします。 各製品のご使用方法に関しましては、お取り扱いメーカー様、または販売代理店様までご確認ください。
LadioCast、BlackHoleをインストールする
Mac版特有のこの問題を回避するため、LadioCast(Mac内でのソフトウェア間ルーティングを可能にするユーティリティ)と、BlackHole(仮想ドライバーソフトウェア)をインストールする必要があります。以下からダウンロードしインストールを行い、必要であればコンピューターを再起動してください。
LadioCast
https://apps.apple.com/jp/app/ladiocast/id411213048
BlackHole
https://github.com/ExistentialAudio/BlackHole/releases
OBS Studioを起動すると、新規ウィンドウが表示されます。
ウィンドウ下側にある「ソース」セクションの「+」ボタンをクリックし、表示されるメニューから配信したい映像ソースを選択します。DAWなどのソフトウェア画面を配信する場合は、「ウィンドウキャプチャ」を選択します。カメラの映像を配信する場合は「映像キャプチャデイバス」を追加するなど、必要に応じてソースを追加してください。下の画像は「ウィンドウキャプチャ」を選択し、Presonus Studio Oneのウインドウをソースとして登録する例です。
「ソース」セクションの「+」ボタンをクリックし、表示されるメニューから「音声入力キャプチャ」を選択します。
表示されるダイアログで「新規作成」を選択して音声ソース名を入力します(RME Babyface Pro、Fireface UCなど)。
「OK」をクリックすると表示されるプロパティ・ダイアログで、音声入力デバイスを選択します。ここではSTEP 1でインストールした「BlackHole 16ch」を選択してください。選択後、「OK」をクリックします。
今回の設定方法ではTotalMix FXでマイクを扱うため、OBS Studioの「マイク入力」は使用しません。「音声ミキサー」に表示される「マイク」はミュートに設定することをお勧めします。
これでOBS Studio側の画面と音声の設定は完了です。以下は、Presonus Studio One の画面と音声入力ソース「BlackHole 16ch」を設定したOBS Studioの画面です。
今回紹介する方法は、配信するすべての音声(PCからの音声信号(ゲームやDAWの再生音など)や外部入力マイクの信号など)をTotalMix FXでミックスし、OBS Studioから配信します。つまりOBS Studio側には、すべての音声が含まれるステレオ信号のみが入力され、そのステレオ信号のみが配信されます。これによりOBS Studioをシンプルに使用できるだけでなく、TotalMix FXのフレキシブルなルーティング機能やFX機能を活用できます。またOBS Studioの音声ミキサーの代わりにRMEインターフェイス内蔵DSPによる高解像度ミキサーを使用できるため、高音質での配信が可能になります。ヘッドフォン・モニタリングの遅延の心配もありません。またiPadアプリ“TotalMix Remote”を用いることで、手元にあるiPadを操作し配信中に各トラックのバランスをリアルタイムに調整することも可能です!
TotalMix FXウィンドウのHARDWARE OUTPUT列(一番下の列)にあるサブミックス「AN1/2」を選択します。この状態で上段(HARDWARE INPUTS)と中段(SOFTWARE PLAYBACK)の各トラック・レベルを調整することで、サブミックスAN1/2(ハードウェア出力端子1/2)から出力される信号を調整することができます。
マイクや楽器などの外部入力を使用する場合は、各マイク/楽器の入力設定を行います。たとえばオーディオ・インターフェイスのマイク入力端子1にマイクを接続した場合は、TotalMix FXの上段(HARDWARE INPUTS)のMic 1が入力端子1に該当します。Mic 1のフェーダーを上げてから、次の設定を行います。
フェーダーの横にあるスパナ・アイコンをクリックするとSettingsエリアが表示されます。
マイクの入力レベルが小さい場合は「Gain」ノブを適切なレベルまで上げて下さい。
コンデンサー・マイクをお使いの場合は、「48V」ファンタム電源ボタンをオンにする必要があります。
ステレオ・マイクをお使いの場合は、「Stereo」ボタンを押すと次のトラックがペアとして連動し、ステレオ入力として扱われます。
配信するPCのアプリケーションのレベルを調整します。PCからの再生音は、TotalMix FXの中段(SOFTWARE PLAYBACK)に入力されます。通常、ゲームや音声再生ソフトの再生音は、デフォルトでAN 1/2に表示されます(各ソフトウェアまたはmacOS環境設定のサウンド出力デバイス設定をRMEインターフェイスに設定する必要があります)。
外部入力とPCの再生音のレベル調整が完了したら、作成したサブミックスAN 1/2の信号をOBS Studioに送る設定を行います。これにはTotalMix FXのLoopback(ループバック)という機能を使用します。ループバックは、作成したサブミックス(下段のハードウェア出力)をオーディオ・アプリケーションの入力にルーティング(ループバック)できるTotalMix FXの目玉とも言える強力な機能です。ハードウェア出力を物理ケーブルでハードウェア入力に直接接続したかの様なルーティング・セットアップをソフトウェア的に実現しアプリケーションへ送信できます。アプリケーション間でオーディオ信号のやり取りが可能になり、ゲームやDAWの出力信号を(その他の入力ソースとミックスし)、OBS Studioに入力することができます。
サブミックスAN 1/2信号は、オーディオ・インターフェイスのハードウェア出力端子1/2から出力されます。つまりモニタースピーカーをインターフェイスのハードウェア出力端子1/2と接続すると、AN 1/2のフェーダーでスピーカーのボリュームを調整できます。このときサブミックスAN 1/2をOBS Studioにループバックしてしまうと、スピーカーのボリュームとOBS Studioから配信する信号レベルが連動してしまい不便です。そこでここでは、TotalMix FXのミラーリングという機能を活用し、スピーカー出力と配信レベルを個別に調整できるように設定しましょう。
AS 1/2のスパナ・アイコンをクリックしてSettingsエリアを表示し、「Loopback」ボタンをオンにします。
これでAS 1/2の信号をOBS Studioへ送るためのTotalMix FXの設定が完了しました。
AN 1/2 → スピーカー出力信号
AS 1/2 → OBS Studioから配信される信号
このように、同じミックス信号を個別のボリュームで使い分けることができます。
LadioCastを起動し、ミキサー・ウインドウを開きます(“ウインドウ” > “ミキサー”)。
左上の「入力1」セクションのメニューからRMEインターフェイスを選択します。
メニュー下にあるメーターの左に表示される小さい数字はTotalMix FXのチャンネル番号です。この番号をループバックに設定したチャンネルに合わせて設定する必要があります。下図のFireface UCの使用例では、TotalMix FXからのループバック・チャンネルAS 1/2に相当するチャンネル番号の11と12を設定しています。このチャンネル数はお使いのインターフェイスによって異なります。TotalMix FXでループバックレベルを調整しながら、適切な信号がLadioCastに入力されているかをご確認ください。
LadioCast右上の「出力メイン」セクションのメニューから「BlackHole 16ch」を選択します。設定は以上です。
STEP 3でOBS Studioへの音声入力ソースを「BlackHole 16ch」に設定しているため、OBS Studioの音声入力ソースにはBlackHoleを経由したTotalMix FXのAS 1/2信号が入力されているはずです。「音声ミキサー」セクションの該当するレベル・メーターが触れていれば準備は完了です。この信号は、マイクなどの外部入力やPCアプリケーションの音声など、配信するすべての音声が含まれたミックス信号となります。
OBS Studioで配信の設定を行い、配信を開始します。 OBS StudioはYouTube、ニコニコ生放送、Twitch、Mixerなどの主要なライブ配信サービスに対応しています。アカウントを連携し、「コントロール」セクションの「配信開始」ボタンを押すだけで簡単に生配信を開始できます。
iPad/Windows/Macアプリ“TotalMix Remote”は、ネットワーク内のiPadやPCからTotalMix FXを遠隔操作できるアプリです。ライブ配信の際にTotalMix Remoteを使用すると、手元に置いたiPadで配信中にマイクやアプリケーションのレベルをその場で直感的に変更できます。また、Snapshot(プリセット機能)を使用すれば、様々なルーティングを瞬時に切り替えることが可能です。配信中のPCを触らずにミックス・バランスやルーティングを調整できるため、誤操作を防ぐことにもつながり、シンプルなワークフローで安心して配信が行えます。TotalMix Remoteの詳細や設定に関する情報は、こちらをご参照ください。
以上でmacOSでのOBS Studioの基本的なセットアップは完了です!