Windows PCでDAWやオーディオ・インターフェイスを使った録音、再生環境を構築する際に、運用中のトラブル回避やパフォーマンス向上のためにWindows OSを最適化することができます。本ガイドでは、その設定項目と手順をご紹介します。
*メーカーごとにPCの設定が異なる場合がありますので、お使いのPCメーカーへお問い合わせください。
・ USB電源の設定
・ スタートアップ・アプリケーションと常駐アプリケーションを無効化
・ グラフィックドライバー(グラフィックボード)のインストールとアップデート
Windowsでは、エディションやバージョンの違いによって定期的にシステムのアップデートが準備されます。録音中や、現場でのセットアップ中など、危険なタイミングでアップデートが始まらないように常に更新設定を確認しておく必要があります。またこのアップデートが「待機状態」になることで、USB転送エラーなどが発生し、ノイズが発生することがあります。
これは現場で録音/再生している時にも発生するため、必ず確認しておくことを推奨します。
①Windowsキーから「設定」を開きます。
②「更新とセキュリティ」を開きます。
③「Windows Update」タブにて、更新プログラムを確認します。
④「待機状態」になっている場合は、更新を適用します。
⑤「更新を7日間一時停止」を選択します。
⑥更新の一時停止は7日間ごとに追加可能です。
セキュリティとして適宜アップデートが必要ですが、録音現場では必要ありません。突然のタイミングで、Windows Updateが始まる、待機状態になる、ことを避けるため常に確認してください。
一時的なUpdateスケジュールのオフではなく、完全にUpdateサービスを無効化したい場合は、Home版では「Windows Updateサービスの無効化」と「タスクスケジューラの無効化」を行います。
タスクマネージャーを起動し、「サービス」タブを開き、画面下部の「サービス管理ツールを開く」をクリックします。
右のエリアで「Windows Update」の項目を右クリックして「プロパティ」を開き、「全般」タブの「スタートアップの種類」プルダウンから「無効」を選択し、「サービスの状態」にある「停止」をクリックします。
「サービスの状態」が「停止」になっているのを確認し、「適用」をクリックします。 続いて「回復」タブに切り替え、「最初のエラー」横のプルダウンから「何もしない」を選び、「適用」をクリックします。
*適用されるのに時間がかかります。
Windowsのメニューから「Windows管理ツール」 > 「タスクスケジューラ」を開きます。
左側にある「タスクスケジューラライブラリ」を展開し、「Microsoft」>「Windows」>「Windows Update」をクリックします。
中央上にある「Scheduled Start」をクリックし、右側の「操作」から「エクスポート」をクリックします。これでバックアップが作成されますので、そのまま保存します。
他にも中央上にファイルがある場合は続けてクリックして選択し、同じ操作でバックアップを取ります。 バックアップが終わったら、「Scheduled Start」を右クリックして「削除」を選択します。
以上でWindows Home版のUpdateサービスが無効になりました。
*自動更新を復元する場合は、タスクスケジューラでバックアップしたスケジュールデータを読み込んで復元してください。
一時的なUpdateスケジュールのオフではなく、完全にUpdateサービスを無効化したい場合は、Pro版では、Windows Updateの自動更新を行っている「グループポリシーエディター」で停止操作を行います。
Windowsキーと「x」キーを同時に押して表示されるメニューから「ファイル名を指定して実行」を選択し、「gpedit.msc」と打ち込んで「OK」をクリックすると「ローカルグループポリシーエディタ―」が起動します。
左側の「コンピュータの構成」>「管理テンプレート」>「Windowsコンポーネント」>「Windows Update」をクリックし、右側のエリアに表示される「自動更新を構成する」をダブルクリックします。
「自動更新を構成する」ウィンドウが開くので、「自動更新を構成する」の下にある「無効」を選択し、下部の「OK」をクリックします。
再起動後にWindows Update画面で、更新が無効になっていることを確認できます。
以上でWindows Pro版のUpdateサービスが無効になりました。
*元に戻す場合は「自動更新を構成する」の下にある「有効」を選択し、下部の「OK」をクリックします。
特に必要がない場合は、ネットに接続しないようにWi-Fiや、イーサネット端子をオフにします。
通常のオフに加えて、ネットワークアダプターを無効化することで、システムのリソースが開放されます。
コントロールパネルを開き、デバイスマネージャーを立ち上げます。ネットワークアダプターの項目を展開し、無効化するネットワークアダプターを右クリック、「デバイスを無効にする」を選択します。
Windowsのシステムサウンドと、DAWで使用する設定は必ずしもサンプル・レートが一致しません。
予期せぬ操作によって発生したシステムサウンドが、DAWで使用しているオーディオ・デバイスから出力されることを避けるため、システムサウンドをOFFにすることが必要です。
Windowsの設定 > システム > サウンドのタブの下部へ移動して「サウンドコントロールパネル」を開きます。
サウンドコントロールパネルの「サウンド」タブへ移動します
「Windows 標準」として動作に対してシステムサウンドが割り当てられています。 このプルダウンから「サウンドなし」を選択することで、全てのシステムサウンドをOFFにします
ウィルス対策としてネットワークに接続するパソコンにインストールされているアプリケーションですが、長時間の録音を行う時などで問題になることがあります。
起動していなくても、バックグラウンドで自動的に起動することによって、パソコンの動作負荷に繋がります。
事前にスキャンの設定を変更する、またはアプリケーション自体が起動しないように変更することが重要です。可能であれば、アンインストールしておくことも一つの手段です。
*アプリケーションのオフ設定などは提供元へお問い合わせください。
標準でインストールされているクラウドサービスの「OneDrive」は便利である一方で、録音アプリケーションなどの動作に影響することがあります。
Windowsの設定 > 「アプリと機能」から「Microsoft OneDrive」をアンインストールします。
Windowsに標準でインストールされているAIアシスタントの「Cortana」はWindowsキー +「C」キーのショートカットで起動します。録音中に不意に起動しないように無効化を行います。
Windowsキー +「C」キーを押し、Cortanaを起動させて画面の「・・・」をクリックします。「キーボードショートカットキー」を選択して、画面のトグルスイッチをオフにします。
タスクバー上で右クリックし、「Cortanaのボタンを表示する」のチェックを外します。
次にCortanaの常駐を停止するため、Windowsの設定 > アプリ > スタートアップ画面を表示させ、「Cortana」のトグルをオフにします。
なお、Cortanaを削除するには、通常と異なり「Windows PowerShell」からコマンドを使用する必要があります。
詳細についてはMicrosoft社へお問い合わせください。
USB電源の省電力設定が有効の場合、消費電力を抑える目的で録音で使用するUSBオーディオ・インターフェイスとの接続をUSBコントローラー側から切断する恐れがあるため、この設定をオフにします。
デバイスマネージャーを開き、ユニバーサル・シリアル バス コントローラーを展開します。
USBルートハブを選択します。
USBルートバブやマザーボードをダブルクリックして、詳細を開き「電源の管理」タブで「電力の節約のために、コンピューターでこのデバイスの電源をオフにできるようにする」からチェックを外します。
長時間録音中にパソコンがスリープしてしまわないように設定する必要があります。
Windowsの設定 > システムで「電源とスリープ」に移動します。
ディスプレイとPCのスリープについての項目があるので、「なし」を選択してスリープしないようにします。
次に関連設定にある「電源の追加設定」を開きます。
「電源プランの選択またはカスタマイズ」のウィンドウが開くので、プランの「高パフォーマンス」を変更します。
もし、「高パフォーマンス」の選択肢がない場合、タスクトレイにある「バッテリーメーター」のアイコンをクリックして「最も高いパフォーマンス」へスライダーを動かして設定します。
下記設定は、設定項目が表示されている場合にのみ行ってください。表示されていない場合にはレジストリの変更などが必要となるため事前にメーカーへお問い合わせいただくとともに自己責任で表示操作を行ってください |
「電源プランの選択またはカスタマイズ」の画面で「プランの変更」を選択します。
続いて「詳細な電源設定の変更」を開きます。
電源オプション画面が開くので、「USB設定」から「USBのセレクティブ サスペンドの設定」を無効にして「適用」をクリックします。
前項の電源オプション画面に「プロセッサの電源管理」の項目を開きます。
最小および最大のプロセッサの状態を「100%」に設定し、システムの冷却ポリシーを「アクティブ」に変更して適用します。*SSD搭載の場合、冷却ポリシーは不要になる場合があります。
Windowsの設定 > システム > 詳細設定を選択します。
関連項目から「システムの詳細設定」を開き、「詳細設定」タブのパフォーマンス欄にある「設定」を開きます。
Windowsのグラフィック効果の調整を行うことで、負荷の軽減が見込めます。
パフォーマンス オプションの「視覚効果」タブでは、このグラフィック効果の設定を変更することが可能です。
「カスタム」を選択し、「スクリーンフォントの縁を滑らかにする」項目以外のチェックを外して無効にします。
次に「プロセッサのスケジュール」を変更するため、「詳細設定」のタブへ移動します。
「詳細設定」タブへ移動して、プロセッサのスケジュール欄で「バックグラウンドサービス」を選択して適用します。
標準では無効になっていますが、もし有効になっている場合は、ストレージのアクセス速度に影響を与えますので、「ディスク圧縮」の設定を無効にします。エクスプローラーで使用しているドライブを右クリックし、「プロパティ」から設定を確認できます。
また、BitLockerや録音/再生に使用するフォルダに対する暗号化機能が使用されている場合は転送速度に影響を与える場合があるので、必要ない場合は無効化します。
外付けストレージなどに対しても確認をします。
オペレーティングシステムとは別に、録音データを外部ストレージに直接保存したり、外部ストレージからの再生を行うことがあります。外部ストレージのフォーマット形式は、この操作のパフォーマンスに大きく影響します。
Windowsだけではなく、Mac環境でも使用できる「FAT」「FAT32」「exFAT」は、便利である反面、パフォーマンスは高くありません。
Windows専用の安全で高速な「NTFS」を選択してフォーマットを行います。
コンピューターに外部ストレージを接続し、エクスプローラー画面から接続したドライブを右クリックし、「フォーマット」を選択します。 ファイルシステムの欄を「NTFS」に変更してフォーマットを行います。
外部ストレージの取り外しポリシー設定を変更することで、高パフォーマンスの設定にすることができます。
*変更後は「安全な取り外し」を行う必要があるので、設定後は必ず取り外し操作を行ってください。
デバイスマネージャーを起動し、「ディスクドライブ」下に表示される外部ストレージを右クリックし、「プロパティ」を開き「ポリシー」タブで「高パフォーマンス」を選択して適用します。
オーディオ・インターフェースや外部ストレージをコンピューターに接続する際に、USBハブを使用しないで、直接コンピューターに接続します。
USBハブを使用することによって、データ転送に必要な帯域が制限される場合があります。
USB Cタイプなどの変換が必要な場合は、シンプルな変換アダプターを使用するようにしてください。
Windowsを起動した時に立ち上がるアプリケーションや、常にバックグラウンドで動作しているアプリケーションが存在します。
不要なものの自動起動を無効化することで、動作が改善される場合があります。
Windowsキーと「x」キーを同時に押して表示されるメニューから「タスクマネージャー」を起動します。
下部にある「詳細」を開きます。
「スタートアップ」タブへ移動すると、Windows起動時に自動で立ち上がるアプリケーションについて「有効」の状態になっています。
これらのうちで不要なものを選択して「無効にする」をクリックします。無効にしても、手動での起動は可能です。
次にバックグラウンドで動作する可能性のあるサービスの設定をします。 各サービスについて詳細が不明な場合、この手順はスキップしてください。
Windowsキー > Windows管理ツール > システム構成を開きます。検索で「システム構成」を打ち込むことでもアクセス可能です。
「サービス」タブに移動し、まず「Microsoftのサービスを全て隠す」にチェックを入れます。動作に必要となるサービスを無効にしないための手順です。
実行不要なアプリケーションのチェックを外していき、最後に適用します。
この時、「全て無効」にすることも可能です。無効にできないものについては後から有効になります。
変更の適用後に再起動する旨のメッセージが表示されます。
「再起動」をクリックしてください。
なお、元の状態に戻すには、再度「システム構成」を開き、「通常スタートアップ」を選択します。
Windowsのシャットダウンのオプションとして初めから「高速スタートアップを有効にする」設定になっています。これはシャットダウン時の状態を保存しておき、起動時にそれを読み込むことで起動時間を短くする機能です。
問題があったことでシャットダウンを行う際に、リフレッシュされない可能性があるので、起動に時間がかかりますが、無効化することをお勧めします。
Windowの設定 >「システム」>「電源とスリープ」の関連項目内「電源の追加設定」を開き、「電源ボタンの動作を選択する」をクリックします。
シャットダウン設定の項目から「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外して、変更の保存を行います。
グラフィックカードが搭載されていないコンピューターはありません。オンボードに含まれる場合や、グラフィックボードを追加している場合でも、適切なドライバーをインストールし、適切にアップデートをかけていく必要があります。
もしドライバーが古い場合は、プロセッサへの処置負荷が大きくなり、コンピューターのパフォーマンスが低下する恐れがあります。
Windows Updateで自動的に適用されることもありますが、適切な環境になっているかは常に確認が必要です。
*グラフィックドライバーについてはお使いのメーカーへお問い合わせください。
一部のアプリケーションでは管理者権限のあるアカウントでのログインが必要となる場合があります。
Windowsの設定 > 「アカウント」 で管理者としてログインしているかを確認してください。
*DAWなどで不具合が起きた場合は、「管理者として実行」を選択して起動することにより改善することがあります。
全てのコンピュータにおいて可能な設定ではありませんが、もし可能な場合には、これらを無効化することは非常に重要です。 Turbo Boostおよび各State Transitionは、プロセッサのクロック・スピード制御に対して影響がある項目で、有効になっている場合、プロセッサのスピードは使用状況に応じて変化し、この変化によってDAWのエラーを引き起こす場合があります。
*設定を変更するためにはコンピュータのBIOS設定にアクセスする必要があります。また、設定変更の可否やその方法については、お使いのメーカーへお問い合わせください。
常に起動し続けていることによって、動作が重くなる場合があります。再起動を行うことで、メモリが解放されることなどが見込まれます。
こまめに再起動を行うこともDAWを使用するための選択肢の一つです。
以上でWindowsでDAWとオーディオインターフェイスなどを使用して録音、再生を行うための最適化ができました。
オーディオ・インターフェースのドライバーや、デバイスのファームウェアは最新のものをお使いください。
RME製品のドライバー、ファームウェア更新ツールはこちらからダウンロードいただけます。
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