江夏正晃 - ライブ配信に最適なRMEオーディオ・インターフェイス - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
RME Users
導入事例
ライブ配信に最適なRMEオーディオ・インターフェイス

株式会社マリモレコーズの代表取締役であると同時に、トラックメーカーやDJとしても活動する江夏正晃氏に、USTやニコニコ動画といったネット配信の現場でのRMEオーディオ・インターフェイスの魅力についてお話を伺う事ができましたので、ご紹介いたします。


「ライブ配信に最適なRMEオーディオ・インターフェイス」

RMEのオーディオ・インターフェイスといえば、プロの現場で信頼を築いてきた誰もが認めるプロダクトであることはサウンドエンジニアやプロデューサーの間では常識だ。そして、ここ数年この信頼が意外なところで評価を受けている。その意外なところというのはPCオーディオユーザーの方たちなのだ。プロの現場で使われてきたRME製品がコンシューマーにも受け入れられるようになってきている。当然といえば当然だが、RMEファンがものすごい勢いで増えているのだ。そしてなんと、この信頼がネット放送の世界にも飛び火してきているのはご存じだろうか。

ネット放送で重要なのは放送内容や画質も当然のことながら、実は音声の質が非常に重要となり、注目が集まっている。視聴者はたとえ少しぐらい映像が乱れても番組を離れることはないが、音声がしっかりしていないと番組から離れてしまう傾向があるのだ。たかが音声、されど音声なのだ。そして最近ネット放送をするにあたって、画質ももとより音声の質を高めている番組を多数見かけるようになった。そしてそんな現場には何とRME製品がよく使われるようになっているのだ。BabyfaceをはじめフラッグシップのFireface UFXまでいろんなRME製品を現場で見かけるようになった。ユーザーの方ならその利点をすぐに理解できると思うが、なぜRME製品がこのような現場で重宝されるのか、これから導入したいという方にはこの記事を是非参考にしてもらいたい。

まず、RMEのオーディオ・インターフェイスはパソコンにほとんど負荷をかけないのだ。ネット放送をする上で、映像配信はかなりパソコンに負荷がかかることは知っているだろう。しかしRME製品に搭載されている強力なDSPはパソコンにほとんど負荷をかけることがない。信じられない人もいると思うが、高品位な音声がほとんどパソコンの負荷なしに配信できると知ればその魅力を感じてもらえるだろう。そしてその接続はUSB2.0でまったく問題ない。驚くことに、たとえそれが多チャンネルになったとしてもやはりほとんどパソコンに負荷はない。ここでは詳しく触れないがRME製品は汎用チップを使うことなく独自に開発したプログラムをFPGAと呼ばれるチップに展開する。すなわち他社にはマネのできない技術がこれまでの大きな信頼を勝ち得てきているのだろう。

そして次に支持されている機能がTotalMixだろう。このユーティリティーソフトはパソコン内にデジタルミキサーを展開するようなイメージだ。初めて目にする人は少しとっつきにくいかもしれないが、大型デジタルミキサーを現場に持ち込むことをイメージと思ってもらえればよい。すなわちRMEのオーディオ・インターフェイスを現場に持ち込むだけでかなり複雑なシステムを組むことができるのだ。

もちろん、配信用のソフトウェア(Ustream Producerなど)へ、同じPCの他のソフトからの音声もTotalMixのLoopBackというボタンを一押しするだけで簡単に設定できるのも魅力だ。 もちろん、マイクやBGMなど、すべての入力をTotalMix上でミックスしてから配信する事ができる。USTでの放送はもちろんだが、ニコニコ動画の「歌ってみた」などにも非常に使いやすい機能だ。
具体的な設定方法は、下記を参照してほしい。
http://www.synthax.jp/tutorials/articles/loopback-02.html

さあ、なんとなくRME製品がネット放送の世界でも支持されてきていることがわかってもらえたでしょう。さて、ここからは実際にどのくらいネット放送でもRME製品の利点があるのか用途別に分けて、現場での使用方法から説明していきましょう。


『音の方向性を保ったまま「今の時代の音」が得られる』

Babyface

Babyfaceはこのサイズで最大10in、12outというちょっとした放送スタジオクラスの入出力を持つオーディオ・インターフェイスなのだ。RME製品の廉価盤と思ってはいけない。
さて、マイク入力が2chまでの対談形式などのインターネット放送なら、Babyfaceだけですぐに始められる。マイクプリアンプは信頼のRME品質である上、TotalMix内でEQもかけられるので細かな設定も可能だ。
放送中にBGMを流したいのであれば、Loopback(ループバック)機能を使ってPC内のプレーヤーの出力を放送に乗せることができる。CDやメディアプレーヤー等の外部再生機を用意する必要がなく非常に便利だ。

そしてもし将来的にもっと多くの入力が必要になった場合、ADAT入力を使用することをお勧めする。例えば比較的価格も手ごろなマイクプリ付きADコンバーターPRESONUS社のDIGIMAX D8等を用いてADAT入力の8chとデフォルトの2chと合わせ、アナログ10ch入力のシステムが簡単に組める。もちろんマイクプリの音質にもこだわるのであれば、RMEのマイクプリ、Octamic IIOctamic XTCがお勧めだ。

Babyfaceは、ボディーこそ小さめだが、その拡張性は非常に高い。 そう考えると高音質な放送をまずは簡単に始めたいという方にはBabyfaceはうってつけだ。とにかく小さいので設置場所も問わない。ちなみにヘッドホン出力は本体とブレークアウトケーブルに2つ持つ。個々に音量調節は出来ないが2人でモニタリングするときには便利だ。


「Fireface UCX : RMEのニューモデル。18in、18outを持ち、現場のいろいろな要望に対応可能。」

Fireface UCXはハーフラックサイズの本体になんと18in、18outという現場での複雑な要求にも問題なく対応可能な仕様になっている。UCXはTotalMixにEQに加え、コンプレッサーも内蔵しているので、現場ではプロフェッショナルレベルのかなり細かい調整が可能になる。また、これらダイナミクスコントローラーは入出力全チャンネルに装備されるので、どんな入力ソースでも的確なサウンドメークができることが最大の魅力だ。
マイクプリはBabyface同様2ch用意されている。癖のないクリアなサウンドが得られるマイクプリはダイナミックマイクでもコンデンサーマイクも適切なゲイン設定が簡単に行える。このマイクプリがRME製品ならでは音質の良さを語る上での一つ要因にもなっている。

さて、ちょっと込み入ったインターネット放送の現場では音声の「返し」(モニター)が必要であったり、VTRやジングル等の音声を挟むことがある。そう言った少し複雑なサウンドシステムを組む際にこのUCXは自由自在にルーティングが組むことができるので、まさにデジタルミキサーとしての使い方が出来るのだ。


「Fireface UFX:本格的放送システムを組むことが出来るフラッグシップモデル」

FirefaceシリーズのフラッグシップモデルにふさわしいUFXは最大30in、30outと、壮大なシステムを組むことも可能だ。全面パネルに用意された小型液晶カラーモニターは全チャンネルのメーターや各チャンネルのステータス等が確認でき、非常に便利。
またマイクプリアンプは4ch用意されているが、もし出演者が増えてもADAT接続のマイクプリを増設することでマイクの増設もすぐに対応できる。
特筆すべきは、UFX前面パネルにUSBコネクターが準備されており、ここにUSBフラッシュメモリーやUSBハードドライブを接続すればUFXの全チャンネルがUSBデバイスにレコーディング出来ることだ。つまり、音声のバックアップがUFX本体だけで行えるのだ。
UCX同様、すべての入出力にEQとコンプレッサー搭載されており、かなり精緻な音作りも可能になっている。本格的なインターネット放送では必要とされる、モニターシステムやトークバックシステムといった環境もFireface UFX一台で簡単に作ることが出来る。一般的にこれだけのルーティングが可能なデジタルミキサーを準備するとなるとかなりのコストがかさむことになるが、UFXは市場価格で24万円台と、機能を考えるとかなりコストパフォーマンスに優れていると言えるだろう。 参考までに全チャンネル使用したシステムを組んだとしても、前述したようにFirefaceシリーズは本体のDSPで動作するのでパソコンにほとんど負担をかけることは無い。インターネット放送は安定した放送が求められるが、負荷をPCにかけないといった恩恵は大きい。こういったところに他社製品との差別化もされている。


Fireface UFXを使ったインターネット放送事例: 「Adobe映像塾」

インターネット放送ではクオリティーとコストについてよく取り沙汰される。テレビ番組などとは違って予算も規模も限られる中、どこまでの機材を選定し番組のクオリティーを保てるかが、どの番組のディレクターも思案のしどころだ。
やはりそういった現状の中、カメラやスイッチャーといったところに力をかける人は多くても、音声やサウンドについては適当な機材で間に合わせる方も多い。本格的ミキサーやEQやコンプといった機材を揃えるとなると中小規模なインターネット放送では現実的ではない。そんな現状の中、中小規模インターネット放送サービスを提供する株式会社マリモレコーズのFireface UFXを使った事例を紹介しよう。

大型デジタルミキサーとオーディオ・インターフェイスがひとつに

4台のカメラ、スイッチャーを中心に、コーナージングルやテロップを出すPC、配信、収録用のPC等を含むモニターなど、総機材がステーションワゴン車で2台分といったところだ。潤沢に予算があるわけではないインターネット放送では、少しでも機材を減らしたいところ。そこで選ばれたオーディオ・サウンドソリューションはFireface UFXだ。現場でのいろいろな要求にこらえられるルーティングワーク、安定したシステム、細かいダイナミクスの調整、バックアップ等、なんと1Uのこれ一台でこなせるのだ。簡単に言えば、大型デジタルミキサーを擁したオーディオ・インターフェイスと思っていただければ良い。図を見ていただくとおり、先に紹介したBabyfaceやUCXで組むシステムにくらべて少し複雑だ。ただ、これぐらいのシステムならばUFXにとってはさほど問題にはならない。

marimoRECORDSにおける配信システム

参考までにmarimoRECORDSではTotal Mixをコントロールする際にはやはりフェーダーが必要だろうということで、BEHRINGER社のBCF2000 B-Control Faderを使っていた。非常に手ごろなコントローラーだが、今まで動作のトラブルは一度もない。Mackie Controlプロトコルで動作するものであればどんなコントローラーでも構わない。フィジカルコントロール出来ることでより細かいコントロールが可能になる。マウス片手にフェーダーワークに苦戦する必要がないことはうれしい。

TotalMixで細かな調整を

先述のとおり、ネット放送の場合、画像が多少途切れても、視聴者は番組を離れることは無いが、音声がとぎれとぎれだと、多くのユーザーが番組を離れるという。たかが、音声、されど音声だ。例えば、収録場所でエアコンや換気ダクトなどの低周波ノイズが気になる場合は簡単に各チャンネルごとに、ローカットをしたり、モニターとのハウリングが起きそうな時は的確なEQワークも簡単に出来る。そして、コンプも内蔵しているので、大きなダイナミクスによる、聞き取りにくさも解消することが出来る。もはや完全な高級デジタルミキサーとも言えるFireface UFXは音質向上のため予想以上の機能が満載されている。例えば、スナップショットと呼ばれるデジタルミキサーのリコール機能もあるので、現場やシチュエーションが変わったとしても設定は保存、読み出しがクリック一つで行える。
準備時間に制約のある配信の現場では非常に便利な機能だ。

さらに、付属の音声分析ソフトウェアDIGICheckによるプロフェッショナルなレベル管理も魅力のひとつだ。マリモレコーズでは、画面の左側にレベルメーターを配置し、配信のための総合的なレベルチェックをこのメーターでおこなっている。

自由自在のルーティング

Fireface UFXはルーティングも自由自在に行える。配信用のステレオ出力から、フロアーモニター、収録機などへの返し等、入出力チャンネルが豊富なので、よほどのことでない限り現場の要望に応えられないということはない。ただ、マイクプリは4ch分しか準備されていないのでマイク入力が増えた場合はマイクプリ、またはマイクプリ付きのADコンバーター等でADATまたはAES入力されることを勧める。

簡単なバックアップ

FXのバックアップシステムは魅力的だ。前述のとおりUSBメモリーやUSBハードディスクを前面のパネルに接続するだけで、全チャンネルの音声バックアップをとれる。DURecというFireface UFXに搭載される機能なのだが、これは万が一、インターネット放送中に回線トラブルなどがあった時などに便利だ。あとから再放送をする場合、しっかり音声のバックアップを取っておく必要があるからだ。実際にこのようなトラブルがあった時に、UFXのバックアップデータに助けられたこともある。一般的にUFXクラスのバックアップシステムを組むとなると、相応の機材、費用が発生する。費用対効果の面から考えてもこのバックアップシステムは各所で喜ばれることだろう。

最後に、、、
RMEの製品はプロの現場でもその音質は評価され、機能性にも優れているが、インターネット放送での一番の売りは安定した動作だろう。同社がFPGAと呼ばれるチップに最適化された独自のプログラムを展開し、たとえUSB2.0転送でも例えばUFXでは最大30イン30アウト(44.1、48Khz時)を保証している。インターネット放送は映像等を扱うため、非常にパソコンに負荷がかかる。例えどんな入出力が増えたとしてもパソコンに負荷をほとんど与えないRME製品は実はインターネット放送にも最適化されているソリューションといえる。

また、上記の3機種(babyface, Firefece UCX, Firefece UFX)にはCCモードと呼ばれる、iPadなどと直接接続できるモードが使用できる。少し変則的な使い方ではあるが、iPad等でインターネット配信する際に、このCCモードを使うと音質向上にかなり役立つ。特にBabyfaceなどと組み合わせれば非常にモバイル性の高い配信システムを組む事ができる。 CCモードに関しての詳細は、こちらのページを参照してほしい。
http://www.synthax.jp/cc-mode.html


江夏 正晃(えなつ まさあき)-ebee#1- プロフィール

Enatsu Masaaki

トラックメーカー、DJ、音楽家として活動する。DJ TAKASHIRO名義ではBLAZE、ULTRA NATE、Urban Soul、元気ロケッツなどのリミックスのプログラミングを担当。自身名義であるebee#1でも、多数の楽曲、アルバムをリリースしている。一方で株式会社マリモレコーズの代表として、楽曲のプロデュースをはじめアーティストプロデュース、CM他、多方面の音楽制作、サウンド・デザインを行う。また関西学院大学の非常勤講師、IMI/グローバル映像大学、デジタルサウンド講座の専任講師も勤める。2011年に「DAW自宅マスタリング」をリットーミュージックより出版。楽曲制作はもちろんのこと、レコーディング、収録、ミックス、マスタリングまでとトータルプロデュースを得意とする。

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