RME導入事例
数々の名曲を世に送り出し、世代を超えて愛されているジャパニーズ・ポップスの大御所、南佳孝さん。今もなお精力的に活動を続ける南さんですが、去る1月24日に久しぶりとなるシングルを発表しました。『ニュアンス』と題されたこのシングルは、デビュー45周年を記念した作品第一弾。タイトル・ナンバーの『ニュアンス』は、年明けからNHK『ラジオ深夜便』のうたとしてオンエアされており、作詞は来生えつこさん、アレンジは井上鑑さんという豪華な顔ぶれが参加していることでも話題になっています。
そしてこのシングルのミキシングとマスタリングを手がけたのが、MadonnaやJanet Jackson、宇多田ヒカルらトップ・アーティストを手がけてきたグラミー・エンジニア、Goh Hotodaさんです。ミキシング/マスタリング作業はGoh Hotodaさんのプライベート・スタジオである“Studio GO AND NOKKO”で行われ、マスタリング作業では愛用のRME ADI-2 Proが活用されたとのこと。そこでシンタックスジャパンでは、マスタリングの最終チェック中の“Studio GO AND NOKKO”にお邪魔し、南佳孝さん、Goh Hotodaさん、今作の共同プロデューサーである三浦文夫さん、上野淳さんの4氏に、シングル『ニュアンス』のプロダクションについて話を伺ってみることにしました。(取材:ICON/写真:八島崇)
ー 今回発表された新曲『ニュアンス/熱い風』は、南さんの古くからの友人お二人を共同プロデューサーに立てて制作されたそうですね。
南 昔はもちろんプロデューサーやディレクターがいたわけですけど、もうどれくらいかな……。かれこれ15〜16年は、全部自分でやってきたんです。でもセルフ・プロデュースだと、どうしても毎回同じ切り口になっちゃう。なので今回は違う風を入れて、人の話を聞きながらやるのがいいんじゃないかなと思ったんですよね。上野(註:上野淳氏)も三浦くん(註:三浦文夫氏)も昔からの知り合いで、ホーム・パーティーとかやって年中呑む仲で。それであるとき、“いま新しい曲を作っているんだけど”と言って、デモを聴いてもらったんですよ。それからですね。この3人のチームで動き出したのは。去年の5月くらいのことです。
上野 南さんとは、ぼくが電通にいた20年くらい前に、ホンダのCMの仕事でご一緒させていただいたのが最初ですね。
南 上野には今でもぼくのラジオの選曲とか手伝ってもらっているんですよ。あと彼は電通のアート・ディレクターだったので、アナログ盤のアートワークとかもやってもらっています。その後、三浦くんとも知り合って、みんな呑み友だちなんです。
三浦 でも普段、ぼくらが呑みながら話しているのは、映画とか料理とか旅とか、そんな話ばかりですけどね(笑)。
ー 音楽プロデューサーではなく、旧知の友人にプロデュースを依頼するというのがおもしろいですね。
南 みんな本業は違うんですけど、(音楽に対して)造詣が深いですからね。作家が書いた原稿を最初に読む編集者、ファースト・リーダーってすごく大事で、それは音楽でも同じなんですよ。曲を聴いて、“これはいいですね”とか、“この曲はこの部分をもっと膨らませたらいいんじゃないですか?”とか言ってくれる人。だから今回、上野と三浦くんにファースト・リーダーをやってもらおうと思ったんです。危ないと言えば、危ないんですけどね(笑)。
三浦 本来いるはずのディレクターもいないですしね(笑)。
南 でも、もう昔ながらの(アルバム制作の)スタイルは終わったと思っているので、それでいいんですよ。それにクリエイティブな人って、今や音楽の世界よりもCMとか出版の方にいたりしますからね。なおかつそういう人たちって、音楽のセンスが良かったりする。だからこういう人たちと組んだ方がおもしろいものができるんじゃないかなって。
ー 音楽的には、次の作品はこうしたいというイメージはあったんですか?
南 もう(自分のスタイルが)できあがっちゃってますし(笑)、何か変えてやろうというのは無かったですね。ジャズも好きですし、ボサノヴァも好きですし、ラテンも好きですし。いろいろやってきたんですけど、最近は全部がつまらなく感じてしまって。“オリジナルって何なんだろうな”とか、いろいろ考えたりしていたんです。それでも曲はできるので、まずは上野の家でデモを聴いてもらって。ギターやピアノだけで作った曲が十数曲あったので、そこでファースト・リーダーたちに“これはいい”とか“これはダメ”とか選別してもらったんですよ(笑)。
三浦 最初にデモを聴かせてもらったときの印象としては、すごく振り幅があるなと。もちろん南さんの王道的な曲もあるんですが、バリエーションがあるなという印象でしたね。
上野 そうですね。今まで以上にハードなロックっぽい曲が多かったですね。ここ数年、ボサノヴァっぽい曲が多い印象だったので、ちょっと変わってきているのかなと。
三浦 ライブの音源を聴くとわかるんですけど、南さんってロックとかファンクにすごく合う声質なんですよ。でも、これまではそういうタイプの曲がほとんど無かったから、今回はあってもいいんじゃないかなと思いました。
ー 実際に制作に入る前に、3人でどのようなことを話し合われたのですか?
南 最初だけでなく、いつも話し合っているんですけどね(笑)。次はどんなアレンジにしようとか、歌詞は誰にお願いしようとか。
上野 いちばん最初に南さんがおっしゃっていたのは、“いくつになってもラブ・ソングだよね”ということ。
三浦 ずっと恋をしていたいよねと(笑)。サウンド面では、世代を超えてスタンダードになるような曲ができたらいいんじゃないかということは話しました。ぼくらと同年代だったら、”やっぱりこのサウンドは気持ちいいよね”と言ってもらいたいですし、若い人にも“何かカッコいいな”と感じてもらたいですし。昔からのファンの方だけでなく、幅広い層に聴いてもらえる作品にできたらと思ったんです。あとは南さんご自身が、ライブでやりたいと思える作品になればいいなと思いました。
上野 やっぱりライブは大事ですからね。
南 でも曲を作るときは、ライブのことなんて考えてないんですけどね(笑)。考えているのは、ずっと歌い続けられる曲を作りたいということだけ。
ー 最初のシングルとして『ニュアンス』をセレクトされたのは?
上野 いろいろ聴かせていただいた中で、この曲がいちばんしっくりきたんです。それとNHK『ラジオ深夜便』のイメージにも合うなと。
南 でも最初、NHKサイドはカップリングの『熱い風』の方がいいと言っていたんですよ。それを聞いたときは“エーッ!”と驚きましたけどね(笑)。ぼくらは断然『ニュアンス』の方が『ラジオ深夜便』には合うと思っていたので。
上野 NHKサイドに聴いてもらったときはまだラララの仮歌だったんですけど、その後歌詞を付けたバージョンを聴いてもらったら、やっぱり『ニュアンス』でいきましょうということになったんです(笑)。
ー 『ラジオ深夜便』のうたとしてバッチリの曲だと思いました。
南 どうなんでしょうね。合っているのかな?(笑) でも繰り返し何度聴いてもうるさくないというか、そのあたりがいいのかなとは思ってます。
ー 歌詞は来生えつこさんですね。
上野 歌詞を誰に書いてもらおうかとなったときに、ふと来生えつこさんのことが浮かんだんです。最近はお名前を見かけることも少なくなってしまいましたけどね。来生さんのちょっと艶かしい歌詞がこの曲には合いそうだなと。艶かしいと言っても、あの方の歌詞は女性目線ではなく、けっこう男目線だったりするんですよ。南さんが歌うそんな歌詞をもう一度聴いてみたいなと。それでダメ元でお願いしてみたところ、ご快諾いただいて。お会いしたら、“私に書けるかしら?”とおっしゃってましたけどね(笑)。でもさすが、すごく良い歌詞です。
ー 来生さんにはどんな話をされたんですか。
上野 ほとんど話はしてないですね。
南 昔から、いろいろ言うとあまり良くないということはわかっているんです(笑)。あの人の場合は、ただボールを投げるだけで、それ以上のものが返ってくるんですよ。
ー アレンジは井上鑑さん。
上野 南佳孝ワールドを作ってきたアレンジャーさんって、それこそ坂本龍一さんとか、亡くなってしまった佐藤博さんとか、たくさんいらっしゃるんですけど、昔の作品を辿っていく中でこの曲は井上鑑さんにお願いしたいなと。井上鑑さんが南さんのいちばん良い部分を知っているような気がして。
南 井上鑑って、それこそ『ルビーの指環』もそうですし、ヒット曲をたくさん手がけてきたアレンジャーで。そのうえ、(井上)陽水から福山雅治まで、売れているアーティストのバックも務めている。昔から今に至るまで、ずっと売れ続けているアレンジャーの一人ですよね。
上野 『ニュアンス』にはストリングスも入れたかったので。弦のアレンジもしっかりできる方となると、やっぱり井上鑑さんだろうと。
ー ジャズ・フレーバーのあるムーディーなアレンジがすばらしいですね。
上野 初期のアレンジからはどんどん変わっていったんですけど、変わっていくたびに良くなっていった感じでしたね。
南 井上鑑は初期のフュージョンのようなイメージと言っていましたね。“初期のフュージョンって何?”と思ったんですけど(笑)。でも、やっぱりさすが。頭のリフとかすごく印象的で。
上野 井上鑑さんのアレンジって、最初はちょっと変わったアレンジに感じるんですけど、何度も繰り返し聴くうちに耳に残る。昔からそうですよね。
ー ミュージシャンに関しては?
上野 すべて井上鑑さんが集めた人たちです。打ち込みは無しですべて生。最初に打ち合わせをしたときに、弦を含めてすべて生でやりたいという話になって。
南 少し変な編成でしたね。ヴァイオリン3本、チェロ3本で、ヴィオラが無いという。でもアイツ、そういうアレンジが巧いんですよ。
ー レコーディングはどちらで?
三浦 世田谷のHeartbeat Studioです。録りのエンジニアは、井上鑑さんがいつも一緒に仕事をされている片倉さん(註:片倉麻美子氏)ですね。南さんの歌もHeartbeat Studioで録りました。
ー 今回、ミックスをGoh Hotodaさんにお願いした経緯についておしえてください。
三浦 最初のシングルのアレンジは井上鑑さんにお願いしましたが、今年リリース予定のアルバムにはThe Renaissance(註:小原礼と屋敷豪太によるロック・デュオ)にお願いした曲もあったり、内容がとてもバラエティーに富んでいるんです。でも、アルバムとして出すわけですから、トーナリティーが欲しい。加えて、古臭くない新しいサウンドにしたかったんです。若い人が聴いて、“おっ、誰だろう?”と思ってもらえるような。それでHotodaさんの名前が挙がって、ダメ元でお願いしてみようということになったんですよ。ちょうど南さんの事務所の社長が面識があるということだったので。
南 今までどおりやっていたら、こんな意見は出てなかったと思いますね。Gohさんともお会いできなかったと思う。だからチームを組んで大正解でした。
三浦 それとご本人を前に失礼なんですけど(笑)、これまでの南さんの作品を聴いていて、バンドの音よりも南さんの歌声の方が強いなということを感じていたんです。何か馴染みが良くないというか、もっと追い込めるんじゃないかということはずっと感じていました。Hotodaさんのようなエンジニアにお願いすれば、もっと良くなるのではないかと。
上野 Hotodaさんが引き受けてくださるということで、最初に思ったのは、オレたち何でもできるなと(笑)。ジャズでもロックでもラテンでも、何をやっても大丈夫だろうと。だからもう今回は振り切っちゃおうと思いました(笑)。最後はHotodaさんが巧くまとめてくれるだろうと。
ー Gohさんはどんな感じで今回の仕事に臨まれたのですか。
Goh まずは南さんの昔の曲を聴いて、勉強するところから始めましたよ(笑)。ちょうど南さんが活躍されていた80年代、ぼくはアメリカにいましたからね。NOKKO(註:Goh Hotodaさんの奥様であるアーティストのNOKKOさん)が南さんのことをよく知っていたので、いろいろおしえてもらったり。昔の曲のプレイ・リストを自分で作って、車の中で聴いたりしながら、あの時代の南さんと今の南さんでは、何が同じで何が変わったんだろうと自分なりに考えたんです。その中で自分の中に残ったのが、『SCOTCH AND RAIN』(註:1982年発表のシングル)だったんですよ。すごく景色が見える曲だなと。あの曲で何かスイッチが入った感じでした。あのイメージでいこうと思ったんです。
上野 さすがHotodaさんですね。本当に『SCOTCH AND RAIN』がそうなんですが、南さんの曲って映像が頭に浮かぶのが魅力なんですよ。
三浦 今回の『ニュアンス』も、最初は南さんが一人で歌っているんだけれども、いつの間にかストリングスが周りを囲んでいる。そんな絵がイメージとしてあったんです。
Goh 先ほど新しいサウンドという話がありましたけど、それでも昔からの流れというのは大切にしなければならないんです。ぼくは洋服屋の店員ではないので、相手のことを何も知らずに、“黒よりもグレーの服の方がお似合いですよ”とは言いたくない(笑)。やっぱり、その人がこれまで培ってきたものを大切にしないと。
三浦 Hotodaさんにはミックスとシングルのマスタリングをお願いしたんですけど、レコーディングに入る前に、“曲にバリエーションがあってもボーカル・マイクは統一した方がいい”とアドバイスをいただきました。
Goh それでぼくがオーディオテクニカのAT5047を薦めたんです。
ー なぜAT5047を?
Goh 南さんが昔の曲で使っていた、トランスフォーマーが入ったシルキーな音のマイクロフォンもいいんですけど、今はレコーダーが違うわけですから、大出力で主張するような音のマイクロフォンを使わないとダメだと思うんですよ。それで最近のマイクロフォンの中では気に入っているAT5047をお薦めしたというわけです。上手くハマるといいなと。
南 これまではNeumann U87とかU67でやってきたわけですけど、今回はGohさんが薦めてくれたマイクロフォンでやってみようと。音はさすがGohさんが薦めてくれただけあって全然OKでしたね。新しいマイクロフォンということだったんですけど、それはあまり感じませんでした。でも今日、ここ(註:Goh Hotoda氏のプライベート・スタジオ)で聴かせてもらって感じるのは、ものすごく繊細に歌を処理してくれているなということ。
ー 今回はどんな処理をされたんですか。
Goh 最近はEQを使わず、エキサイター(註:iZotope Neutron 2)を使うんです。もちろん必要の無いローはカットしますけどね。エキサイターで処理することによって、倍音を含んだままで音を調整することができる。前にグッと出しても音が滲まないんです。EQをちょっといじれば、確かにその帯域を調整できるんですけど、実はそれによって失われるものも大きいんですよ。一緒に鳴っているストリングスが後ろにいってしまったりとか、ある部分だけがピーキーになってしまったりとか。あと今回、南さんの歌は一度アナログで出して、ハードウェア・インサートでRetro Instruments Doublewide Tube Compressorを使いました。
ー ミックスはすべてAvid Pro Tools | HDXシステムで。
Goh そうです。32bit float/96kHzのセッション・ファイルを貰って。でも、南さんのようなキャリアのある方が、あれだけの人たちと一緒に作ったセッションというのは、普通にフェーダーを上げただけでそれなりのバランスになるんです。でも、それではつまらないじゃないですか。だから今回は新しいアプローチでやってみようと思って、例えば生のいい感じのドラムを、新しいプラグイン(註:Accusonus Drumatom)を使って、あえて打ち込みのようにしてみたりとか。ぼくはこういう仕事のとき、今いちばん人気のあるアーティストを意識するんです。例えば今回のように男性ボーカリストの作品だったら、ジャスティン・ビーバーとか。絵や写真でもそうですけど、その時代、時代で流行りのスタイルというのがあるじゃないですか。背景のピントのボケ具合とか。今の時代のサウンドというのは常に意識していますね。
上野 Hotodaさんからは最初、『熱い風』のミックスが届いたんですけど、音を聴いてドキドキしちゃって(笑)、“何なんだろう、これ“っていう。ところどころに不思議なエフェクトがかかっていたり。最初はあまりの違いに戸惑ったんですけど、何度も聴き返すうちにすごくいいな、さすがだなと思いましたね。
Goh リバース・エコーとかランダマイザーとかを使いましたね。そういったエフェクトがかかっているのに、歌詞は来生えつこさんという、昔と今のコントラストがいいんじゃないかなと。鏡の中の自分を見るエフェクトというか。
三浦 ああいうエフェクトはHotodaさんならではですよね。
ー 『ニュアンス』のミックス時、『ラジオ深夜便』のうたということは意識されましたか?
Goh ラジオと言っても、昔と今では違うわけですから、ローなんかはそのままにしましたね。歌とベース・ラインが気持ち良く響いて、そして周りの音が全体の抑揚を付けるようなイメージ。ぼくは釣りに行くときに車の中で『ラジオ深夜便』をよく聴くんですけど、あの番組が流れている時間帯は周りが静かなわけですよ。そんな時間に、こういう抑揚のある曲が流れると、聴く人の耳に残るんじゃないかと。それは今回、狙ったところですね。欲を言えば、一度本放送を聴いてからマスタリングを修正したかったんですけど(笑)。
ー 全体的にドライな印象を受けます。
Goh ドラムなんかはスタジオのアンビエンスだけでノン・リバーブですし、ドライかもしれませんね。アンビエンスをコンプレッサーでコントロールすれば、それだけで雰囲気が出ますから。
南 へえ、リバーブ無しでこんな音像が作れるんですね。ちなみにこの曲では何種類くらいリバーブを使っているんですか?
Goh 3種類くらいですかね。でもそれらは常にかかっているわけではなくて、バースは1種類だけだったり、サビではまた別のリバーブだったり。メインのリバーブは、Bricasti DesignのM7です。あと『ニュアンス』のサビでは、すごく長い四分のディレイを使いました。聴こえるか聴こえないかというくらいの薄いディレイですけどね。それはPro Tools標準のAIR Dynamic Delayで、音が入っているときはフィードバックせず、音が止まったときにフィードバックするというやつです。『熱い風』では、リバース・エコーなんかも使いましたね。
ー Gohさんは今回、マスタリングも手がけられたそうですね。
Goh そうですね。AD/DAコンバーターはRME ADI-2 Proを使いました。クロックは、Black Lion Audio Micro Clock MkIIIです。RME ADI-2 Proはずっと使っているんですけど、すごく良いですよ。完全に無色透明というわけではないんですけど、解像度が高い音がする。あと内蔵のヘッドフォン・アンプがすごく良いんですよ。
ー 今日はAuratoneで試聴したりして、みなさんで最終チェックされていましたが、完成した『ニュアンス/熱い風』の仕上がりはいかがですか。
南 もう思っていた以上ですね。最初聴いたときは一体どうやっているんだろうと思ったくらいキメの細かい音で。もう聴くたびにすごいなと思うんですよ。今日ここで聴いてまた改めてすごいなと(笑)。それにGohさんは仕事がとても早いですね。多分、頭がいいんでしょうね。
Goh いやいや、すぐやらないと何をしたいのかを忘れちゃうので(笑)。
南 一人で作ったのでは絶対にこんな作品にはならなかったと思いますよ。上野と三浦くんとチームを組んでやってみて良かったです。あとはGohさんもチームの一員になってくれたら嬉しいですね(笑)。
上野 長く聴き続けられるサウンドに仕上がったのではないかと、とても満足しています。
Goh それがゴールですからね。
ー この作品、これからイマーシブ・オーディオでミックスされたバージョンも制作されるそうですね。
三浦 そうなんです。ここ数年、イマーシブ・オーディオが盛り上がっていますが、普通の歌モノのポップスでは、イマーシブ・オーディオの作品ってまったくと言っていいほどない。だったら今回、チャレンジしてみるのはおもしろいんじゃないかと。どういう結果になるかわからないんですけど、ぜひそちらも楽しみにしていただきたいですね。
南佳孝 プロフィール
東京都大田区出身 シンガーソングライター
1973年に松本隆プロデュースによるアルバム「摩天楼のヒロイン」でデビュー。
1979年に発売された「モンロー・ウォーク」を郷ひろみが「セクシー・ユー」のタイトルでカバーして大ヒット。1981年 片岡義男の小説が原作の映画「スローなブギにしてくれ」の主題曲を歌い、印象的な歌いだしでヒットとなり、1991年にホンダのイメージソングとなる。オリジナルを創作するかたわら、JAZZ、ボサノバ、ラテンなどジャンルを超え様々なミュージシャンとのセッションも充実させている。
2016年3月、パーソナリティーを務める FM COCOLO「NIGHT AND DAY」とのコラボレーション作品。洋楽邦楽問わずさまざまな楽曲をレコーディングした究極のカバーアルバム「ラジオな曲たちNIGHT AND DAY」を発売。 ライブ活動のほか、楽曲提供、CMソングなど、またナレーションもおこなう。
南佳孝公式サイト
Goh Hotoda プロフィール
1960年生まれ。東京都出身。シカゴでキャリアをスタートし、1990年マドンナの『VOGUE』のエンジニアリングを務め、今ではポピュラーとなったハウス・ミュージックの基盤を作った。 その後ジャネット・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、坂本龍一、宇多田ヒカルなどの一流アーティストの作品を手がけ、トータル5800万枚以上の作品を世に送り出す。2度のグラミー賞受賞作品など世界的にも高い評価を受けている。
仕事を通じ10年来の付き合いのあった『REBECCA』のNOKKOと2001年に結婚。『NOKKOandGO』を結成。
現在はミックスとハイレベルなマスタリングスタジオを可能とした2世代目となるstudio GO and NOKKOを所有、
インターネットによるオンラインミックスサービスを行い世界中からのクライアントに貢献している。
Goh Hotoda公式サイト
三浦文夫 プロフィール
1957年生まれ 東京都出身
電通を経て2012年から関西大学社会学部教授、radikoを考案実用化、日本のポピュラー音楽映像アーカイブ構築、学内のソシオ音響スタジオにて3Dオーディオ制作の研究、ラジオのオンエア楽曲とライブ情報を繋げるといったサービスの基盤提供を行うアーティストコモンズの活動などを行なっている。関大生を中心とした新しい形のレーベルの立ち上げを計画している。
radikoフェロー、スペースシャワーネットワーク社外取締役、元民放連ラジオ再価値化研究グループ座長、民放連シェアラジオ推進部会特別委員、慶應義塾大学SFC研究所上席所員
著書「インターネット世界への扉」(1995年マガジンハウス)、「デジタルコンテンツ革命」(1996年日本経済新聞社)、「少女時代と日本の音楽生態系」(2012年日経プレミアシリーズ)
上野淳 プロフィール
1956年生まれ 東京都出身
美術大学卒業後、1980年より株式会社電通にて広告のアートディレクション、テレビCMのプランニング、プロデュースを行う。
1991年HONDA CIVICのTVCM音楽に南佳孝「スローなブギにしてくれ-I want you」を起用。
翌1992年には第二弾TVCMの使用曲にフランス人歌手アルチュール.Hの歌で同曲をカバー、南佳孝プロデュースでのパリ録音を行う。
2010年以降、CM用に制作された楽曲と既存楽曲の類似性でのトラブルを未然に防ぐ目的で、電通で制作されるCM音楽を一括管理するシステムの運用に携わる。
2013年電通を退社。2016年発売された南佳孝のアルバム「ノスタルジア」「Everytime We Say Goodbye」今年発売のシングル「ニュアンス」のアートディレクションを行うのと同時に、現在は本年秋発売予定の南佳孝ニューアルバムを南佳孝、三浦文夫とともに共同プロデュース。