RME導入事例
大手ゲームメーカー、コナミからリリースされた『drummania』、『GUITARFREAKS』といった音楽ゲームに楽曲を提供し、所謂「音ゲー」としてひとつのジャンルを確立するのに大きな役割を果たした桜井敏郎氏は、会社という制約のない創作環境を求めてコナミを退社後、個人で音楽活動を開始。現在は「SAFETY SHOES」として、魂のこもったボーカルと小気味よいギタープレイにより再びファンを魅了し続けている。10年以上にわたりRMEを愛用している桜井氏は、今回新たにFireface UCXを導入し、また新たな音楽を創り出そうとしている。
— とても長いユーザー歴をお持ちなのですが、そもそもRME製品と出会ったきっかけは?
桜井:10年ぐらい前、それまで隆盛だったデジタル・コンソールの時代が終わって、大がかりなスタジオじゃなくても個人がDAWで音作りできるような環境が整ってきました。それで、自分の理想とする音を再現できるインターフェイスを探していたら、ちょうどHammerfall DSP Multifaceが発売されまして。それ以来ずっと使ってきました。
ー 初代Multifaceですね。
桜井:今回Fireface UCXに移行したのですが、すねることなく(笑)いまだにバリバリに使えています。デジタルな製品だと数年たったら使えなくなるものも多い中、考えたらすごいことですよね。
─ 今の制作環境はどのようなものですか?
桜井:Windows XP SP2、Pentium 4というロートルな自作マシンにUAD-1が3枚挿さってます。DAWもCubase SX2と古いですが、自分の場合はオーディオをこねくり回して作るというわけではないんで、特に困ったことはありません。あと、意外と大きいのが電源で、通常の屋内配線とは別に、アナログ、防音ブース、デジタル、PCの回線を新設しました。マンションでも大きな効果があって、音の濁りが一掃されました。
─ 電源コンセントにもこだわりが?
桜井:そこは特には。むしろ「音の傾向」があるものは、作り手には諸刃になってしまうので変にキャラクタが表に出ない「問題のないもの」を使ってます。
─ Pentium 4をメインで使用されている方は今となってはかなり少ないと思うのですが。
桜井:でしょうね。いい客ではないです(笑)。で、録りとミックスはCubaseでやって、マスタリングはWaveLab 6を使ってます。その際、DIGICheckのアナライザーがとても役立ってます。DIGICheckは解析処理自体はインターフェイス本体の方でやってるんで、古いPCでもCPUパワーを喰わなくていいんですよね。
─ RME製品で一番気に入っているところはどこですか?
桜井:なんと言っても“存在を気にしなくていい”ところですね。古いマシンでも負荷なく使えるというのもそうなんですが、重要なポイントとしては、音の色付けがない。インターフェイスのクセを逆算したりとか、余計なことを考えなくていい、というところが非常に気に入ってます。 ライブでの同期用に他社製のもう少し安いインターフェイスも使ってますが、音の密度とかが明らかに違いますし、そちらはあくまでライブ用という感じで。 制作にはRMEの製品が信用度とコストのバランスという点で、一番優れていると思います。
― ありがとうございます。ところで、最近Fireface UCXを導入されたということですが、今までと変わったところはありますか?
桜井:「色付けしない」という音の方向性は同じなんだけど、それを保ったまま「今の時代の音」になるのでビックリしました(笑)。解像度とレンジが上がってるんでしょうね。
― 「今の時代の音」というのは言い得て妙ですね。
桜井:音がより見えてくるようになったので、ミックスの際に前のMultifaceでは追い込めなかったところまで追い込めるようになりました。
あと、“使えるマイクプリ”が搭載されてるのも大きいです。今までだと当然単体機によるマイクプリが必要だったんですけど、さすがはRMEという感じで。インターフェイスにくっついているマイクプリということで、最初は信用してなかったんですけどね(笑)。マイクプリもやはり“色付け”がなくて、個性のある単体のマイクプリに比べるとあっさりした音に感じますが、逆にマーティンのようなレンジの広いアコギをクリーンに録りたい時はすごくいい。
― TotalMixも新しくなっています。
桜井:そう、その新しいTotalMix FXで、DSPハードウェア・エフェクトが使える点も大きいですね。他の機材を使うことなく、バラードの歌録りでモニターのみリバーブを返したり、ハードな曲でモニターだけコンプをかけて歌ったりできるようになったことで、最終形を感じながらの録りが可能になりました。
― 早速Fireface UCXを十二分に使いこなしてらっしゃるんですね。きっと古い環境で使い続けて来て新しい機種に興味を持たれている方も多くいらっしゃるんじゃないかと思うのですが、そんな迷えるユーザーの皆さんに一言お願いできますか。
桜井:RMEの製品ってずーっと使えるじゃないですか。その分、僕のように初期のMultifaceを使ってる人って、「自分の作ってる音が時代から外れてるんじゃないだろうか」という不安があると思うんですよ。そこが改善されるのでオススメだし、音が新しく感じられるというのは、やはり制作のモチベーションが上がります。たとえPentium 4でも、それを実感できるんで(笑)。
― 確かに自分で聴いて気持ちよくないとモチベーションは上がらないものですよね。
桜井:あと、これすごく言いたいんですけど、音楽機材をよく知ってる人でもRMEのことを知らない人が多いんですね。ぜひ、だまされたと思って一回使ってみてほしいです。 他の、特に安いインターフェイスだと、例えばスネアのミッド・ローがどれだけ気持ちいいとか、気づきにくいと思うんです。洋楽のアルバムとJ-POPだと音が全然違う。どの辺りが違うんだろうっていうところまで、全部見せてくれるインターフェイスなんで。
― 新しい環境を手に入れられて、今後どのような音楽を作っていきたいとお考えですか?
桜井:解像度やレンジに申し分ない機材なんで、作り手としても情報量の豊かな音を出したり、音楽そのものを作っていきたいと思います。RMEの製品が“すごく真面目”な分、こちら側がどれだけ遊び心を持っているか、そんなことも意識しながら、楽しんでもらえる音楽を作っていければと思います。
コナミ・アーケードゲーム機「drummania」の初期音楽ディレクター兼作曲、アレンジャーを経て、現在SAFETY SHOESのボーカル・ギターとして活躍中。幅広い層のお客さんに愛され、都内ライブハウスで年間7度のワンマンライブや、渋谷クラブクアトロでのワンマンを4度開催、タワーレコード・インディーズ・チャート1位などの実績を持つ。