RME導入事例
ハイレゾ・サラウンド音源の黎明期よりハイクォリティな作品をリリースし、シーンを牽引しつづけるUNAMASレーベルから、好評を博している「クラシック・シリーズ」の第4作として、今年生誕95周年となるタンゴの巨匠 Astor Piazzolla の名曲をストリングスとオーボエで斬新にアレンジした『A.Piazzolla by Strings and Oboe』が2016年12月23日にリリースされます。
ピアソラのタンゴを、バンドネオン主体ではなくストリングスとオーボエで表現するという斬新なアレンジとともに、そのビビッドで生命感あふれる楽曲を再現するために、柱状拡散体(AGS)を全面に配置した日本音響エンジニアリングのサウンド・ラボにてレコーディングを実施。シリーズの特徴でもある従来のクラシックの常識を打ち破る作品コンセプトは今回さらなる進化を見せています。これらの新しいチャレンジを取り入れながらも、作品の根幹である音質に関しては妥協のないクォリティを確保するために、今回もレコーディングの根幹となるMADIシステムの構築に際してはRMEのMADIマイクプリアンプやMADIオーディオ・インターフェイスが活躍しています。
レコーディング・データ:
場所:日本音響エンジニアリング サウンド・ラボ(千葉)
日時:2016年7月18日、19日
仕様:24bit/192kHz 12ch
使用マイクロフォン:
メイン・マイク
Neumann KM-133D x 5
サイドL&R
Sanken CO-100K x 2
トップレイヤー・サラウンド
Sanken CUW-180(ステレオペア) x 2
LFE
AUDIX SXC-25 x 1
各パートの楽器に向けられた五本のメイン・マイクには無指向性(Omni)のデジタルマイク、Neumann KM-133Dを採用。圧倒的な解像度とS/N比で、特にオーボエの息遣いやピチカートの躍動感など、演奏の微細なニュアンスまでキャプチャーしています。サラウンドマイクはスタジオというロケーションの特徴を活かすために、ホールのような空間の響きではなく、天井付近の反射成分を捉えるという視点で、Sanken CUW-180(W-XY方式ワンポイント・ステレオマイク)を採用。合わせて、日本音響エンジニアリングの崎山氏の提案によりスタジオ内の要所要所にアクリル反響板を設置し、AGS拡散体と合わせて弦を美しく響かせるよう精密なルームチューニングが施されました。
マイク・プリアンプ:
マイク・プリアンプには、メインのデジタル・マイクのプリアンプとしてDMC-842 Mが、サラウンド用の各アナログ・マイクのプリアンプとしてMicstasy Mが使用されました。コントロール・ルームとのトークバック・システムにはDMC-842Mのアナログ出力を使用して、コントロール・ルームのMADIface XTに接続されたトークバック・マイクの音声をMADIでステージへ伝送しました。プリアンプは演奏の現場のすぐそばに配置されたため、本体の共振による音質への影響を抑えるため本プロジェクトに参加するJIONの宮下清孝氏による制震対策が施されました。
オーディオ・インターフェイス:
デジタル(DMC-842 M)とアナログ(Micstasy M)計2台のマイクプリをMADI回線に載せ、MADI Routerでメイン・レコーダーである沢口氏のMerging Pyramix Native+MADIface XTと、バックアップとして入交氏のMAGIX Sequoia+MADIface USBに分岐。沢口氏のPyramixはNative版を使うことでRME MADIface XTとノートPCでの録音を実施。また、モニタリングが不要なバックアップのレコーディング用にはUSBバスパワーで動作するMADIface USBを使用。機材のさらなる軽量化に貢献しています。
柱状拡散体(AGS):
柱状拡散体 ─ Acoustic Grove System は、木々が連なる森の中で得られる理想の音場を再現するためにデザインされたルーム・チューニング機構です。ここ日本音響エンジニアリングのサウンド・ラボではスタジオの壁面全体にAGSが配置されており、スタジオのようにデッドでもなく、ホールのような残響空間でもない、特徴的な音場となっています。今回のレコーディングでは、この特徴を活かしつつストリングの響きをより豊かなものにするために、要所にアクリル反響板を配置。曲調にマッチした理想的な音場が展開されました。
本シリーズではハイレゾ・多チャンネル録音を実現するためにシステムの根幹としてRMEのMADIシステムが採用されています。マイクプリアンプには、フラッグシップ・モデルとなるMicstasy Mがアナログ・マイク用に、DMC-842Mがデジタル・マイク用(トークバック用としても活用)としてステージ上に配置され、そこから光ファイバーのケーブルにより隣室のコントロール・ルームに設置されたMADI RouterにMADI伝送されます。 特にメインで使用されたデジタルマイクは、マイクのカプセル内でAD変換されますので、アナログ伝送による信号の劣化を完全に防ぐことが可能です。基本的にデイジーチェーンで接続されるMADIですが、MADI Routerを使用すれば自由自在に分岐、合流させることが可能で、メインとバックアップのレコーディングPCに完全に同一な音声データを送ることが可能です。
A.Piazzolla by Strings and Oboe
今年生誕95周年となるタンゴの巨匠アストル・ピアソラの名曲を、バンドネオン主体ではなくストリングスとオーボエで斬新にアレンジした、UNAMASレーベルの真骨頂が発揮されたアルバムです。
アルバム情報:
A.Piazzolla by Strings and Oboe
UNAMAS Piazzolla Septet(2016年12月23日発売)
e-onkyo | HQM Store 他
2ch Stereo:3,000円 / 5ch Surround:3,500円 / 9ch HPL:3,000円
プロモーション・ビデオをYouTubeで配信
映像もハイレゾで ─ 4Kカメラにより撮影された「A.Piazzolla by Strings and Oboe」のプロモーション・ビデオとインタビューがYouTubeで配信されています。YouTubeの4K再生に対応していますので、動画再生後、プレイヤー下部の「設定-画質」より「2160p 4k」を選ぶことにより現行フルHD(フルハイビジョン)の4倍の画素数となる4K画質でご覧になれます。
ミック沢口 ─ プロデューサー、ミックス、マスタリング
1971年千葉工業大学 電子工学科卒、同年 NHK入局。ドラマミキサーとして「芸術祭大賞」「放送文化基金賞」「IBC ノンブルドール賞」「バチカン希望賞」など受賞作を担当。1985年以降はサラウンド制作に取り組み海外からは「サラウンド将軍」と敬愛されている。2007より高品質音楽制作のためのレーベル 「UNAMASレーベル」を立ち上げ、さらにサラウンド音楽ソフトを広めるべく「UNAMAS-HUG/J」を2011年にスタートし24bit/96kHz、24bit/192kHzでの高品質音楽配信による制作およびCD制作サービスを行う。2013年の第20回日本プロ音楽録音賞で初部門設置となったノンパッケージ部門2CHで深町純「黎明」(UNAHQ-2003)が優秀賞を受賞、2015年の第22回日本プロ音楽録音賞ハイレゾリューション部門マルチchサラウンドで「The Art of Fugue(フーガの技法)」が優秀賞を受賞、2016年の第23回日本プロ音楽録音賞ハイレゾリューション部門マルチchサラウンドで「Death and the Maiden」が優秀賞を受賞するなど、ハイレゾ時代のソフト制作が如何にあるべきかを体現しシーンを牽引している。
入交英雄 ─ レコーディング・ディレクター
1956年生まれ。1979年九州芸術工科大学音響設計学、1981年同大学院卒。2013年残響の研究で博士(芸術工学)を取得。学生時代より録音活動を行い、特に4ch録音や空間音響について探求を重ね、現在のサラウンド録音の源流となっている。1981年(株)毎日放送入社。映像技術部門、音声技術部門、ホール技術部門、ポスプロ部門など経て、送出部門に至る。放送のラウドネス問題研究とARIB委員、民放連委員を通じて規格化に尽力。音声部門では放送業界で初めてのドルビーサラウンドによる高校野球中継などのプロジェクトに関わる。また、個人的にも入間次朗の名前で録音活動を行い大阪市音楽団のCD制作などを手がける。創作活動も行っており、JNN系高校ラグビーのオープニングテーマやPCゲームのロードス島戦記の音楽を担当。
圡屋洋一 ─ アレンジ
東京、渋谷に生まれる。20歳よりピアノをその後、作曲を始める。2011年東京芸術大学作曲科を卒業 作曲を 故 北村昭 近藤譲 山本裕之 照屋正樹 山本純ノ介らに師事、サウンドデザインを沢口真生、録音を亀川徹、DAWとエンジニアリングを江夏正晃に学ぶ。
130th AES Convention London Recording Competition Modern Multi-track Studio Recording
部門 JAPAN student sectionより ”Prelude5.1″(5.1ch)がエントリー。”Cori Spezzati Nova”(5.1ch) が131st AES Convention New YorkのRecording Critiquesにて多くの著名アーティストのミキシングや音楽プロデューサーとしても知られるElliot Scheinerや2LレーベルのMorten Lindbergから評価される。2014年2月自身のサラウンド作曲集「The Universe for Surround UNAHQ2004」をUNAMASレーベルよりリリース。UNAMASクラシックシリーズのアレンジを継続的に担当。
UNAMAS PIAZZOLLA SEPTET:
田尻順 ─ 第1ヴァイオリン
7歳よりヴァイオリンを始める。本間美子、故久保田良作各氏に師事。1988年桐朋学園大学を卒業。卒業と同時に群馬交響楽団に入団、在籍中は首席代理奏者を務める。群馬交響楽団とコンチェルトの共演やリサイタルを開催するなど主に群馬県を中心にソロや室内楽の活動もする。1994年“プラハの春”国際音楽祭、ウィーン芸術週間に参加。1994年首席奏者として東京交響楽団に入団。皇居内の桃華楽堂において御前演奏するなど東京交響楽団ともソロを共演。1998年同団のアシスタントコンサートマスターに就任。2002年NHK FMリサイタルに出演。2004年にシリウス弦楽四重奏団を結成。東京交響楽団弦楽四重奏団としても光が丘IMAホールでのシリーズを展開。他にもスタジオミュージシャンとしてもCMや映画音楽などの録音にも携わりその活動は多岐にわたっている。
竹田詩織 ─ 第2ヴァイオリン
1988年生まれ。2010年東京藝術大学音楽学部器楽科ヴァイオリン専攻卒業。京都芸術祭「世界に翔く若き音楽家の集い」京都市長賞受賞、全日本学生音楽コンクール、日本クラシック音楽コンクール、横浜国際音楽コンクール、ルーマニア国際音楽コンクール等数々のコンクールに上位入賞、入選を果たす。大学在学時より、ソロ・オーケストラ・室内楽での活動の他、多数の著名アーティスト楽曲レコーディングやライブサポート等様々なフィールドで活動。自身がリーダーを務めるストリングスでの活動も多数。様々な音楽活動を経て、2012年より東京交響楽団ヴァイオリン奏者としてのキャリアをスタート。現在プロオーケストラ奏者としての顔の他に、その経験を生かした多彩な音楽活動を展開している。
大角彩 ─ ヴィオラ
私立日本女子大学附属高等学校、東京藝術大学音楽学部を経て、同大学院修士課程2年在学中。3歳よりヴァイオリンを始め、18歳でヴィオラに転向する。
第11回大阪国際音楽コンクール入選。第13回ブルクハルト国際音楽コンクール第1位。2011年カール・フレッシュ国際夏期アカデミー(ドイツ)参加、修了時にディプロマを取得し奨学金を受ける。これまでにヴァイオリンを大谷康子、ヴィオラを川崎和憲、大野かおる、室内楽を川崎和憲、松原勝也、山崎伸子、大友 肇、藤森亮一、山本裕康の各氏に師事。
藝大の同期生によって結成された弦楽アンサンブル「TGS」メンバー。2015年4月より、東京交響楽団ヴィオラ奏者。
荒木奏美 ─ オーボエ
1993年茨城県出身。9歳よりオーボエを始める。東京交響楽団首席オーボエ奏者。東京藝術大学を首席で卒業し、現在、同大学院修士課程にも在学中。
第11回ソニー国際オーボエコンクール・軽井沢において審査員満場一致で日本人初の第1位、聴衆賞を受賞。その他、第31回日本管打楽器コンクールオーボエ部門第2位など多数受賞。藝大学内において安宅賞、アカンサス音楽賞受賞。2016年4月、東京・春・音楽祭でデビューリサイタルを行う。ソリストとして藝大フィルハーモニア、東京交響楽団とモーツァルト、R.シュトラウス、マルティヌーの協奏曲を共演。これまでに坂本真紀、成田恵子、和久井仁、小畑善昭、青山聖樹の各氏に師事。
西谷牧人 ─ チェロ
奈良出身。東京藝術大学音楽学部を経て、同大学院修士課程修了後、アメリカのインディアナ大学にて研鑽を積む。チェロを河野文昭、菊地知也、堤剛、ヤーノシュ・シュタルケルの各氏に師事。2005年留学を終えて帰国し、佐渡裕氏率いる兵庫芸術文化センター管弦楽団に第1期生として入団。これまでに、コンチェルトのソリストとして秋山和慶、尾高忠明、佐渡裕ら各氏との共演や、大谷康子弦楽四重奏団、小松亮太タンゴ楽団、ライブイマージュ、葉加瀬太郎Violin Summitへの参加など、多岐にわたる演奏活動を行っている。2013年1月にはピアニストの練木繁夫氏を共演者に迎え、東京と京都でのリサイタルを開催。好評を博し2013年度青山音楽賞を受賞。2015年、新たな音楽分野への挑戦として、東京交響楽団首席ヴァイオリン奏者の清水泰明氏とユニット「清水西谷(shimizunishiya)」を結成。全曲オリジナル曲&2人の演奏のみの多重録音によるデビューCDアルバム「KODO」を11月に発売。作曲、編曲、ライヴ活動も展開している。 2008年より現在、東京交響楽団首席チェロ奏者、及び東京藝術大学非常勤講師。
小畠幸法 ─ チェロ
東京藝術大学卒業。同大学院修士課程修了。これまでに間瀬利雄、金木博幸、苅田雅治、山崎伸子、藤森亮一の各氏に師事。小澤国際室内楽アカデミー参加。東京フィルハーモニー交響楽団委託契約団員チェロ奏者を経て現在、ソロ活動、室内楽オーケストラ、レコーディング等幅広く活動中。
北村一平 ─ コントラバス
埼玉県出身。2002年東京藝術大学器楽科卒業、05年同大学院修士課程修了。在学中、別府アルゲリッチ音楽祭に参加。2005年、ガウデアムス音楽祭(オランダ)参加、JULIAN YU作曲PENTATONICOPHILIAにてソリストを務める。2006年小澤征爾音楽塾Ⅶ「復活」に参加。コントラバスを永島義男、黒木岩寿、西田直文、山本修、石川滋の各氏に師事。オーケストラから吹奏楽、スタジオワークやミュージカルまで、幅広く活動。東京藝術大学管弦楽研究部非常勤講師を経て2006年に東京交響楽団に入団し、現在に至る。