RME導入事例
電子音楽やオーディオ・ビジュアル・アートの創造および普及を目的とし、国内外のアーティストによるパフィーマンスや作品が体験できるデジタル・アートの祭典「MUTEK(ミューテック)」。2000年にモントリオールで開催されて以降人気が徐々に世界へと広がり、現在はバルセロナ、メキシコ、サンフランシスコ、ドバイなど世界中で定期開催される国際的なフェスへと成長しています。2018年11月、東京では3回目となる「MUTEK」がお台場科学未来館および渋谷WWWの2会場で開催され、コーネリアス、真鍋大度、evala、Jeff Mills、Nicola Cruzからmachina、ZVIZMO、Synth Sistersなど有名無名を問わず優れたアーティスト達がパフォーマンスを披露しました。
科学未来館の会場に展示されたアート作品の中で一際来場者の目を引いていたのが、脳波を用いたインタラクティブ・アート作品「NO-ON」。参加者の脳波をつかい内発的に音楽と映像をジェネレートすることで、言葉では表現しきれない感情を形にするという体験型の作品です。自分の脳波でリアルタイムに生成される音楽と映像が来場者の間で話題を呼び、3日間の開催期間中、体験待ちの行列が途切れなかった程の人気を博していました。この作品のシステムの中核にはオーディオ・インターフェイスに「RME Fireface UFX II」、システム開発に「Cycling 74 Max 8」が使用されています。
「NO-ON」の外観は正面と左右の3面がスクリーンで囲まれたキューブ型の形状をしています。脳波計を装着した体験者はキューブ内部に設置された椅子に座り、10種類以上の中から好きな映像を選択することで音楽と映像がスタートします。脳波によって変化する音と映像を見る/聴くことによって体験者の脳波がフィードバックするかのように反応し、刻々と変化し続ける音/映像を体験できる作品です。
脳波計から出力された脳波データはPCでα/β/γ波などに解析された後にMax 8に入力され、独自のサウンド生成アルゴリズムにアサインされます。曲のキーやスケール、音価の他、内部的な確率、音色、エフェクトなど様々なパラメーターが脳波によって変化するため、同じ人でも毎回音が変化するまさに「内発的音楽」を生成します。脳波の値はOSC(Open Sound Control)信号としてMax 8から映像用の2台のPCへネットワーク経由で送信されます。いずれのPCでも「Derivative TouchDesigner」がOSC信号を受信し同じ映像を生成、1台は3系統のプロジェクターから映像を出力、もう1台は動画として映像と音がキャプチャーされます。
記録された動画データは体験者に後日送付され、自分の脳から生成された作品を後から追体験できるサービスとして使用されていました。脳波による音/映像の制御システムの中核にMax 8が位置し、全体のハブとして機能しているのが特徴です。開発のスピード感、そして現場での対応のしやすさという点がMax 8を採用したポイントとのこと。最終的にサウンドがまとめられる「Ableton Live」でエフェクト・センドやフェーダー値を脳波で制御するための「Max for Live」デバイスも使われていました。
サウンドの出力に使用されているのがRME Fireface UFX II。Max 8やAbleton Liveからの出力は最終的に「TotalMix FX」でまとめられます。各チャンネル入力はフェーダーやTotalMix内蔵EQ/コンプレッサーなどで整音された後にスピーカーから出力されます。また会場での順番待ちの来場者に向けて設置されたスピーカーへの別系統ミックス出力や、体験者が座る椅子に装着された振動スピーカーへの信号(TotalMix内蔵ローパス・フィルター使用)、録音用信号など複数系統の出力ルーティングにもTotalMixが活用されていました。
今回の様にリアルタイム性のあるインスタレーション作品では不安要素をなるべく排除しシステムの安定性をいかに上げるかが特に重要視されます。この点でもRME製品は大きなアドバンテージがあります。定評のあるRMEドライバーの安定性に加え、PCの負荷を気にせず柔軟なルーティング/エフェクト設定が可能なTotalMixの恩恵を最大限受けることが可能です。実際「MUTEK」開催の3日間、Fireface UFX IIは常時電源オンであったにも関わらずトラブルは全く無かったとのこと。そして何よりRME製品最大の特徴とも言える高解像度かつ色づけの無いクリアなサウンドは、アーティストの意図通りのサウンド・イメージを再現でき、繊細な音像表現が求められるアート作品にも最適です。今回の作品でも自分の脳からリアルタイムで生み出される生々しいサウンド体験をより確かにするために、RME製品が大きく貢献していました。
「NO-ON」公式サイト
https://no-on.jp
Mutekリリース記事
https://mutek.jp/news/2018/10/28/no-on/
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