SounDrama #1 - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]

SounDrama #1

SounDrama #1

行方洋一による24bit 96kHz HD Audio DVD

SounDrama #1は、レコーディングエンジニアの巨匠、行方洋一氏がアーティストとして、豊かな自然や生活の中にあるドラマをサウンドで描写した新感覚のメディア作品集。

レコーディングエンジニアならではの高音質、大迫力のサウンドを24 bit 96kHz wavの解像度サウンド、ワイドなダイナミックレンジで収録。

付属のブックレットには、各トラックの詳細な解説に加え、現代のプロレコーディング技術の基盤となっている数々の録音テクニックを紹介。

次世代HiFiオーディオフォーマットにおけるリファレンスDVDです。

収録トラックは、近代の日本では聞けなくなった人工音のない懐かしい環境音から、蒸気機関車サウンド等を含み、ハイファイオーディオファン、蒸気機関車ファン、録音エンジニアのリファレンス・マストアイテムです。

収録トラック

  1. オルゴール . Music Box
  2. 清流の水音 . Clear Water
  3. 太平洋ののどかな波音 . Peaceful Waves of the Pacific Ocean
  4. ひぐらしと遠くの滝 . Tanna Japonensis and Wterfall in Distance
  5. かえるの合唱と遠くのディーゼルカー . Frogs in Chorus and a Deisel car in Distance
  6. 里山の雨の滴と小鳥 のおしゃべり . Raindrops and Singing Birds in the Country
  7. 大漁船の早朝帰航 . The Large Fishing Boat Returns in the Early Morning
  8. 深山の鐘とホラ貝 . Temple Bell and Conch Shell Deep In The Mountain
  9. 直径3mの大和太鼓 . Three Meters Large Japanese Drum
  10. 祭りばやし . The Parade
  11. 連射花火 . Fireworks Blazing Away
  12. ギネスブックに挑戦の三尺五寸花火打ち上げ . 1.061 meter Fireworks for the Guinness Record
  13. 大都会の雷鳴 . Thunder in the Giant Metropolis
  14. スクランブル訓練 . Scramble Training
  15. 第二の人生を歩む4110型蒸気機関車 . The Second Life of the Steam Locomotive 4110
  16. 急行列車大雪 D-51、9600 の発車 . Deperture of Express Train "Snow Storm" D-51 & 9600

1. オルゴール (Music Box)
この曲はオーストリアのトーレンスという会社のミュージックボックス(オルゴール)の音です。トーレンスという会社はレコードレーベルとして有名ですが、本家はミュージックボックスを作っています。この録音ではコンデンサーマイクロフォン(Neumann U67)2本を録音しています。デルタシグマ変調方式 のDBXレコーダーでとりました。

2. 水の流れ (Water)
中央アルプス(長野県安曇野市)のわさび畑の水路の中に立っています。小川の流れを楽しんでください。聞き所としてはじっくり聞いてもらうとシーンの最後で鳶が鳴いているのがわかります。デジタルポータブルレコーダー(SONY PCM-F1)でマイクにAKG-D224というダイナミックマイクを2本使用しています。屋外のレコーディングは風邪に吹かれてしまうので、ダイナミックがマイクが適しています。

3. 波 (Beach)
静岡県御前崎の浜岡砂丘の浜岡原発の隣の浜でAKG-D224を90度に指向性を変えて、スタンド一本にステレオバーでデジタルポータブルレコーダー(SONY PCM-F1)で録音しています。何もせずに昼寝をしながらとっています。この様なレコーディングではスペースド・マイクと言われるこの取り方が僕はベストだと思います。長めのトラックですが、波の音はいつも違うんだな、と感じながらポケ〜っと聴くにはよいソフトだと思います。このトラックに関しては、バックグラウンドサウンドとしてお楽しみください。録音の場所は、波際ではなく砂浜の奥で録っています。もちろん波際で録ることで「シャワ〜」という音も録ることができリアルに聞こえますが、聞いている側も波の近くにいるように感じてしまう為、落ち着いた雰囲気を出す為にあえて水にぬれない砂浜の奥から録音しています。

4. ヒグラシと遠くの滝 (Tanna japonensis)
新潟県十日町清津峡の谷を歩いていたところで録音しました。たまたま別の録音で行ったのですが、何か他に録音できるものがないか、町役場に聞いたところ、紹介されて行ってみたところ、丁度良くヒグラシが鳴いていたため録音しました。人家の近くですと生活音が入ってしまうため、苗場山の奥まで歩いて行きました。ヒグラシの遠近感を聞いてください。近くのヒグラシと遠くのヒグラシが会話しているのが面白い。背景で「ゴー」っと行っているのが遠く滝の落ちる音です。この録音もデジタルポータブルレコーダー(SONY PCM-F1)とAKG-D224の組み合わせです。

5. 蛙(Frogs)
土浦郊外の筑波山麓かえる合唱団です(笑)。これの聞き所は、遠くに今は廃線になりました筑波鉄道が走っている音が聞こえるところです。発車音も聞こえます。自然の山の反響音や風の流れで定位が動くのも面白いです。昔、子供のころに聞こえていた車両の継ぎ目の音が聞こえます。これにはSONY C-55という006P電池で動くコンデンサーマイクで録音しました。

6. 雨と小鳥 (Birds in Rain)
静岡県掛川市の山にむかったところにある倉真温泉です。田舎の誰もいない温泉宿で朝に中庭にマイクを立てて録音しました。小鳥が鳴いているのではなくしゃべっています。からすはどこにでもいますね。残念な事に特に車の音が少し入ってしまいました。個々での聞き所は、雨が風に吹かれて、しずくが「バラバラバラ」っと落ちる事がします。後半部分に入る有線放送は偶然にとれたものですが、風のリバーブレーションと不思議なエフェクト効果によってリアルになったり音量が変わったりします。上の方にはジェット機が飛んでいます。人間は不思議なもので、ジェット機の音とわかると上の方から聞こえてくる深層心理を持っています。

7. 岬 (The Cape)
伊豆半島の西側に大瀬崎という岬があります。これは朝の4時です。大瀬崎灯台まで、民宿のおやじにリアカーを借りて録音機材を全部積んで引っ張っていきました。漁船が沼津の港に帰ってくるところです。ちっちゃなディーゼル機関の船ですが、海がワッフル効果によって低音がこれだけでています。船酔いする人はこの持続低音で船酔いします。具体的には10〜80Hzぐらいの低音です。これも風によって流される音があります。真っ暗闇で灯台の光が回ってきたところしか明かりがありません。これもAKG-D224で録っています。風があるときにはマイクにパンストを巻き付けることで、マイクが風に吹かれて雑音が入るのを防ぎます。今はダスターを巻き付けることもあります。

8. お寺(Temple)
大雄山の最乗寺というお寺です。ホラ貝を吹いているお坊さんがいたので、鐘と一緒に吹いてもらいました。実は山の向こうに富士の自衛隊の演習場があり、着弾音が山をこして聞こえてくるのですが、この音はよっぽど良いスピーカーシステムでないと聞こえないと思います。ヘッドフォンでは聞こえません。最後の梵鐘の後には上空でジェット機が聞こえます。不思議な事にこれも上に聞こえるのが面白いです。

9. 大太鼓 (Large Japanese Drum)
3mの大太鼓です。日本では3つしかない大太鼓です。一本の木をくりぬいて作った大太鼓で、大変貴重な楽器です。余韻の後ろに聞こえるのは高等学校の野球部の音です。

10. お囃子(Parade)
先ほどの3mの大太鼓が入ったおはやしです。

11. 花火(Fireworks)
ベスビアス大スターマイン花火の音です。長岡の曲川のほとりで行われる非常に有名な花火大会です。

12. 三尺五寸花火 (Large Fireworks)
次に聞こえる花火はビネスに挑戦した三尺五寸の花火です。実は数年後に隣町が三尺七寸の花火を上げたためギネスを取られた経緯があります。聞き所は、光と違い音はスピードが遅いため、お客さんの歓声の後に音が聞こえてきます。

13. 都会の雷 (Tokyo Thunder)
東京新宿で録音した雷です。都会の雷はビルがたくさんある為に複雑な残響反射音が面白く響きます。都会にしかない音だと思います。実は当時の事務所から窓を開けて録りました。48kHzのDATで、マイクは湿気が怖いためダイナミックで録りました。スイスの雷も録ってみたいと思います。

14. 飛行場(Airport)
小松飛行場で行われたスクランブルの訓練です。まず、T-33という軍用の練習機が目標に向かって飛びます。この音と音量を聞いてください。そして次に聞こえるのがF-4ファントムが格納庫から滑走路にでてきてから離陸します。先ほどのT-33との音と聞き比べてください。次にアナウンスが聞こえてきます。そして今はなきYS-18(民間機)が着陸します。その後次のファントムが2機滑走路に向かい離陸します。そして先ほど先に飛んだファントムが着陸します。次に4機(2x2機)の編成で飛んできます。エンジンの音がばりばりと聞こえるのは音声入力の歪みではなく炸裂音です。スペースシャトルの打ち上げの音と同じです。最後にロッキードの10-11が着陸が着陸しますが、プロ機と民生機の音の違いには驚きます。

15. 4410型蒸気機関車(steam locomotive 4410)
4110型という輸入機関車で、動輪が5個あるEタイプと呼ばれる力持ちの機関車です。輸入された当時は福島駅から米沢駅の相座峠の機関車として活躍しました。当時三菱工業のつながりがあったため、ジープで送っていただき録音ポイントを選び、さらに機関師さんにキューを出して汽笛を鳴らしてもらいました。

16. D-51 急行列車(D-51 Express Train)
最初に汽笛を鳴らすのが本部機「D-51」で、次に鳴らすのが後部補機で大正時代の「9600」です。車輪音のタイミングがずれるのは動輪が空回りしているからです。動輪の大きさが異なるため音のタイミングがずれています。信号機はワイヤーで落とす腕木信号機で、踏切の音も今はなき鐘の音です。最後になると山に登っている余韻が聞こえ音が全然変わります。

 

行方洋一

tl_files/images/events/pc_audio_vol9/namekata.jpg1943年東京生まれ。東芝EMI(旧東芝音楽工業)録音部に入社後、坂本九、弘田三枝子、欧陽菲菲、渚ゆう子、奥村チヨ、小川知子、浜圭介、等の作品を担当。その後、制作部に移りプロデューサー&ミキサーとして読売交響楽団、徳永二男等のクラシックからアンリ菅野、前田憲男、ジョニー・ハートマン等のジャズまで幅広く手掛ける。

フリー転身後も太田裕美、ゲームソフト「ドラゴンクエスト」等の音楽録音の傍ら、オーディオ雑誌やイベント等でのオーディオ評論活動も行う。また、東芝 EMI在籍時にExMFシリーズを立ち上げオフ・コース、チューリップ、アリス、甲斐バンド等のアルバム全64タイトルをリマスタリング・リリースするなど、音の世界で数々の体験をしたノウハウをベースに、ハードからソフトまでの幅広い見識や、職人技的なテクニックを使うキャリアの長いエンジニアならではの魅力を兼ね備えた人物である。

ONKYO 社の高音質音源配信のマスタリングをはじめ大手各社のアドバイザーの経歴ももつ。

 

2018年には、自伝「音職人・行方洋一の仕事 伝説のエンジニアが語る日本ポップス録音史」が発売される。