RME Developer Story | Matthias Carstens

 

最高のパフォーマンスを実現すべく採用したFPGAテクノロジー

私たちがPCIのオーディオ・カードを始めた当時、レコーディング用途に使用できるチップがありませんでした。当時入手できたのは、2チャンネルのみのマルチメディアに対応したシンプルなチップだけでした。でも、私たちは8チャンネルで、高品質かつ高速、しかもシステムのリソースをあまり使用しないチップを必要としていたので、FPGAを使ってすべて自分たちで設計しなければなりませんでした。当時は他社も同じような状況でした。Frontier社のWaveCenterやSonorusなどはDSPを使っていましたが、プログラムはやはり彼ら自身で行っていたはずです。

FPGA

その後も結局私たちはそのままFPGAを使い続けることになりました。というのも、FireWireやUSBをサポートするために、また同じ状況が訪れたのです。マルチ・チャンネルのオーディオ入出力を提供する最初のFireWireドライバとしては、BridgeCo社からDM1000というチップがリリースされたのですが、期待通りの動作を得られずバグも多かったので、使用できませんでした。

その後、TC Electronicsが買収した会社で開発されたDiceというチップがリリースされました。Diceチップは完璧なソリューションを提供し、今となっては実際に多くのメーカーが採用していますが、私たちにとっては登場が遅すぎました。既にその時、私たちはFPGA上でその機能を実現しており、そのままそれを採用することにしたのです。それにより、フレキシブルで好きなように調整でき、思うがままに設計できる術を得たのです。でも、もしその当時既にDiceチップが出ていたなら、苦労してFPGAに実装するよりも、迷わずそちらを選んだでしょうね(笑)。

 

現場での利便性を考慮した1Uサイズ、音質だけは絶対に犠牲にしてはいけない

物事にはつねに2つの側面があります。1Uサイズを採用する1つめの答えは、主に価格によるものです。1Uにした方が、当然ながら大きいサイズより価格を抑えることができます。2つめの理由としては、私たちの開発者であるステファンは、クラシックの大手レーベルのGrammophonやEmil Berliner Studiosなどで、プロフェッショナルの録音技師としても活躍しているのですが、レコーディングの際に彼はマイクからAD/DAコンバータ、MADI用の機材まですべてラックに収めて現場へ持ち込みます。そのため、ラックをできるだけ小さくして、自分で持ち運べるようにする必要があります。なので、私たちは、もし可能であればできるだけ1Uサイズにまとめたいと考えるのです。

ただし、一部の製品ではステータスを示すLEDやノブを配置するために2Uサイズを採用しています。また、内部に熱をこもらせないために大きめの筐体を必要とする物もあります。

そして、どの製品であっても、音質だけは絶対に犠牲にしてはいけないと考えています。エントリー・モデルであるBabyfaceでさえも、110 dB SNRを実現しています。

Babyface

(右上段へ続く)

 

確かなノウハウに裏付けされたクロック技術と回路レイアウト

例えばクロックについてですが、RME製品はSteadyClockが登場する以前から、すばらしい技術仕様を誇っていました。ただし、それは正しい設定で安定したクロックが提供されることを前提としたものでした。現在RME製品にはSteadyClockが搭載されていますので、どのような環境でも最善の性能を発揮できます。2つめに、私たちはつねにアナログ入出力の構造を最適にして信号の分離を良くし、AD/DAコンバータの性能を最大限に引き出すことを目指しています。また、入出力のレベルに柔軟に対応できるよう、心がけています。ほとんどの他社製品ではリファレンス・レベルは1つしか持っていませんが、RME製品は、-10、+4、+19の3つのリファレンス・レベルで動作することができます。ユーザーのリクエストが多いからか、他社製品のうちいくつかはデジタル的に増幅させて同じような効果を得ているものもあるようですが、私たちにはアナログ入出力において長年の経験がありますので、いくつかの回路デザインを用途やコストに応じて適切に使い分けることができます。

RME製品の技術仕様を見ると、どの項目もとても良い数値を示しているのが分かると思いますが、これらの数値は掛け値なしの実際のものです。ここに、ノイズフロアが-150 dBFSであることを示す図がありますが、これはひとえに、PCBを作っている回路レイアウト担当の経験に裏打ちされたデザインの良さからくるものです。彼は、どのようにパーツを配置するか、どこにブロッキング・コンデンサを入れるか、PCB内の配線をどうするか、といったことを完全に把握しています。また、昨今では電磁波に関する規制をいかに遵守するかという点で、この分野は非常に複雑な状況になっています。規制を全く無視すれば単純な話なのですが、すべての電磁波に関するテストをパスしつつ、オーディオに関する性能も十分に発揮しなくてはならないので、さらに難しく複雑なデザインやノウハウが必要とされています。

 

ADI-8 Pro A/D Dynamic Range

電源ユニットに対するコンセプト

私たちはコンセプトとして最初の段階からスイッチング電源を使用しています。MultifaceやFireface UCなどで使用する外部電源アダプタも、本体の内部電源に関しても、すべてスイッチング電源です。各国のディストリビュータにとっては、同じ電源で100Vから240Vまで、設定を変えずにそのまま各国の電源で使用できるのはメリットと言えるでしょう。エンド・ユーザーにとっても、海外の旅先でもそのまま使えるという利点があります。一方で、技術的な側面からしても、ブラウン・アウト(電圧降下)に対して強いという利点があります。家庭用電源では、気づかない間に結構電圧低下が起きています。RME製品はそのような状況下でも正常に動作し続けます。もし、電灯線からライン・ノイズが紛れ込んだとしても、スイッチング電源は受け取った電流を細切れにしてノイズ成分をフィルタリングし、電流をきれいに整えてから流してくれます。これらは非常に満足のいくレベルで動作してくれます。

>次へ

1 | 2 | 3 | 4