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RMEの歴史、技術背景、MADI開発の秘話を、創業メンバーであり開発者の1人でもあるマティアス・カーステンズが語る。

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DIGICheck:ラウドネスメーター

ラウドネスメーターという物をご存知でしょうか? 音量を計測するメーターには幾つかの種類が存在しますが、ここで取り上げるラウドネスメーターはITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)によって国際標準が示されたもので、すでに欧米では規格の運用が開始されている国も出てきています。

このラウドネスメーターでは、従来の計測方法と比較して「より人間の聴感に近い音量」が計算式でシミュレートされています。具体的な例を挙げると、聴感上の音量を整えることで、テレビを観ていて「コマーシャルになった途端、音が突然大きくなる」という、世界共通の悩みを解決する手段として開発されたものです。日本でもまもなく電波産業会による標準化が行われる見通しで、近い将来、テレビコマーシャルにおける「音圧戦争」は終わりを告げることになるのかもしれません。

ここでは、ラウドネスメーターが登場するに至った背景を追いつつ、RMEのDIGICheckに搭載された「ITUラウドネスメーター」機能について解説を進めていきます。

※ 本稿は2011年2月現在の情報を基に記述されています。

 

メーターの歴史(VU、Peak、RMS)

音響機器で音量を計測するために最初に登場したメーターは「VU(Volume Unit)メーター」と呼ばれるもので、IECやANSIといった標準化団体によって回路の特性の基準が定められています。アナログ機器の時代はこのVUメーターが活躍していましたが、デジタルで記録するレコーダーが登場するようになって状況が変わります。

VUメーターの針は反応速度が300msec(0.3秒)と規定されていました。これは、これ以上短い音が瞬間的に過大音量で入力されても、アナログ機器の場合は人間の耳にはそれほど違和感を与えなかったためです。ところが、デジタルの場合は記録できる最大音量を0dBFS(=フルスケール)と規定していて、これを超えた入力信号は不快なノイズとして再現されることになります。このレベルオーバーを監視するために、デジタル機器と共に登場したのが「Peakメーター」です。

Peakメーターは、その名のとおり音声信号の最大値(ピーク)を表示します。デジタルの録音機器、DAW等には必ずこのPeakメーターが搭載されていて、入力された音が0dBFSを超えないよう確認できるようになっています。特にデジタル機器の初期の頃はADコンバーターの性能が今よりもずっと悪く、小さい音量での解像度が低い上にノイズフロアも大きかったため、少しでも大きな音量で記録することが求められた背景もあって、ピークの監視は絶対条件でした。

ところが、デジタルにおけるリミッター機能が「マキシマイザー」と呼ばれるようになると、再び状況に変化が表れます。本来リミッターはレベルオーバーを防ぐ動作をするものでしたが、これに加えて「全体の音量を上げる」効果が注目され始めます。つまり、ピークが0dBFSを超えないように上限は押さえながら、これより低い部分の音量を持ち上げることで、俗に言う「音圧を稼ぐ」ことができるようになりました。こうなるともはやPeakメーターは意味を為さなくなり、この音圧の計測方法として「RMSメーター」が登場します。

RMSメーターは電流の平均的な値を求めるための「二乗平均平方根(Root Mean Square)」という計算方法を用いたもので、実はVUと非常に近似した結果が得られることから、RMS=VUと解説されている例もあるようです。RMSメーターは、Peakメーターとは異なり平均値を表示し続けるため、音圧を計測するのに適しています。残念ながら一般的なDAWでこのRMSメーターを標準で装備している例はまだ少ないようですが、RMEのオーディオインターフェイスをお使いであればご心配は無用です。DIGICheckのレベルメーター(※右画面参照:クリックで拡大します)は、Peak、RMS両方の機能を同時に利用できる、非常に優れたメーターとなっています。

 

音圧戦争、そしてBob Katzの提案

「音が大きいほど、派手に聞こえる」。これは避けようのない事実であり、結果として数多のテレビコマーシャルが、あるいは世間へ広くアピールしたい音楽そのものが、デジタルの0dBFSという制限の中にどこまで音を詰め込めるかを競うようになります。これが「音圧戦争」の正体です。コマーシャルになった途端にテレビのリモコンで音量を下げる、という光景は日本だけではなく、世界各国のリビングルームで繰り広げられる社会問題にまで発展することになります。

この問題に対して「解決策」を投げかけたのが、アメリカのマスタリング・エンジニアであるBob Katzでした。Bobは2000年9月のAESジャーナルで「K-System」を提案し、これまでミックス/マスタリングの現場で好き勝手に行われてきたマキシマイザー処理での音圧稼ぎについて、音楽としての見地から一定の基準を設けようと提唱したのです。

このK-Systemには「K-12」「K-14」「K-20」という、楽曲の傾向により3つのリファレンスが提示されています。音圧を極端に稼ぐことは、同時に音楽が本来持っている躍動感(ダイナミックレンジ)を失わせてしまう悪影響があることが知られていますが、このK-Systemを基準にすることでこれを未然に防ぐことも可能となります。

もし、今これを読んでいるあなたが音楽をマスタリングする立場で、K-Systemに興味がある場合には、是非DIGICheckのレベルメーターでセットアップ画面(※右画面参照:クリックで拡大します)を確認してみてください。RMEでは、DIGICheckにあらかじめK-Systemのためのプリセットを用意しています。お手元の楽曲が、K-Systemでどのようなレベルで計測されるのかを即座にチェックすることができます。

Bob Katzは、現在も多くのテキストを公開し、適正なミックス・マスタリングの普及に努めています。より詳しい情報はこちらのWebサイトをご覧ください。英語サイトですが、マスタリングに携わる人にとってはまさしく情報の宝庫と言って過言ではないでしょう。

 

リモコンボリュームからの解放

さて、音楽における音圧の問題には、Bob Katzによってひとつの方向性が示されました。では、テレビのコマーシャルはどうなるのかと言うと、冒頭で述べたようにITUという標準化団体で国際標準となる「ITU-R BS.1770-1」という規格がまとめられています。実際には、これをベースにヨーロッパのEBU、アメリカのATSCという団体がより細かい指標を盛り込んだものの策定を進めています。

このITU-R BS.1770-1規格を採用したメーターは「ラウドネスメーター」と呼ばれ、今後の放送番組制作において必須となるものです。これまでのRMSメーター等と比べ、人間の聴覚における「聴感上の周波数特性」や「大小の音が混ざった場合のマスキング」、「時間軸での連続」といった要素を加味している点が大きな特徴と言えます。このラウドネスメーターが新しい基準となることにより、コマーシャルが近くなると無意識のうちにリモコンを探すことも無くなる、という仕組みです。

 

DIGICheckのラウドネスメーター

RMEでは、2010年8月にリリースしたDIGICheck 5.3からITU-R BS.1770-1準拠のラウドネスメーター機能を正式に搭載しました。この機能は、サラウンド・オーディオスコープのオプションとして提供されます。これはラウドネスメーターが必要とされるデジタル・サラウンド放送を視野に入れているためですが、将来的には独立したファンクションとする可能性も検討されています。

それでは、実際にDIGICheckのサラウンド・オーディオスコープを起動してみましょう。セットアップ画面を表示させると、バージョン5.3以降では右下のほうに「Weighting」という設定項目があります。ここではRLB WeightingというハイパスフィルターをON/OFFできるほか、新たに「ITU」という選択肢が追加されています。この「ITU」を選ぶと、これまで6本だったサラウンドのメーター欄に「7本目のメーター」が加わります。これが、ITU-R BS.1770-1のラウドネスメーターです。

なお、「普段のMA作業はステレオ番組が多いので、サラウンドのメーターを常時表示する必要はない」という場合には、インプットデバイスのセットアップ画面を開いてください。ここで「C」「LFE」「SL」「SR」のチェックを外せば、ステレオ+ITUラウドネスメーターという構成で利用することが可能です。

 

では、具体的にこのラウドネスメーターをどのように使えば良いのでしょうか? 実は、この記事を書いている時点ではまだ日本国内におけるラウドネス基準の標準化が最終決定されていないため、これが正しいという数値での指標が決まるのを待っている状態となります。もちろん放送に関する重要な情報であり、いずれ資料として公開される形となりますので、今は標準化の採用を待つことにしましょう。RMEでも日本での標準規格が決まり次第、必要な場合にはアップデートでの調整対応も準備しています。

 

今後の放送業界における音声の鍵を握るラウドネスメーターについて、ひとつだけ言えることがあります。それは「RMEのオーディオインターフェイスのユーザーであれば、今の環境そのままでラウドネスメーターを利用することができる」という点です。

 

最後に、ラウドネスメーター関連の情報を日本語で掲載しているWebサイトをご紹介させて頂きます。より専門的な情報を必要とされる方は、こちらも併せてご参考頂ければと思います。

 

5.1サラウンド寺子屋塾「ラウドネスモニタリングとは何か?」 : Inter BEE 2010で開催された音響フォーラムの詳細レポートです。