ネットワーク・オーディオは、AVB、Dante等の規格によってそれぞれ違いがあり、その「違い」が各規格の強みだと言えます。これらの違いを紐解いていくために技術的な背景を含めて解説します。
Dante / AES67 / AVB / Milan の比較表
特徴 | Dante | AES67 | AVB (IEEE 802.1) | Milan |
---|---|---|---|---|
標準化団体 | Audinate | AES(Audio Engineering Society) | IEEE | Avnu Alliance |
ネットワーク層 | IPネットワーク (レイヤー3) |
IPネットワーク (レイヤー3) |
イーサネット専用 (レイヤー2) |
イーサネット専用 (レイヤー2) |
同期プロトコル | PTPv1 (AES67モードではPTPv2) |
PTPv2(IEEE 1588-2008) | gPTP(IEEE 802.1AS) | gPTP(IEEE 802.1AS) |
レイテンシー (代表値) |
1ms(設定可) | 1ms(設定可) |
最大2ms(Class A)、保証された遅延 | 最大2ms(Class A)、保証された遅延 |
最大チャンネル数 | 512チャンネル | 実装に依存(規格上の上限なし、数百ch以上可能) | 実装に依存 (規格上の上限なし、ネットワーク帯域に依存) |
実装に依存 (規格上の上限なし、ネットワーク帯域に依存) |
ストリーム/フロー毎のチャンネル数 | 4チャンネル | 最大8チャンネル | 実装に依存 (ユーザー定義可能、AVB規格自体には厳密な上限なし) |
1, 2, 4, 6, 8チャンネル |
相互運用性 | Dante機器間、AES67準拠サポート | 異なるメーカー間でもAES67準拠機器同士で可 | AVB準拠製品同士 | Milan認証製品間で完全相互運用を保証 |
ライセンス/機器認証制度 | ライセンスが必要 / なし(Audinateが開発) |
オープン規格 / なし(標準仕様のみ) |
オープン規格 / Avnu認証(相互接続性テスト) |
オープン規格 / Avnu認証(厳格なテストと認証制度) |
主要管理ソフト | Dante Controller | 各社実装に依存、標準管理ソフトなし | ATDECCコントローラー (Milan ManagerやHive等) |
ATDECCコントローラー (Milan ManagerやHive等) |
スイッチ要件 | 標準的なスイッチ (QoS設定が必要) |
標準的なスイッチ (QoS設定が必要) |
AVB対応スイッチが必須(802.1Qav等) | AVB対応かつMilan認証スイッチが必須 |
Danteは、オーストラリアのAudinate社によって開発された、レイヤー3ベースのIPネットワーク・オーディオ伝送プロトコルで、非圧縮、マルチチャンネル、低遅延のデジタル・オーディオ伝送を実現します。Danteは標準的なイーサネット・スイッチで動作することが大きな特徴の一つですが、QoS設定可能なマネージド・スイッチの使用が推奨されます。
Danteストリームは、「flows(フロー)」と呼ばれ常に4チャンネルが伝送されます。Gigabitネットワークでは、1フローは使用可能な帯域の中で1%未満しか使用しません。フローはデフォルトでは送信元から1つの受信先へ伝送され(ユニキャスト)、場合によって1つの送信元からネットワーク状にある全ての受信先へ伝送させることも出来ます(マルチキャスト)。
AES67は、異なるAudio over IP (AoIP) プロトコル間の相互運用性を実現するための技術標準です。Audio Engineering Society(AES)によって定められ、たとえばDanteやRavenna、Livewire、Q-LANなど、これまでは互換性のなかったシステム同士で音声をやり取りできるようにすることを目的としています。レイヤー3ベースのIPネットワーク上で動作し、インターネットで使われている標準的な通信プロトコルをベースに作られています。
AES67対応機器は、8チャンネルまたはそれ以下のストリームを少なくとも1つ送信でき、同時に、8チャンネル以下のストリーム(全てのチャンネル・サイズ)を少なくとも1つ受信できる必要があります。つまり、AES67対応機器は2チャンネルの出力ストリームを送信する場合でも、受信側で1、2、3、4、5、6、7、8チャンネルのストリーム(全て)の接続に対応可能な必要があります。
ストリームはユニキャストまたはマルチキャストの両方で伝送することが出来ます。マルチキャスト・ネットワークにおいてトラフィックを減らすには、ストリームを必要としないデバイスに対してトラフィックを伝送しないようにスイッチを管理することが出来ます(IGMPスヌーピング)。
AVB (Audio Video Bridging) は、IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers) によって策定された、レイヤー2ベース(イーサネット)のネットワーク・オーディオ規格です。AVBは、イーサネット・ネットワーク上で時刻同期された低遅延のオーディオおよびビデオストリーム伝送を保証することを目的としています。
AVBストリームでは、送信側と受信側のデバイスのチャンネル数に制限はありません。各メーカーによってどのストリーム・サイズをサポートするかを決定します。ユーザーはストリームの入力および出力のポート・サイズをデバイス上で設定します。ストリームは設定されたストリーム・サイズと同じサイズのストリーム・ポートにのみ接続されます。例えばデバイスAが4チャンネルのストリーム・ポートに設定され、デバイスBが8チャンネルのストリームのみに対応している場合、これらのデバイス間はリンクされません。
Milanは、AVNUアライアンスによって、AVBの一部(サブセット)として策定された規格です。デバイス間で、「ディタミニスティック(確定的)」で真の相互運用性を実現するための具体的なルール(メディアフォーマット、クロッキング、冗長性、制御プロトコルなど)を定義し、将来も有効に使い続けられるメディア・ネットワーキングを構築するためのオープン規格として策定されました。Milan認証を受けたデバイスは、異なるメーカーのものであってもシームレスに連携動作することが保証されます。
Milanでは、送信・受信の両方で同じチャンネル構成を使うことを標準仕様として定めることで、AVBの相互運用性の問題を克服しています。現状では、ほぼ全てのメーカーのAVB製品は、送信、受信ともに8チャンネルのストリームに対応しています。MILAN対応機器はAES67と同様で、1、2、4、6または8チャンネルのストリームを1つ送信する場合も、受信側はそれら全てを受信可能な必要があります。
AVBおよびMilanではAVブリッジと呼ばれる特別なスイッチを使用し、ユーザーがトラフィック管理をする必要がありません。また、全てのAVBストリームは常にマルチキャストで伝送されますが、ストリームを認識するスイッチによって、これらを管理する必要がありません。
※ AVBのバンド幅の要件を計算する際には、Jeff Koftinoff氏によるabc.statusbar.comのツールを使用すると便利です。リンクの速度、サンプル周波数、ストリーム・サイズから使用可能なチャンネル数を算出できます。
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